茶会の後、始皇帝と連れ立って庭を散策していたナマエは、頬を撫でる風がやや冷たさを帯びてきたことに気が付いた。水辺へと落としていた顔を上げれば、青く澄んでいた空にわずかな橙の影が生まれている。陽が傾き始めたらしい。

「…嬴政さん、私、そろそろ帰りますね」

 名残惜しさを感じつつ、「今日は楽しかったです」とナマエは始皇帝を見上げる。てっきり、「それは良かった」という言葉と共にいつもの笑みが返ってくると思っていたのだが。反し見えたのは、むっつりと唇を尖らせ、不満だと分かりやすく示す始皇帝の顔だった。

「不好、なにを言っている。このまま帰すわけがないだろう」

 始皇帝はやれやれとばかりにひとつ溜息をつく。そうして唐突にその身を屈めたかと思えば、戸惑うナマエを、俵でも担ぐかのように片腕でひょいと抱き上げ。そのまま迷うことなく何処かへと歩き出した。

「えっ、ちょ、どこ行くんですか!?」
「寝所だ」
「しん…えっ!?」

 一瞬の間の後ようやく状況を理解したナマエが叫び訊けば、始皇帝は当然とばかりにそう返した。ナマエの脳内では彼の昼間の発言が思い出される。「少なくとも、陽が落ちた頃にするつもりだ」という、あれ。冗談ではなかったのか。
 止めようとナマエは暴れるも、抵抗虚しく美しい庭はどんどん遠ざかっていき。やや乱暴に扉を開く音がしたと思ったら、次のときには、背中に柔らかなシーツが触れていた。

「あ、ま、待って…!」
「待たぬ」

 起き上がる間もなく覆い被さってきた身体が、割り開かれた両脚の間に滑り込む。

「ぬっ、脱がせるのが勿体無いって、言ってたじゃないですかぁ…!」
「脱がせるのが王の務め、とも言ったであろう」

 ナマエが必死に胸を押し突っぱねるも、始皇帝はそれを片手で華麗にいなしながら、もう片方の手でナマエの服を脱がせていく。遊ばれている、完全に。
 腰紐を解き、薄いレース生地のスカートを取り払い。身体のラインをなぞりながら、腰辺りに隠れていた留め具も外し。そうして最後の仕上げとばかりに、胸元を飾っていたブローチも取り去っていき。淀みなく行われたそれらに、美しかった旗袍はもはや纏うだけの布と化してしまった。
 始皇帝は開けた胸元の布を指先でついと退けると、現れたデコルテに口付ける。ちゅう、とわざとらしく音を立てたそれにナマエが肩を揺らせば、始皇帝はゆるりと視線を上げた。

「…それとも、着たままの方が良かったか?」

 言って、楽し気に口角が釣り上がる。からいかいを含んだその声に、ナマエの顔が赤く染まっていく。

「そんなわけないでしょう…っ!」
「好!それはそれで嬉しいお誘いだが…これはまたそなたに着てほしいからな。早々に汚してしまう訳にもいかぬだろう。だからすまぬが、今回は我慢してくれ」
「人の話を…っそもそも、どうして私がわがまま言ったみたいになってるんですか、ぁ、あ…ッ!」

 喚くナマエの下敷きになっていた服を抜き取りベッドの端に放ると、始皇帝はいよいよ唯一残された下着に手をかける。
 服の形を邪魔しないようにと変えさせられたそれは、ホックが前面に付いた、面積のとても少ないもので。そのためわざわざ背に手を回さずとも、簡単に外せてしまうのだ。始皇帝はそれを分かっているとでもいうように、ホックに人差し指を一本引っ掛け。そのまま軽く持ち上げると、ぷつんっと躊躇いなく外してしまった。
 元々、ほとんど起伏など無いに等しい胸だけれど。だからといって、さらけ出すことにまったく羞恥がないわけではない。──見られていると意識した途端、ナマエの心臓は跳ね上がる。

「っや…ぁ、」

 動揺する呼吸に合わせ上下そこに始皇帝はそっと両手を添えると、柔らかさを確かめるように、くにくにと揉み込み始めた。

「そ、んなところ、触っても楽しくないでしょお…っ」

 平らなそこに嬉々として触れる始皇帝に、妙な気恥ずかしささえ生まれ。ナマエはうめくように呟く。
 その言葉に始皇帝は手を止めると、一瞬きょとんと首を傾げる。けれどすぐに、にやりと意地悪く口角を上げ、

