「レオおじさま…私より胸がある…」

 普段過ごすことの多いハンモックではなく、二人寝転んでもまだ余裕のある大きなベッドの上。寝転ぶレオニダスの上に、まるでどこかの大きな生き物の上ではしゃぐ小さな少女のごとく寝転ぶナマエは、その豊満な胸に顔を埋めながら、悔しそうに呟いた。

「……どうした急に」

 たっぷり考えたあと、レオニダスは読んでいた本からナマエへと視線を移す。適当にあしらってもよかったのだが、声色が本気で悩んでいるような色を含んでいたからだ。
 レオニダスは小さな掌でふにふにと自らの胸の感触を楽しんでいるナマエをじっと見つめる。その視線からどこか逃げるように余所を見ながら、ナマエは「だって…」と唇を尖らせ話し始めた。

「ゲイレルル様もですけど、天界にいる女神の方々は、みなさん胸が…とても豊かなので……」

 そこまで言って最後はため息と共に消え。ナマエはレオニダスの胸で、再び不貞腐れたように唇を尖らせた。その反応はどうやら本人も、口に出してみたらどうにもくだらなかった、という感情がわずかながら生まれたようだだった。
 確かに予想通り何ともくだらない内容ではあったが、悩みというものは大概、本人以外には大したことではないものなのだ。それでも自分から尋ねた以上放っておくわけにはいかないのもまた事実なわけで。レオニダスは仕方ないとばかりに読んでいた本を閉じると、ナマエの胸へと視線を向けた。
 うつぶせという体勢のせいもあるのだろうが、本来なら圧し潰され、少なからず横にはみ出るであろうはずのそれは一切存在していない。つまりそういった膨らみがほとんど無いということだ。そうなると確かに小さいのだろう。もしかしたらワルキューレの騒がしい末妹の方があるかもしれないとすら思う。それを言ったらさらに拗ねそうなので言わないが。

「…別に、胸が有ろうが無かろうが、どっちでもいいだろ」
「ええ!?そんなことないですよ胸は重要ですよ…!?」

 レオニダスの言葉にベッドを軋ませるほど勢いよく起き上がったナマエは、自身の胸を見下ろし、確認するようにそっと両手を添えた。そして数秒考え込み、すぐにしょんぼり肩を落とす。

「…やっぱり小さい……」
「………」

 これは何を言っても落ち込むだけだろう。思っていた以上に気にしていたのだと分かり、レオニダスも言葉を呑み込んだ。
 ──そもそもレオニダスからしてみれば、別に大きかろうが小さかろうが関係ない。重要なのは相手であって、そしてそれがナマエならば言葉は悪いが、"なんでもいい"のだ。
 それに恋人という立場からの正直な話をしてしまうと、手で収まるどころか隠せてしまうほどの大きさのナマエの胸は、触れるのが──もとい開発するのが、ものすごく楽しかったのだ。
 くわえて、ぴったりと張り付くような服に身を包んでいるナマエの身体は、下着を取り払ってしまえば胸の突起がよく目立つ。つつましやかなそこは刺激すればすぐに硬く勃ち上がり、もっと触れてくれといわんばかりに存在を主張し始めるのだ。
 普段のナマエのイメージからは大きくかけ離れている淫靡なその様子が、レオニダスは好きだった。これも言ったら拗ねるどころでなく怒り出しそうなので、もちろん言わないが。
 レオニダスは少し考えたあと、メガネを外し、吹かしていた葉巻をベッドのサイドボードへ置いた灰皿に押し付けると、横臥していた身体を起こした。そしてしょんぼり落ち込むナマエの脇に手を差し込み抱き上げると、そのままくるりと向きを変えさせ。抱えたぬいぐるみのごとく自身の胸にもたれ掛かるように、膝の上へと座らせた。

「え、おじさま、いきなりなに…」

 突然抱えられたことに当然ながら固まるナマエを、レオニダスは無言のまま見下ろしている。
 額をくすぐる白い髭の奥にある瞳はいったい何処へ向いているのか。ゆっくり辿っていくと、そこは件の胸ではなく、何故かさらに先。自らの脚にに注がれていることに、ナマエは気が付いた。

