※夢主→毒の扱いに長けているくのたま6年生
今日は一人だから、と。ナマエが、まるで生娘がするような誘いを恋仲である長次から受けたのは、昼休みの図書室。間もなく午後の授業が始まるという頃のことだった。
普段と何ら変わらぬ表情。けれどわずかに冷えた指先は、こうした関係になってから二年近く経つというのに未だに緊張を携えているのだと、ナマエに愛おしささえ覚えさせた。そうして、「準備を終えたらすぐ行く」と一も二もなく返事をすれば、また長次は小さく微笑み。「待っている」と、親指でナマエの指の背をするりと撫でおろしたのだ。
夜半を迎え、辺りは静寂に包まれている。湯浴みを終えたナマエが長次の元を訪れると、そこにいたのはまだ制服を着た長次の姿だった。手ぬぐいと風呂桶を持っているところを見るに、どうやら今から湯浴みに向かうところだったらしい。
謝る長次を、「こっちは気にしないで。ゆっくり入ってきて」と送り出し。ナマエは勝手知ったるとばかりに押し入れを開けると、丁寧に畳まれた布団のうち長次のものだけを引きずり出し。慣れた手付きでそれを敷き始めた。
「あ、おかえり」
「………」
それから、約数十分後。押し殺した足音と共に戻って来た長次は、入口に向け立てられた衝立の向こう、綺麗に敷かれた布団とその上に座るナマエの姿に、ほんの一瞬息を呑んだ。
それはわずかな反応であったが、静かな部屋ではナマエにも感じ取れたようで。ナマエは一瞬きょとんとしながらも、すぐに「なに、緊張してるの?」とけらけら笑い始める。
「そんな固くならなくても、別に取って食べやしないよ」
「…そういうことじゃない」
否定するその言葉にさえ妙な緊張が混じっているような気がして。ナマエは誘いを受けた昼間のときのことを思い出し、また小さく笑い声を上げる。長次はどこかばつが悪そうにしながら、後ろ手で静かに障子を閉め。そうして、未だ小さく笑いながら「長次、早く」と手招くナマエの元へ寄り、その隣に安座した。
「ちゃんと髪乾かした?」
「…軽く」
「駄目だよちゃんと乾かさなきゃ。風邪引いちゃうよ」
「そのうち乾く」
「もー、そういうところは大雑把なんだから」
まるで親のように言いながら、ナマエは長次の膝の上へと腰を下ろし。胸元へ背を預けた。
長次もそれを分かっていたようで。当たり前のようにナマエの腹の前に両腕を回すと、むしろもっとくっつけとばかりにナマエの身体を引き寄せる。
「はは、長次あったかい」
「もそ…」
風呂上がりで温まった長次の身体が心地よく。ナマエはご機嫌な笑みをこぼしながら、首を傾け長次を見上げる。ぱちりと目が合えば、長次もわずかに顔を寄せ。ナマエのつむじやこめかみ、頬に唇を落としていく。
「ふふ。長次、くすぐったい」
ナマエが頭をわずかに振る度、下された髪がぱさぱさと揺れる。ろうそくの灯りを反射し艶やかに流れる髪をまとめ掬い上げながら、長次はそこに唇を寄せる。力を抜けばつるりと手の内からこぼれ落ちる髪は、まるで絹糸のようだった。
「…髪、今日さらさらでしょ?」
手慰みのような長次の行動に、ナマエはどこか嬉しそうに尋ねる。
「ああ。…いつも綺麗だが、今日は滑るみたいだ」
小さく上げられた口端に、わずかではあるがもそもそ響く低い声には、やはりどこか楽しそうな色が含まれていた。
「もっと触っていいよ」
まるで犬が甘えるかのように、ナマエは長次の手にぐりぐりと頭を擦り付ける。摩擦が起きているはずのそれでも、やはり絹は美しさを保っている。むしろ擦り付けられている掌の方がくすぐったいほどだった。
「実はね、タカ丸くんにケアしてもらったんだ」
「タカ丸に…?」
ご機嫌にナマエの頭を撫でていた長次の手の動きが、ぴたりと止まる。けれどナマエはそれに気付かず話を続ける。
「うん。放課後たまたま会ったんだけど、よければナマエちゃんの髪弄らせていじらせてもらえないかなあ、って。暇だったし、せっかくだから頼んじゃった」
聞けば、近々タカ丸の実家である髪結い処で、女性向けの新商品を出すらしく。その試作品ができたから、よければ試させてほしいと言われたらしい。
長次との久方ぶりの逢瀬。そんな日に綺麗にしてもらえるなど願ってもいないことで。その提案に、ナマエはすぐに了承の意を返した。
「傷んでたところも取ってもらえたの。仙蔵にも負けてないでしょ」
そうして絹の如き仕上がりとなった髪を自慢げに持ち上げるナマエを、長次はじっと見つめる。