「まったく…そなたは分かっておらぬな」

 と呟いた。この状況誤魔化したく発した言葉だったが、思わぬ返答に、なにがですか、とナマエは口を開く。

「ぅ、あ…っ!?♡」

 けれどそのタイミングを待っていたとばかりに、胸の突起をきゅうっと摘まみ上げられ。ナマエは甘い声と共に、くんっと腰を上げ大きく反応してしまった。

「…見ろ。ここは朕が少し触れるだけで、これ程までに素直な反応を示してくれるのだぞ?楽しくないわけがないだろう」

 言いながら、始皇帝は突起の先端をくりくりと撫で擦る。かと思えば芯を潰すように、くにくにと押し込む。好き勝手に動くしなやかな手に、ナマエの下腹部は徐々に熱を帯びていく。

「ひ、ぅ…♡あ、ぁんっ!♡」

 優しく胸を揉みしだきながら、始皇帝はシーツを蹴り乱す足を撫で下ろしていき秘部へと触れる。くち、と粘着質な音が聞こえ。やわらかな内ももが、ぎくりと震え強張った。

「…好。こちらもよい反応だな」

 始皇帝は興奮と愉悦交じりにそう呟きながら、溢れる蜜を中指に絡めると、つぷりと音を立て挿入した。途端、やわい肉が沿うように蠢く。

「や、あぁっ…!♡あ、んぁッ♡」

 きゅうきゅうと媚び締め付ける中に反抗しながら、腹側のざらついた部分を持ち上げるように擦り上げる。そうしてやれば、見開かれた大きな瞳から涙が散っていた。
 後頭部を枕に押し付け喉をさらけ出し、あられもなく喘ぐその姿に、始皇帝は目隠しの下で愉悦とばかりに、すうと目を細める。

「…好」

 呟き、薄く開く唇にかぶり付く。すぐに舌を滑り込ませ、逃げ打つ同じそれをにゅくりと絡め取れば、ナマエの身体は甘やかに享受し。だらしなく口端から唾液をこぼしながら悦んでいた。

「は、ふぅっ、んんッ、う、ん゙…♡」
「っは…しっかり息をしろ。苦しいままだぞ」
「ふ、ぁ、あっんむ、うぅ、っ」

 そう言いながらも唇は離れず。それどころか、いつの間にか二本に増えた指が子宮口の手前までその身を届かせ。みちりと詰まる肉を乱暴に割り開きながら、入口をこりこりと撫で揺さぶっている。

「い、っ!んぅ、ゔ、ふ、ぅ…ッ!♡」

 ぐちゅぐちゅと響く水音も大きくなり、指の動きで飛び散る蜜がシーツに染みを作っていく。痙攣と共に締め付けも強くなり、ナマエの限界が近いことを示していた。

「は、っふ♡ゔぁ、あ♡あ゙、…っ!」

 唇が離れ喉に酸素が流れ込む。けれどナマエの視界は相変わらずくらりと歪み、白く小さな火花がいっぱいに瞬いている。

「あ、ああっ♡ぃ、く、いっちゃ、あ、ぁあ…ッ!♡」

 腹の奥で炭酸が弾けるような奇妙な感覚に、肌がぞわりと粟立つ。もう駄目だと叫ぶ声を聞いた始皇帝は、蜜を親指にまとわせると、秘部の上で勃ち上がる突起をぎゅうと圧し潰した。

「あ゙、っ!?♡あ゙、ぁッ、──!♡♡」

 悲鳴じみた嬌声と共に、がくんっと腰が持ち上がる。秘部からは勢いよく潮が噴き出し、始皇帝の手首まで飛び散っていった。

「っ、♡ぁ、あ゙……?♡」

 見開かれた瞳は何が起きたのか理解できていないようだった。けれど、やわく解れた胎内だけは、しっかりと全てを理解し受け入れていて。入れられたままの指を食むように肉壁を蠢かせ、勢いを徐々に失いながらも、未だ潮を噴きこぼしていた。
 粘液をさらに掻き出すように指を曲げながら、ずるりと指を引き抜く。絡む蜜は指先と秘部を繋ぎ。重力に従い弧を描き、やがてぷつりと切れていった。
 濡れる指をぺろりと舐めながら、始皇帝は自身も服を脱ぎ捨てていく。最後に下衣を寛げ屹立を取り出すと、跳ねる細い腰を両手で掴み、あわいへと先端をあてがう。

「ナマエ、もう挿れるぞ…っ」
「あ、ま、まって、ぇあ、あぁあ…っ♡」

 返事を待たずに、張った雁首が解れた中を抉るように割り開いていく。
 乱暴で、けれど甘やかすように、気持ちの良いところすべてに触れられ。ただ挿入するだけでも強すぎるその刺激に、無駄だと分かっていながら、ナマエの身体は無意識のうちにシーツを這い逃げようとしていた。