「レオおじさま、どこ見て……」
「…やっぱりそうだろ」
「え?」
「胸は小さかろうが俺様は構わねえが…お前はそれより、"脚"、だろ」

 ナマエは普段、上半身は始皇帝のものによく似たホルターネックデザインの黒い服と、その上に、手先まですっぽり隠してしまう袖の長い上着を着ているため、一見するとほとんど露出はないように感じる。けれどそんな上半身とは裏腹に、下半身は一瞬防御力を心配してしまうほど露出が多いのだ。
 黒いショートパンツと、チャイナシューズと呼ばれるシンプルな黒い靴。ラグナロク出場時にはそれに太もも中頃までの長い靴下を履いており、ヴェルンドの際にもそれが武器となっていたのだが、そのあとは一切それを身に着けておらず。ショートパンツからは、すれ違えば思わず振り返ってしまうほど美しい脚が、すらりと伸びている。──おそらくすべての神や人間に聞けば、みな一様に答えるだろう。惜しみなくさらけ出されたナマエの脚は、何よりも美しい、と。
 言い方は悪いが、女性の服装や体形にあまり頓着のないレオニダスでさえ、初めてナマエの脚を見た際には、「武器なのに美しい」と、何気なしにそう思ったほどだ。

「…脚?」
「おう」
「脚…」
「なんだ、納得いかねえか?」
「あ、いえ…ただ、脚は私にとっては武器みたいなものだったから、あんまりそんな風に考えたことなかったな、って…」
「そりゃ勿体ねえな」

 確かに、生まれたときから意識をせずにあるもので、ましてや身体の部位を長所や魅力だと突然言われても、たいていの人間は納得できないだろう。そうなのか、とまるで他人ごとのように思うだけ。往々にして長所というのはそういうものだ。
 しかも闘士として呼ばれたナマエにとって、脚は言葉通り闘うための武器だったのだから、なおのことだろう。

「…私の脚、そんなに胸より魅力あるんですか?」
「好みは人によるだろうから分からねえが…まあ俺様は好きだな」

 レオニダスは左手を滑らせ、剥き出しの太ももを撫でる。きめ細かく吸い付くような肌と、長さ、均等の取れた形状。そしてほどよい筋肉が中にありつつも、そこを包む柔らかな肉。この脚が武器となり相手を蹴り上げる姿が、目の当たりにしたにもかかわらず信じられなかったのは記憶に新しい。
 けれどそんな美しい武器が唯一、あの闘いによって負ったものがある。──左の太ももをぐるりと一周する、生々しい傷痕。それはラグナロクにおいて、神により切断されできたものだった。
 もちろん全てが終わった後、天界の医療神により治療されたため、脚は切れたことすら忘れてしまうほど、闘う前と同じようになんの違和感もなく動かせるまで回復していた。ただ唯一その傷痕だけが、痛々しいほどくっきりと残ってしまったのだ。
 とはいえナマエ自身、そのことは一切気にしていない。それどころかこの傷は神と闘った証で、だからこそあの暗い靴下を脱ぎ捨てたのだ。
 そんな誇りも含め綺麗だと言ってもらえたことが嬉しかったのだろう。その言葉にナマエは「そうですか」と照れたように小さく笑っている。
 ──胸どうこうの話はともかくとして。レオニダスの本心からの称賛を受け取ったナマエはすっかり機嫌が直ったらしく。「そういえばこの前、」などと別の話をし始めている。
 ふと、レオニダスは添えたままの左手をゆるりと動かし。その傷痕を指先でくすぐってみせた。柔らかな中に残るそこは、色が変わり引きつっているため、白い肌の中でもかなり目立って見えた。

「っ…、」

 時折軽く引っかいたり、小さなしわを一本一本伸ばしながらなぞったり。その形を確認するかのようにぐるりと一周するレオニダスの指先に、ナマエは会話をぴたりと止め。代わりに小さく吐息を漏らし始める。

「っあ、あの、おじさま…それ、」
「あ?」
「それ、止めて…」

 レオニダスの左手を掴むと、ナマエはわずかに吐息を漏らしながら、やわく抵抗をする。綺麗に真っ二つにされた太ももはもうすっかり痛みが無いとはいえ、皮膚が薄く部分に触れられると、少しぞわぞわとした、なんともいえぬ妙な感覚を覚えるのだ。
 同じように傷跡が多く残るレオニダスならばその感覚は分かりそうなものだが、神に付けられたそれはまた別なのだろうか。それともナマエの身体が人より敏感なのか。どちらにせよ弱点に触れられているような感覚に、ナマエの脚はぴくぴくと小さく反応を示している。

