「夜子ちゃん」
聞きなれた私の名前だけれど、つい反応するのが遅れた。なにせこの人のこの声で呼ばれることは今まで無かったから。呼ばれた声に振り返ると、斎藤さんがへらりと笑っている。
「何か御用でしょうか、斎藤さん」
「御用は特にないけれど、僕のマスターちゃんがそこに居るんだから声ぐらいかけるでしょう」
ああ、それだ。いつもの呼び方。耳に馴染んでほんのりと安心する。通りがかりにも挨拶してくれる、真面目な人だ。
「随分遅い時間だけど、この時間まで仕事?」
「はい、でも報告書とか書いていただけなので」
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