「はぁ…こら、逃げるでない」
「ひっ、ぅ♡はぁ、あ、ああぁ…ッ!♡」

 咎め引き戻され先端がさらに奥を穿つ。辿り着いた子宮口をくすぐるように捏ね回しながら、始皇帝は腰を打ち付け始めた。

「うあ、っん!♡あ、んぁあ、あぁう、ゔ、っ!♡♡」
「っ…、ふ、はぁ、……、」

 骨盤がやわらかな尻たぶを弾く度、互いの間でぱちゅぱちゅと蜜が散る音が響く。もはや二人の下腹部をすべて濡らさんばかりに濡れそぼっている、その事実を突きつけるような音は、ナマエを耳からも犯していき。その興奮に腹の奥はまた、ごぷりと蜜を溢れさせていた。

「ほら、ナマエ。こちらを向け」
「ん゙ぅ、っ♡う、ぅう、んん…ッ!♡」

 上体を屈め噛みつくように唇を重ねる。角度を変えながらキスを繰り返せば、シーツを掴んでいた手が、縋るように始皇帝の首へと回される。
 細い指先が始皇帝の項を、肩口をなぞる。痕も付かぬほど弱い力ではあったが、ナマエが甘えるように縋ってくれているという事に、始皇帝は目隠しの下できゅうと瞳を細め。ナマエとベッドシーツの間に両腕を差し込むと、その骨を折らんばかりに強く抱き締め返した。
 しっとり汗ばむ肌が重なり、間で互いの胸がぎゅうと潰れる。そうすれば、ナマエのつつましやかな胸元で勃ち上がる突起が、始皇帝のやわい胸筋に押し擦られ。中を攻められる刺激とは質の違う快楽が加わり、ナマエは喉を引き攣らせ喘ぐ。

「ふ、ん゙う、ぅ、──っ!♡♡」

 ふと、ナマエが縋りついたことで緩んだのか、始皇帝の目隠しの結びが解け。そのままナマエの顔の横にぱさりと落ちていった。
 視界の端に落ちた布に、ナマエは咄嗟に目を向ける。けれど咎めるように「ナマエ」と名を呼ばれ。視線はすぐに、始皇帝へと戻された。
 互いの間に星が瞬く。──瞬間、始皇帝の身体に、恐ろしいほどの快感が駆け巡っていた。
 それは腰から背を、稲妻のごとくなぞり上げていき。熱を帯び、肢体の末端に至るまで。全身を甘く痺れさせながら、心臓の、腹の奥を痙攣させる。背が仰け反り喉が震え、我を忘れたような蕩けた声が思わず漏れ出てしまう──そんな快感。

「ふっ、はは……好♡気持ちいいなあ…?ナマエ♡」

 始皇帝は頬を上気させ、うっそりと呟く。瞳は潤み溶け、睫毛を伏せた眦が、至極嬉しそうに弧を描いていた。
 ──目の前の男に、なにもかも伝わっている。もはや空気が撫でるだけで胸の突起が痺れてしまうことも、屹立に浮き出る血管をなぞるだけで胎内が悦んでしまうことも、口付けをされるだけで、上り詰めてしまいそうなほど気持ちが良いことも。すべて、なにもかも伝わっているのだ。
 星が美しい、その瞳によって。

「やっ、見ないで……!」

 このまま気を失ってしまうのではと思った。いや、実際失えたらどれほど良かったか。そう思うほど、ナマエの顔は痛いほどに熱を帯びていく。
 耳や顔どころか、デコルテまでも真っ赤に染めながら、ナマエは咄嗟に目をつむり顔を背ける。それに意味はないと理解しているが、それでも視線から逃げたかった。

「や、ぁ、あ゙──ッ!?♡」

 けれどそんなささやかな抵抗さえ許してはもらえず。とんっと奥を突かれ、瞳は涙の粒を散らせながら、すぐに見開かれることとなる。
 もはや声を抑えられなくなっているナマエに、始皇帝は恍惚と笑みを浮かべ。下半身を密着させると、そのまま強く奥を突き上げ始めた。

「いやっ♡や、んあ、あ゙、ああぁ…ッ!♡」
「はぁ…あ、っふ…よく締まる…ッ♡」
「ひぅ、っい、あ、あ♡あ、あ゙ぁ、あんっ♡」

 蠢く中を擦り上げ進み、辿り着いた子宮口を先端でくすぐる。乱暴なはずのそれにもナマエの腹は嬉しそうに屹立を締め付け。その度に、始皇帝は腹の中が、ずくりと重たくなるのを感じていた。──男の身体に存在しない臓器の快楽。けれどそれは確実に、始皇帝の腹の奥底で、すべてを支配せんとばかりに疼いている。これがナマエの感じ入るすべてなのだと思えば、未知のそれすら愛おしかった。