「…お前これ、気持ちいいのか」
「え、あ、わ、わかんな、っあ、♡」

 分からないと言いつつもそんな甘い声を出していれば、気持ちいいと言っているのは明らかだ。くわえてナマエは今日、のんびりしたいからと普段の上着を着ておらず。ぴったり貼り付く胸元の布が、その下で硬く勃ち上り始めている突起の形を露わにしているのだから。
 すっかり蕩けている様子に、ここも開発すればそれなりの性感帯になりそうだなとレオニダスは頭の片隅で思う。けれどそれはまた今度。今はすぐ傍で蜜をこぼし始めているであろう秘部に触れてやらなければ、焦れたナマエが拗ねてしまうからだ。

「ほら、脚開け」
「あ、ぅ…」

 ぺちんっと軽く太ももを叩かれたナマエは一瞬躊躇するような素振りを見せたものの、すぐにゆっくりと脚を開いていく。素直に言うことを聞けば、その分たっぷり甘やかしてもらえるのだと、身体が理解しているのだ。
 わずかに脚が開かれたとき、待ってましたとばかりにレオニダスの手が服と下着を丸ごと抜き去っていき。秘部は白日の元にさらされてしまう。
 そこは一切触れていないにもかかわらず、会陰を伝い尻まで濡らしていて。ナマエが浅く呼吸をする度入口がきゅうきゅうと、何かを欲するように蠢いていた。

「あ、あ…っ♡!んう、ぁ、あうぅ…っ」

 レオニダスは柔らかな太ももの間、三角形にできた隙間をさらに割開くように左手を差し込み、ぬかるむそこへ指先を触れさせる。
 くちくち音を鳴らすあわいは待っていましたと言わんばかりに収縮すると、つるりと指を呑み込んでしまった。

「あっ!♡ん゙、んん、ッ♡♡」
「おい、少しは力抜け。慣らせねえだろ」
「や、ぁう、むり、むりですぅ…っ♡」

 レオニダスの節くれだった太い指が狭い中を圧迫し、その圧迫感でナマエがさらに締め付け。もやは食いちぎられるのではと思うほどだった。元々体格差があるのだ。指でさえそれなりの太さがある以上、異物感は否めず。ほとんど反射で締め付けてしまうのだろう。
 指を呑み込むそこが温かいのと、柔らかい太ももに手を丸ごと挟まれているというのはそれなりに心地よいが、このままでは一向に先へ進めない。
 レオニダスは仕方ないとばかりに、ナマエを抱えていた右手をゆるりと動かし膝裏の辺りへ回すと、そのまま思いっ切り持ち上げてしまった。

「っあ、え…!?」

 突然がくんっと落ちた視界と、下へ引っ張られたような身体の感覚に、それまでふわふわと浮かんでいたナマエの思考は一気に冷めてしまう。
 そうして思わず見上げたナマエの視界には、先程まで近くにあったはずのレオニダスの顔が、今度はその立派な胸筋越しに逆さまに見えるようになっていて。後頭部には、硬さと柔らかさ、ごつごつしながらもどこか弾むような弾力がわずかに感じられ。そしていつの間に膝裏に回された手は、まるで赤ん坊がおしめを変えられるときように、ナマエの脚を抱えてい、て──、

「え、え…!?」

 変えられるときのように、ではない。まさしくその格好をさせられているのだ。膝裏を抱えられ引き摺られたことで身体がずり落ち、レオニダスの腹筋を枕のようにしながら。
 自らのとんでもない体勢をナマエがようやく把握できたのは、その状況になり数秒経った頃だった。

「なっ、なにしてんですかぁ!?」
「うるせえ」

 すっかり冷静になったナマエは自らの恥ずかしい恰好を理解した途端わあわあと騒ぎ出したけれど、レオニダスはどこ吹く風。「手離して!」「おじさまの馬鹿!」ときゃんきゃんと吠えるナマエを余所に、今だとばかりに力の抜けた中で指を動かし始めた。