指通りも触り心地もすべてが美しくなった髪は、確かに学園一髪が美しいと言われる仙蔵にも負けていないだろう。いや、むしろ勝っているとさえ思うのは、恋仲という長次の立場とひいき目もあるのだろうが。──美しい。そう、美しいのだが。
「……」
「長次?」
先ほどまでの和やかさから一変、わずかに重さを含んだ雰囲気に気付き。ナマエは預けていた上体を起こし背後を振り向くと、伺うように長次の顔を覗き込んだ。
むすりと、ほんの少し棘のある空気。けれどそれとは正反対に、口端はわずかに上がっている。感情とは真逆の顔をしてしまう彼にとって、それは怒りの表情だった。
「…長次、」
「……」
「怒ってる?」
「怒っていない」
間髪入れず否定される。これは半分真実で半分嘘だろうと察したナマエは、もう少し適当な言葉はないかと考え始める。
あの会話の中で、長次の機嫌が変化したのはいったいどのタイミングだっただろうか。温かいとくっつき、じゃれあい、髪が綺麗と触れ。タカ丸のおかげだと話し──。そこまで思い出したところで、ナマエはようやく一つの可能性に辿り着いた。
「長次、もしかして…」
溢れる喜びで上がりそうになる口端をなんとか抑えながら、ナマエは呟くように尋ねる。
「…やきもち?」
その問いに長次はなにも答えなかった。代わりに、迫るナマエの視線から逃げるようにわずかに視線を逸らす。それだけでナマエには充分理解できてしまった。
「ちょ〜じぃ〜!」
ついに喜びを隠すことなく声を上げながら、ナマエは長次に勢いよく抱きついた。普段であれば腹筋だけでナマエのことなど支えられるはずの長次は、それに抵抗することなく。観念したかのようにそのまま一緒に布団に倒れ込む。
「妬いちゃったんだ?も〜長次ってば」
長次のはだけた胸元へ頬を擦り付けながら、ナマエは嬉しそうに顔を緩ませる。
「…ナマエ、くすぐったい」
「んふふ」
滑らかな髪が首元をくすぐり長次がもぞりと身を動かすも、ナマエは聞く気が一切ないようで。嬉しそうな声と共に上体を起こすと、長次の顔の横に手をつき、上からその顔を覗き込んだ。
束になっていた絹はぱらぱらと落ちていき、布団の上で乱れる長次の茶色と混ざり合う。質も長さも異なるふたつが溶ける様を、ナマエは満足げに見つめている。
「妬いちゃって。可愛いね、長次」
うすらと細めた瞳をとろけさせ。どこか上擦った声で言いながら、ナマエは長次の、人よりほんの少し落ちた鼻先に口付けている。すこぶる機嫌が良いときの癖だった。
熱烈な口付けを受けながら、長次は猫の如く甘えるナマエを見やる。──ナマエが身を乗り出し顔の横に手をついたことで、当然の如く長次の視界には、重力に逆らうことなく揺れる胸が映り込んでいる。くわえて白い寝衣の下には、普段巻いているはずのさらしが巻かれていない。眠るためにここへ来たのだから当然といえば当然なのだが、そのせいで先端の淡く透ける突起も、その存在をゆるく主張していて。
正直なところ膝に抱き上げた時点で上から見えていたし、なんなら抱き締める腕にも触れてさえいた。それでも久方ぶりの逢瀬だ。性急に身体を重ねるのではなく、こうして戯れるというのも、長次としてはやぶさかではなかったのだが。こうして上に乗られるとなれば、話しは別だ。
視覚からの暴力だけでなく肉体的なものもくれば、さすがに長次も黙っているわけにはいかず。多感な身体はあっという間に反応を来たしてしまった。
「…ナマエ」
「ん?…え、あ」
熱烈な口付けを受けながら、長次は小さくナマエの名を呼ぶ。その肩をがしりと掴みと腹に力を込め起き上がると、そのままナマエの身体を押し倒し。今度は自らが見下ろす体勢へと変えてしまった。
あっという間に回転したナマエの視界には、長次と、その背後に天井が見えている。そして開いた足の間には長次の身体が挟み込まれていて。
「…ふふ」
見慣れた景色と体勢に、ナマエは一瞬きょとんとしながらも、相変わらず嬉しそうに笑い。長次の首に腕を回しぐっと距離を縮めると、左右の頬の傷に唇を寄せた。
やわい唇はそのまま長次のそれへと滑り、ついばむような口付けが始まる。ついては離れ、時折擦るように合わさりながら、やがて薄く開かれ。長次の厚い舌が、ナマエの口内へと差し込まれる。
「ん…ふ、っ」
舌は歯列を、頬の内側を、上顎をくすぐり。くちくちと音を立てながら唾液を含ませ、舌の根元からまるごと絡め取る。口内が満たされる多幸感、けれど蹂躙される本能的な恐怖からか、ナマエは無意識のうちに、逃げるように身じろいでいた。
