試合後の応援席。
歓声が遠くで響く中、御幸先輩は女子達に囲まれて談笑していた。
部活の主将として、応援してくれる人に笑顔を見せるのは当然だってわかってる。
…わかってるのに、胸の奥がチリチリと熱くなる。

「……なまえ?」
片付けの合間、後ろから名前を呼ばれて振り向くと、すぐそこに御幸先輩の顔。
気づけば視線を逸らしていた。

「お前、今日から俺と目ぇ合わせんの禁止か?」
「別に…」
「“別に”って顔じゃねぇよ。……もしかして、嫉妬?」
わざと低い声で言われ、鼓動が跳ねる。

「そ、そんなこと…」
「嘘つけ。お前、試合中よりも俺のことガン見してただろ」
ニヤリと笑い、距離を詰めてくる。
背中が壁に当たり、逃げ場がなくなった瞬間――腰をそっと掴まれた。

「俺が誰と話そうが、お前のことだけ特別だってわかってんだろ?」
囁きが近すぎて、息が詰まる。

「……でも」
言いかけた唇を、彼の指先が軽く押さえる。
「“でも”は禁止。お前が不安になんの、俺が一番ムカつく」

頬に手が添えられ、優しく撫でられる。
「だから、そんな可愛い顔は、俺だけに見せろ」
最後の一言が甘すぎて、視界が滲んだ。



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