「あ、っ♡や、やだっ、おじさま止めて…ッ♡」

 先程までの勢いはどこへやら。抵抗の声は途端に甘い声へと変わってしまい。ようやく与えられた刺激に喜ぶ中は、泉のようにどんどんと蜜を溢れさせていく。
 あっという間に自らの手を汚した蜜を、ぐちっぐぽっとわざとらしく音を立てながら、絡めるように、レオニダスは指の動きを早めていく。そしてその指先がざらりとした一点を強く擦った瞬間。ナマエの目の前にはパチパチと白い花火が散った。

「やっ、あ…!だめっ♡だめだめ、いく♡いっ、あ、ああぁっ!♡♡」

 大きく腰を跳ね上げるナマエの中から指をずるりと引き抜くと、同時に膝裏を支えていた手も離す。
 絶頂の余韻が残る身体には力が入らず、支えを失ったことでさらにずるずると落ちていき。ナマエは四肢を投げ出し、レオニダスの太ももを枕に完全にベッドへ寝転ぶこととなった。

「は、う♡んうぅ…っ♡」

 汗で頬に張り付く髪を退けてやり、こしょこしょと顎の下辺りをくすぐれば、絶頂の余韻に浸るナマエは「ん…♡」と嬉しそうにその手に擦り寄る。

「んっ、あ…」

 レオニダスの太ももへ頭を乗せていたナマエが、もっと撫でてくれと言わんばかりに身を捩らせたとき。ぽすんっ、と顔に何かがぶつかった。
 ナマエがうっそり閉じていた瞳を開くと、顔の横にゆるりと持ち上がるハーフパンツが見え。ぼんやりとした脳内でも、それが何なのかはすぐにに理解できた。
 少し身体を動かし、その膨らみへ猫のように擦り寄る。布越しでもわかるその大きさと、擦り寄せた頬に伝わるどくどくと脈打つ感覚に、ナマエはほとんど無意識のうちにそこへ手を添えていた。

「…おい、止めとけそんなもん」
「…やだ」
「おい…」
「おじさまだって、私が止めてって言っても止めなかったでしょう」

 ナマエが何をしようとしているのか、ゆったりとしながらも確実なその動きから読み取ったレオニダスは、制止の言葉を掛ける。
 けれどナマエは聞く耳を持たず。「おあいこです」と言いながらハーフパンツと下着に手を掛け、そのまま躊躇することなく両方とも下ろしてしまった。
 瞬間、効果音が付きそうなほど勢いよく現れたそれはナマエの頬をぺちんっと打ち。「ん、っ」と声を上げた顔に、わずかに滲んでいた先走りを飛ばした。

「…おっきい」

 嬉しそうに呟くと、ナマエは決していい香りなどしないはずのそこに鼻をすり寄せ。堪らないとばかりに深呼吸をする。その様子に先端からはさらに先走りが滲み、ナマエの頬を、鼻先を、じわりと濡らしていく。
 それを拭うこともせず。ナマエは濡れて艶めくあわいから真っ赤な舌を覗かせると、脈打つ熱の下から上へ、唾液を絡ませるように舐め上げ。辿り着いた先端を、そのまま小さな口内へ迎え入れようとした。

「っおい、それだけは止めろ、」
「あっ…!」

 けれどそれだけはさせない。させたくないと、レオニダスは寸前のところでその肩を掴んだ。
 何故止められたのか分からないといった様子のナマエをレオニダスは再び抱き上げ。今度は膝の上へ向かい合うように座らせる。

「もっと舐めたかった……」
「ずいぶん魅力的な言葉だな」
「じゃあどうし、んむっ」

 不満げなナマエの宥めるように、唾液で濡れる唇を拭ってやる。この小さな口いっぱいに頬張る姿も確かに見たかったが、今はそこよりも、もっと欲を吐き出したい場所があるのだ。

「舐めるよりこっちに入れさせろ」

 抱き上げられたことで内ももを伝い落ちていく蜜を掬い上げながら、レオニダスは腹に付きそうなほど勃ち上がった熱をぬかるむ秘部へ宛てがい。くぷくぷ小さな音を立てながら、先端を浅く抜き差しする。

「あ、あ゙っ…う、んん…!♡」
「ほら、そのまま腰落とせ」
「っぅ、あ゙…ッ♡はっ、あ゙、い、ああ…♡」

 ナマエは震える脚になんとか力を込め膝立ちになると、圧迫感に苦し気な声をもらしながらもゆっくり腰を下ろしていく。
 すっかり解れたそこは常人よりも大きなレオニダスのものをずぷずぷと飲み込んでいき。ナマエは腹の奥底でわずかに骨を叩くような音を感じると、小さく息をもらし腰の動きを止めた。

