ウィリアム双子弟は何にも興味無い

*短い。
名前変換は「男主(洋名)」を使います。


◇◆◇



「お前が寝ている間に訳の分からん自称悪魔なコスプレ不法侵入者が来たんだ」
「ふんふん」
「そいつを引き渡したら屋敷の地下とその不法侵入者の家が繋がっていてヤギが食べ物を準備してくれてだな」
「ほえー、それで?」
「……お前、全く興味ないだろ……」
「んー?きょーみ?ちょーあるよ。あるある」
「その反応はないな」

ウィリアムは苦虫を噛み潰したような顔をしたまま、ため息をつく。極度の現実主義者の兄が「だから悪魔が!」と言っても、「ほえー」で終わった反応。「え?いつものリアリストはどうしたの!?」って驚いてくれたっていいのに、弟はある意味期待通りの反応を示した。

財産を管理しているはずの叔父が破産したという事実にも、来期の授業料が払えないかもしれないという事実にも大した関心も驚きも見せなかったナマエは、やはり"悪魔"やら"ヤギが飯を恵んでくれた"やらという、あのウィリアムが絶対口にしなさそうな非現実な話にも単語にも適当に相槌を返した。「それで?」と言う割には、別にそこまで返答も求めていないだろうし、真面目に返答したところで彼はやはり興味を示さないだろう。欠伸を零し、目をゴシゴシと擦り、ぼんやりと双子の兄であるウィリアムの顔を見ている。

ウィリアムは、小さくため息を零す。一応話すだけ話そうと今日起きたことを全て話した。やはりナマエはあまり興味が無いらしく、ぼんやりとウィリアムの言葉を聞いているだけだった。生まれた時からの付き合いだ。ナマエの質はこんなものだと分かってはいた。それでもウィリアムは「どうして自分の弟はこうなんだ」と小さく呟いた。


◇◆◇



そのあとも悪魔を名乗る奴らや天使を名乗る奴らがウィリアムの周りに集う。同期に後輩に総代は悪魔だし、自分たちの家の家令で今では学校で牧師をしているケヴィンも、ウィリアムのファグであるシオンも実は天使である。そんなことを知っていようが知っていなかろうが、やはりナマエはナマエだった。

ダンタリオンやシトリーがウィリアムが聞き耳を持たないのならと、その双子の弟であるナマエに取り入ろうとするも、実はウィリアムよりも厄介なのだとすぐに取り入ることはやめたし、魔界やら天界やらの騒動に巻き込まれてもナマエはそんなに動じなかった。例え殺されそうになっても、攫われかけても「あー、これって拙い状況だよね…。うーん…」くらいの反応で下手すれば、あちらでドタバタしている間に一眠りするくらいには度胸やら肝やらが据わったマイペース男子ぶりに悪魔も天使も困惑した。

もはやそのマイペースぶりに何処か既視感を覚えたもの達の間では「もしかしたらこっちがソロモンなのでは会議」が行われていたがすぐに否定された。

「ほえー、選定公ね」だの「天使?はえー、凄いね」と何回説明してもそんな答えばかり返してニコニコ笑うナマエに、周りが大分慣れた頃にはゴタゴタはさらに激化していた。しかし、ナマエの周りは割といつだって穏やかな時が流れていた。


◇◆◇



「ふーん」
「それでだな!」
「うんうん」

ぼんやりどこを見ているのか分からないナマエに向かって、何やら真剣に話をするダンタリオン。彼はナマエが適当な相槌を打っていようが気にしなかった。いつものことであるし、喋り倒したという満足感が得られればダンタリオン的にも良いのだろう。

こんな風に真剣な話もアホみたいな話も秘密話でも悩み話でも愚痴でも、何か語りたいことがある者は自然とナマエに話に行く。彼は全く話を聞いていない。聞いていたとしても誰かに話しはしないし、余計なことは言わない。ただただ適当な相槌を薄く笑いながら打つだけなのだ。別に聞き上手である訳でもないのに、彼の周りにそう言った話を一方的にして「喋ったぞ!」「言葉にして良かった」という満足感を得て、ストレスを解消したり自分の気持ちを明確化したりするのにちょうど良いらしい。そんな扱いをされて良いのかとウィリアムは言ったが、お返しに菓子を貰えたり、試験での重要ポイントを共有してもらったり、食堂の席をとってもらったり、それなりの名家に招待されコネを作ったり、そんな利点があるのだと彼は言う。彼の唯一興味のあることである「いかに楽して生きていくか」のためには、確かに必要なのかもしれないと、何故かウィリアムも納得してしまった。

ナマエがそれでいいのなら、それでいいのかもしれない。ウィリアムはぼんやりとそう思いながら、ほとんど同じ顔の自分の弟を眺めた。


◇◆◇◆◇◆

*ちょっとしたプロフィール的なやつ
・ウィリアムの双子の弟
・頭もそれなりに良く、運動はめっちゃできる
・幼少期ウィリアムの髪型でそのまま大きくなった感じ。
・ウィリアムと顔は似てるが、ナマエの方が柔らかい雰囲気がある
・ウィリアムよりちょっとガタイが良い
・無心で体を動かすことが好き
・たいして何にも興味ない
・将来どうやって楽して金をもうけて、ベッドでぼんやり生きるかについて考えることくらいなら興味ある
・ちょっとやそっとのことでは驚かない、動じない


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