成孔学園との白熱した試合が終わり、汗と泥にまみれたグラウンド。
御幸一也はいつも通りキャッチャーミットを外し、ふと足元を見ると、ほんの少しだけ動きにぎこちなさがあった。
誰も気づかない——仲間も、監督も。
だが、なまえだけは違った。
試合中も、御幸が時折痛みをこらえているのを見逃さず、胸が締め付けられた。
「大丈夫?」と声をかけた時、御幸はふっと苦笑いを浮かべた。
「決勝が控えてる。チームや監督に迷惑かけたくないんだ。だから、黙っててくれ」
その言葉に、なまえは理解した。
彼の強さの裏にある、誰にも言えない弱さ。
「あなたが無理をしたら、意味がないよ」
涙をこらえながら、優しく手を握る。
それからの数日、なまえは御幸のそばで献身的に看病を続けた。
皆に気づかれないように、食事を作り、薬を準備し、疲れた体を気遣いながら。
御幸もまた、そんななまえの存在に少しずつ心を許し、頼りにするようになった。
「ありがとう、なまえ」
その言葉は、どんな勝利の瞬間よりも胸に響いた。
そして、決勝戦の朝が訪れる——。