「は、ふ、あ…っ♡」
「大丈夫か?」
「ん…♡は、はい…、」

 その返事を聞いたレオニダスは、「動くぞ」と小さく呟き、胸にぐったりともたれかかる身体を抱え直した。けれどすぐに聞こえた、「待って…」という声と共に、その手に小さな手が重ねられる。
 入れたまま動けない状態は生殺しも良いところだが、負担のあるナマエに無理をさせたいわけではない。レオニダスは落ち着くために細く息を吐くと、「どうした」と尋ねる。

「今日、は…私が…っ」
「あ…?」

 熱い吐息交じりに呟かれたその言葉をレオニダスが理解する前に、ナマエは油断していた身体を軽く押し、柔らかなベッドへと倒す。そのまま後ろに手を突き腰を反らしてレオニダスの上に跨ると、首の後ろにあるホックに手を掛け、汗で貼り付いた上着を鬱陶し気に脱ぎ捨てた。
 もはや何も隠すものが無くなった白い身体を見せつけながら、堪らないとばかりにゆるりと笑う。その様子の、なんと淫らなことか。

「今日は、あっ…わたしが動きたい…♡」

 予想外の挑発に、レオニダスは中へ埋めていた熱が一層大きくなるのを感じる。一瞬欲望のまま動き出しそうになった心身をなんとか抑え。「んなふらふらで動けんのかよ」と発しようと口を開いた瞬間。ナマエは腰を持ち上げ先端まで引き抜くと、そのまま強く上下に動き始める。

「あ゙っ♡はぁ、あ、ああぁっ!♡」
「っおい、んな強く奥突いたら、」
「らって、おく、きもち、からぁ…あ゙ッ♡」

 まだ全てを受け入れる準備のできていない奥を無理やり開かんとばかりに穿つナマエの様子に、終わったあと「痛い」と唇を尖らせることになるのはお前だぞとレオニダスは思う。
 けれど同時に、熱に浮かされているとはいえ本人が望んでいるのなら好きにさせてもいいのだろう、とも思い。制止しようと開いた口をゆっくり閉じた。
 抜こうとする度、ぬかるむ内壁は行かないでとばかりに熱を包み込み。一瞬ぽっかりと空いた中を埋めようと再び刺し入れれば、壁を抉られきゅうきゅう痛いくらいに締め付ける。すっかり解れた中はどこを虐めようと気持ちが良いようで。羞恥を捨てたナマエは腰の動きを徐々に激しいものへと変えていく。

「は、あ!♡あっ、あぅっ♡んあ、あっ!♡」
「…俺様のちんこ使ってずいぶん気持ち良さそうだなぁ?」
「あぅっ…ごめんなさっ、ああぁ!♡」

 細い腰を懸命にくねらせるナマエの様子を見上げながら、レオニダスは手持無沙汰となった両手を、するりと彼女の胸へ手を滑らせ。揺れることのないそこを無理やり寄せるように大きく揉みしだきながら、掌の下で主張する突起をそのままぎゅっと摘んでやれば、ナマエは面白いほど反応を示した。

「い゙、やあっあうぅっ…!♡」

 子猫のような甲高い嬌声と摘まんだ瞬間ぎちりと締め付けた中は、ナマエが達してしまったことを示していた。──この反応。これが堪らないのだ。突起を刺激しただけで簡単に達してしまう、この反応が。
 大抵の女性は意図的に開発でもしない限り胸だけで上り詰めることは難しい。けれどナマエのそこは、小さいからなのかどうかは定かではないが、身体を繋げ始めた頃から敏感だった。それこそ指先でほんの軽く弾いただけでも、まるで雷に打たれたかのように腰を跳ね上げさせてしまう程度には。
 レオニダスも当初は「生前、もしくはこの天界で誰かに開発でもされたか」と疑ったものだが、自らの身体の反応に始終疑問符を浮かべ、「どうして、」と困惑しながら涙をこぼす様子に、そんな考えはものの数分で見事に消え去った。──つまるところ。ここまで刺激に敏感なのは、元々ナマエの胸の感度が良すぎたと。そういうことなのだろう。
 なんとも素晴らしい結論に、これを逃がす手はないとばかりにその日からレオニダスはナマエの胸の開発を始め。今ではすっかり、こうして痛いくらいに摘まもうと簡単に達してしまうほどになったのだ。