「っう、やだ、やぁ…ああぁッ♡」

 もはや羞恥で限界寸前だった。ナマエは子供のように泣き声を上げながら、ぼろぼろと大粒の涙をこぼしてしまう。

「…不好。そう嫌だとばかり言うな」

 やわい頬を流れる涙を舐め取りながら、始皇帝は腰を押し付けたまま、その動きをゆるりと止めた。
 不満を滲ませたその声音が、けれど怒りを含んでいないと蕩けたナマエにも理解できたのは、それがどうにも聞き慣れたものだったからだ。どちらかといえばこれは、拗ねている声。そう、彼が悪戯をするときのような──、
 は、と気付く。そうしてナマエが息を呑むと同時に、始皇帝は背けられていたナマエの頤を掴み。まるで、嫌だと泣くことを咎めるように、強制的に目を合わせた。
 ばち、と再び星が交わる。先ほどよりもずっと近い距離に、ナマエの視界が涙に歪む。その瞬間、押し付けられていた屹立の先端が、子宮口にくぷんっとはめられた。

「ひ、い゙っ!♡あっ、あ゙ああ、──ッ♡♡」
「ぐ、ぅ…ッ」

 秘部から勢いよく潮が噴き出す。天地が返るような快感がナマエの脳を、身体を支配する。そしてそれは当然の如く始皇帝にも伝わり。肉壁の甘い蠢きに耐えることなく、彼もまた抑えきれぬ声と共に欲を吐き出した。

「〜〜〜、……っ♡♡」
「っふ、あ゙、はぁ…ッ」

 叩きつけるように腹の奥へと注ぎ込まれていく熱を、子宮は喜びと共に飲み込んでいく。ナマエはもはや声さえ出せずに、小さな絶頂を繰り返していた。
 すべてを奥に出した始皇帝は、小さく息を吐きながらゆっくりと腰を引いていく。ただ引き抜くだけのその動きにさえ「あ、」「う、」と、うめきともつかぬ甘い声を漏らすナマエを、じっと見つめる。──おかげで、精魂尽き果てたように見える凄艶な肢体の中に、まだ発散しきれていない熱が燻っていることを感じ取れ。喉の奥で小さく、「…好♡」と呟き、ゆるりと口角を上げた。

「ぅあ、んっ!♡」

 始皇帝はおもむろに、ナマエの上下する胸へと手を伸ばし。ぷくりと勃ち上がっていた突起を指の背で、ついと撫でる。

「っん…ふふ…♡そなた、やはり胸が敏感だな」

 可愛い、と始皇帝は胸に顔を寄せ、突起にちうと吸い付く。

「っぅ、わ、かってるなら、さ、触らないで、っぇあ、ぁ…ッ♡」
「嫌だ」
「もぉお…っ!」

 人類闘士の中では小柄な方に入る始皇帝だが、体躯はかなりしっかりとしている。元々、身体それ自体が武器ということもあるのだろう。ただ、それだけならナマエも同じなのだが、けれどやはり悔しいかな、そこは男女の差。こうして押さえつけられてしまえば、ナマエは自由に身を動かすこともできない。
 代わりにきゃんきゃんと喚くも、やはり始皇帝は聞かない。それどころか意趣返しとばかりに「嫌だ」などと、拗ねたように言い放つ始末。相変わらずの横暴さである。

「ひ、ん゙ん…ッ♡んぁ、あ…♡♡」

 温かな咥内で尖る舌先が、やわらかな乳輪を優しくなぞる。突起の根元をくすぐりながら、扱くようにちゅるりと吸い上げ。そうして、辿り着いた先端をくりくりと掘り弄ぶ。
 何度も達した身体には、もうそれだけでどうしようもなく気持ちが良かった。

「っい、ぁ、ああぁ──、〜〜ッ♡♡」
「ふふ…愛いなあ、ナマエ……♡」

 わずかに唇を離した始皇帝が、ひどく慈愛に満ちた声で呟く。赤く色付きぷくりと勃ち上がった突起は、呟き動く吐息にさえ、もっと触れてほしいとばかりにその身を震わせていた。
 腹の奥がきゅうと戦慄き、ナマエの喉からは小動物が鳴くような、情けない声が漏れ出る。
 それを飲み込むように、弧を描いた始皇帝の唇が、濡れ開くナマエの唇を塞いだ。




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