昼休み、グラウンド横。
なまえが倉持先輩と話していると、ふと彼がニヤついた。

「おーい、みょうじ。……お前、気づいてんの?」
「え、何がですか?」
「後ろ。御幸、さっきからガン見」

ビクッとして振り向けば、遠くから御幸の視線がまっすぐ刺さってくる。
慌てて目を逸らしたなまえに、倉持先輩は肩をポンと叩いた。

「俺、あいつがあんな顔してんの久しぶりに見たわ。……完全に彼氏の顔だな」
そう言ってひらひら手を振り、倉持先輩はグラウンドへ戻っていった。

──放課後。
人気の少ない廊下で、御幸が壁際に立ち、腕を組んで待っていた。

「……倉持と話してた時の顔、何だよあれ」
低めの声と鋭い視線に、心臓が跳ねる。

「か、一也くんの話してたの……」
そう答えると、御幸の表情が一瞬止まった。

「俺の?」
こくりと頷くと、頬が熱くなっていくのが自分でもわかる。
赤くなったなまえを見つめ、御幸はふっと口角を上げた。

「……あーもう、可愛すぎ。悪かったな、変に疑って」
そう言いながら、頭をくしゃっと撫でる御幸。
「……そういう顔は俺の前だけでしろよ」
低く甘い声に、全身が一瞬で熱くなる。

「……でも、そんな顔してるの、見られたら恥ずかしいよ」
俯くなまえの顎に、御幸の指先がそっと触れた。

「じゃあさ――今みたいに、俺がちゃんと見ててやるから」
ゆっくりと顔を上げさせられ、逃げ場のない距離で目を覗き込まれる。

「他の奴に見せるな。俺だけに見せろ。……お前がそういう顔する理由も、全部俺であれ」

息が詰まりそうなほど近くで囁かれ、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
次の瞬間、額に優しいキスが落ちた。

「……ほら、顔真っ赤。可愛すぎて反則」
嬉しそうに笑う御幸の腕に引き寄せられ、あたたかな胸の中で目を閉じた。



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