ハートキャッチ(物理)



島に上陸するなり「あんた医者だろ」と不遜な口調で話しかけてきた女に、ローとその背後に控える船員達は眉を顰めた。女はこじんまりしたリュックサックを背負い、長袖シャツにジーパンといった質素な出で立ちである。無法者でも良いと医者を求め切羽詰まっている様子もなく、油断を誘い此方の首を刎ねんとする賞金稼ぎのような気配もない。女はローと背後の船員を見比べ「あー、もしかして院長ってやつ?」と再び不遜な口調を取った。
ローが着用するパーカーの中心に大きくあしらわれた海賊のシンボルは一般人が文字通り一目で危険だと断じるマークであるが、海賊への驕慢な態度を崩さない女には、その黄と黒の警告色で着色されたパーカーは目に留まらないらしかった。加えてどう見積もっても堅気と言い難い雰囲気と出立ちであるローに対して脅威を与えるほどの存在に値しないと言い表している。

「てめェは扁桃体を損傷してんのか、それともただの馬鹿かどっちだ」
「へんと…?」


「おいお前!手配書見たことねェのか!」
「そーだ!キャプテンは死の外科医って言われてて強いんだぞ!」

シャチと白熊のベポは

手配書、と呟いた。

「それなりに名が通ってる海賊か?船医室で嗅いだ薬品の匂いがしたから医者だとばっかり…」
「…匂い?」
「おープンプンする。ついでに後ろの奴らからもちょこっとだけする」

袖を匂って


「お前はいちいちミジンコに警戒すんのか?」
透明な立方体の中で心臓が動いている。

「動くんじゃねェッ!心臓を握り潰すぞッ!」
「握り潰したきゃどうぞ」

心臓を強く握った。ゲボッと

「ハハハ!心臓を生で握られるのは初めてだ!」

一通り笑って降参する


.


「名前はヴィーザって言います。好物はブートジョロキアペペロンチーノです。戦闘には自信があります。この船にちょっと置いてください」
目の前に座る女は
「最近臓器移植したんだけど、その臓器の持ち主だった人の記憶がある。これってどうにかならないか?」
「記憶?」

頷く。夢を見るとかじゃなくて記憶ある

「脳半分とほぼ全部の臓器」

「…よく生きてるな」
「で、どうだ?あるか?」
「教えて欲しけりゃそれなりの態度ってもんがある」


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