「やっ、レオおじさまぁ…そこ触らな、で、っ♡」
「あ?なんでだよ」
「だって、い、ちゃうからっ、あ゙、ああぁっ!♡」

 もういってんだろ、とは思いつつも手は止めず。レオニダスは突起を何度も摘み上げたり、そのまま根本から円を描くようにこね回したり。かと思えば爪先で先端を何度も弾いたり。代わる代わる与えられる刺激に、ナマエは背を弓なりに反らしながら、再び大きく達してしまう。

「あ、う…?、っ♡」

 閉じることのできない口からわずかに舌を覗かせながら、ナマエはわけが分からないとばかりに情けなく声を漏らしている。おそらく連続で達した身体に思考が付いていっていないのだろう。
 レオニダスは横臥していた身体を起こすと、もはや力が抜け上に乗っているだけとなっていたナマエの身体を片手で抱え直し。ついでとばかりに投げ出された脚も、そのまま自身の腰へ絡めさせた。
 入れたまま動いたせいか、中が擦れる度「あ、」「ひ、ぅ♡」と声を上げるナマエは、その度にも軽く達しているようだった。大きいものから小さいものまで含めれば、もはや何度達したか本人も分からないだろう。

「おい、しっかりしろ」
「う、んむっ、うぅ…♡」

 ぺちぺちと軽く頬を叩き、ぼんやりとした瞳でこちらを見上げたナマエに、覆いかぶさるように唇を重ねる。
 隙間からゆるりと舌を侵入させ、奥で縮こまっていたそれと粘ついた唾液を混ぜ合わせながら絡ませ。その度口内に溜まる唾液を、ナマエは小さく喉を鳴らしながら飲み込んでいく。
 懸命に上下する喉を横目に、レオニダスはナマエの腰を両手でがっしりと掴むと、未だ先端に吸い付くのみだった最奥を、そこに入れろとばかりに思い切り突き上げた。

「ん゙ゔ、っ!?ん、んんん、ッ〜〜!?♡」

 唇は離れることなく。上がる嬌声丸ごと飲み込んだレオニダスは、ナマエの身体が可哀そうなほど大きく震えたことと、同時に、自身の腹がひどく濡れたことに気が付く。おそらくナマエが潮を吹き出したのだろう。けれどそこで止まることなど、できるはずもなく。こじ開け、ようやく全て埋めることのできた最奥を堪能するように、レオニダスは何度もそこを穿つ。
 その衝撃でぱっと離れてしまったナマエの唇から、泣き声にも聞こえるほどの嬌声が上がる。

「ふ、ぁ♡あっあ゙あぁっ!あぅ、おくっ、お゙くつらいぃ…っ♡」
「はっ…惚けてるところわりぃが、もう少し頑張ってくれ」
「っあ、う、ん゙ああ、っ♡ひ、あ、はぁ、あ゙っ♡」

 返事はできないもののその言葉に何度も頷くナマエの様子に、レオニダスは「いい子だな」と頭を撫でてやると、再び最奥を突き上げ始める。
 
「や、っあ、あ゙あぁ、あっ♡」

 それなりの体格差でレオニダスの熱を受け入れるのは、快楽がある中とはいえ負担は残るようで。突く度わずかに隆起する薄い腹と、一瞬どこか苦し気に息を詰めるナマエを眼下に見つめながら、レオニダスは再び彼女の胸へと手を伸ばした。

「は、あ゙っ!?♡おじさまそこ、だめっ♡やあぁっ!♡」
「あ?何言ってんだ。お前これ好きだろ」
「っぅう、あ♡かりかりしちゃ、ひぁ、ああっ♡」

 ナマエの身体を支えているため今度は片手で触れたのみだったが、何度も達している身体にはそれでも充分な快感らしく。いっそ痛ましいほど赤く硬くなっている突起は軽く揉み込まれるだけで、その身を喜びに震えさせていた。
 ぎゅうぎゅうと締め付けを強くする中に、レオニダスはそろそろ限界だなと察し。埋めていた熱を入口までずるるっ…と引き抜くと、間髪入れず一気に腰を沈めた。

