koneta

 すれ違いざま、小学校1年生くらいの少女を見て、あ、志保ちゃんだ、と気づいたのは奇跡だった。数ヶ月前、忽然と姿を消した友人がまさか小さくなっているとは誰も考えないだろう。
 店員を急かしたい気持ちを必死に抑え、会計を終えて志保ちゃんが待っている席まで戻った。わたしの目が離れている隙に逃げることもできたろうに、彼女はおとなしく座っていた。こんなふうに店に連れ込んでも逃げられない程度には信頼されているのかもしれない。嬉しくなって鼻歌を歌いながら適当に買った食べ物を机の上に広げた。志保ちゃんにはスモールサイズの紅茶を渡した。
「なにも入れてないから」
「……わかってるわ」
「怖ければ毒味するよ、飲みたくなければ飲まなくていいし」
 彼女は大口でハンバーガーに食らいつくわたしと紅茶のカップを何度か見比べると、意を決したように一口飲んだ。一度懐に入れた相手にはとことん甘い人だ。これでよく今までジンやベルモットに見つからずにやってこれたものだ、と感心してしまった。
「あまりおいしくないわね」
 わたしが心配しているとはつゆ知らず、志保ちゃんは細い眉をしかめた。税込108円の紅茶の味はお気に召さなかったらしい。

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