「い゙っ、あ!い゙く♡い゙っちゃ、あ、あ゙あぁ……ッ!♡」
「っは、ぁ…」
 
 硬く太い熱にごりごりと壁を抉られながら勢いよく穿たれ、同時に胸の突起を強く押し潰されたナマエの身体は、これまでで一番の快感に震え。大きく背中を仰け反らしながら、繋がるそこから派手に潮を撒き散らし達した。
 そして引きずられるように小さく声を漏らながら、レオニダスも蠢く中へ欲を吐き出す。

「あ、あぁ…あ、ゔ、うぅ♡、っ♡」

 最後の一滴まで注ぎ込むように腰を揺らせば、胎内へじんわり広がっていく精液の熱さにもナマエは小さく身体を跳ねさせる。
 もっととばかりに蠢く中に再び欲が首をもたげるも、レオニダスはそれを振り払うように深く息を吐き出し。散々ナマエの腹を蹂躙していた熱を引き抜いた。
 引き抜いた瞬間あわいからは、勢いはないが未だわずかに漏れる潮と、レオニダスが吐き出した精液が溢れ出している。道中混ざり合いながら柔らかな内ももをゆったりと伝っていくそれらは、散々弄った傷痕にも浸み込むように広がっていった。
 ──その痕を付けたのはどんな神だったか。ナマエの対戦相手を詳しくは知らないが、恋人に痕を残したという事実は正直なところ気に食わない。今さら言っても仕方がないし、なによりそれも彼女は誇りだというのだから。──それでも、恋人としてそう思うぐらいの理不尽は、きっと許されるだろう。
 レオニダスは汗でぺっとり貼り付くシャツを脱ぎ捨てると、もう無理だとばかりに脱力するナマエを抱き立ち上がり。互いに全裸というのも気にせず歩き出す。

「おじさま…どこいくんですか……」
「風呂だ風呂。そのまんま寝るなんざできねぇだろ」

 シーツは新しものがあるからそれを使い、ベッドはそれなりに広いのだから、ひとまず汚れた場所を避けて眠ればいい。全て片付けるのは起きたあとだ。
 昼間でも入れるようにと常に湯を張っている浴室へ、レオニダスは足早に向かう。
 かけ湯もそうそうに広い浴槽へ身を沈めれば、ナマエも落ち着いたのか眉尻を下げ瞳を閉じていた。

「はあぁ…あったかい…」
「そりゃ良かったな」

 溺れぬようにと気を使うレオニダスを余所に、ナマエは彼の胸元に身を預けながら、全身を包み込む心地よさにうっとりとした声を漏らしている。

「…おい無言で人の胸を揉んでんじゃねえ」
「だって…やっぱり私より大きい…」

 同じようにレオニダスも湯の心地よさにゆったり瞳を閉じたとき、突如胸を揉む感覚に襲われ再び目を開く。犯人が誰がなんてそんなの、一人しかいないのだが。
 胸に手を添え、時折細い指先で大きく残る傷痕をなぞるナマエは、おそらく何も考えていないのだろう。
 けれど、なるほど確かに。意図を持って触れられると、そこへ意識が集中しているせいか妙なむず痒さは生まれる。とはいえそれが快感に繋がることはないので、あれはある意味ナマエの才能なのだろう。レオニダスの与える快楽に弱い才能のようなものが。

「…あんまり触るなら、お前のも触るぞ」
「それは駄目です…」

 腰を支えている手が不穏な動きを始めたのを察し、ナマエはレオニダスの胸から手を離すと同時に、咎めるようにその手を掴んだ。
 冗談や戯れで止めたわけではないとその声音と強さから理解したレオニダスは、「そうかよ」とあっさり手の動きを止める。冗談半分の言葉だったということもあるが、なによりナマエが本気で嫌がることを無理にでもしようとは最初から思っていないのだ。

「でも、胸が柔らかくて安らぐっていうのも…まあ分かりますね…」
「そうかい」

 浴場ということもあり当然葉巻は吸えず。かといってナマエの身体に触れることもできない。仕方ないとはいえ若干の手持無沙汰は否めないが、どこか心地良さそうに胸元にもたれ掛かるナマエの様子をぼんやり見つめながら、たまにはいいかと、レオニダスは心地よさにゆったり瞳を閉じた。


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