けれどいつの間にか後頭部と背中に回された長次の腕がそれを阻み。まるで逃げるなと叱るように、さらにその身を密着させる。
「ふ、ぁ…ちょ、ぅじ……っ」
それでも息継ぎの合間になんとか名を呼べば、ナマエの苦しげな声に気が付いたようで。長次はようやく、どこか渋々といった様子で唇を離した。
それでも距離は取られず。鼻先が触れ合う距離でじっと見つめ合う。唇を撫でる熱い吐息に、ナマエの涙にうすらと涙が滲む。
「…今日は、」
ふと長次が呟いた。ナマエは「ん…?」と小さく、返事のような、思わず漏れてしまったような声を返す。
「い組も、は組も、どちらの部屋も不在だ」
その言葉に、ナマエは数度瞬きをする。
「急に実習が入ったの?」
「いや…。い組は小平太と同じ実習だが、は組は、それぞれ委員会の仕事が、夜通しで入ったらしい」
聞くと、い組と小平太は実習で不在だと事前に分かっていたが、は組に関しては完全にイレギュラー。しかもそれが発覚したのが今日の正午頃のことだったらしい。──なるほど、だから長次は昼に誘いの言葉をかけてきたのだと、ナマエはようやく合点がいく。そうして思い出しみれば、ここへ尋ねてきたとき、確かに両隣の明かりは灯っていなかったかもしれない。浮足立っていたせいでそこまで気にしてはいなかったが。
つまりは、今この周囲には人の気配もなく。それこそなんでも、好きにできる状態らしい。
長次の言いたいことを察し、ナマエはゆるりとほくそ笑む。
「じゃあ私はなにも知らず、まんまと食べられにきちゃったわけだ」
「…最初はそんなつもりじゃなかった」
「うそうそ、分かってるよ。私が誘ったんだから」
怒らないで、と甘えるように言いながら、ナマエは後頭部を支えていた長次の右手を掴むと、服の上から自身の胸へと触れさせた。
硬い掌が柔らかなそこに沈む。けれど中心には確かに小さな芯が触れ。長次はぴくりと眉尻を動かす。
「ちょーじ」
少し間延びした声。甘さを含んだそれは、ナマエが先を強請るときのものだ。
長次は誘われるまま、はだけた襟元から手を滑り込ませ。やわらかなそこへ直接触れると、重力で少し横に流れた肉を、掬い上げるように包み込む。
「あ…っ」
むにいと形を変える胸を揉み始める。わずかに硬くなっていただけの突起は、掌の下ですぐにその存在を主張し始めていて。掌の付け根で軽く圧迫するようにこねてやれば、ナマエは甘やかな鳴き声を上げた。
「あ、あっ♡ちょ、じぃ…っ!」
長次の手を掴んでいたナマエの手に力が込められる。けれどそれは強いものでなく。与えられ始めた快感をどうにかしようという防御反応のような、ひどく弱いもので。いっそ強請っているとさえ思えるようなものだった。
掴まれる腕はそのままに、長次は腰を抱いていた左手をナマエの襟元へと滑らせる。大きく開かせ上半身をあらわにさせると、今度は両手で胸へと触れた。
右手は揉みながら、分厚い掌で突起を押し潰すようにこね回し。左手は親指と中指できゅっと摘まみ上げ、人差し指で伸びた先端をかりかりと引っかく。
「ん、ぁ…♡っあ、♡」
質の異なる快感に、ナマエは布団から背を浮かせ喘ぐ。その度後頭部が枕に擦り付けられ、艶を帯びた髪がぱさぱさと散らばった。
そうして乱れる様さえ美しいと、いつもであれば思っただろう。特にこうして綺麗にしてきたのだと、ナマエが得意げにいうのならばなおのこと。
だが、その経緯を知っている以上、長次はどうにもそれが気に食わなかった。美しいと思う度、同時に靄のかかった感情がわずかに生まれ。そしてそれに自己嫌悪する。心という器の中は醜いほどにない交ぜになっていた。
そんな思念を振り払うように長次は上体を屈めると、ナマエの左胸に顔を寄せ。すっかり勃ち上がった突起を口内に含む。
「や、あぁ…っ!♡」
強く吸い上げ、唾液を絡ませながら全体をぐるりと舐め回したり。かと思えば時折軽く噛んだり、押し潰したりしながら、まるで口吸いでもするように、口内で好き勝手に弄んでいく。
「はっぁ、あ、ッ♡んうぅ…♡」
まるで赤子のように必死に吸い付きながら、長次は胸を揉んでいた左手をするすると下ろし。はだけていた寝衣の帯を解く。乱れ崩れほとんど意味をなしていなかったナマエの寝衣は、なおざりに腕を通すだけとなってしまった。
布団に横臥するナマエの白い身体の輪郭を、ろうそくの灯りがぼんやりと照らす。その輪郭をなぞるように、時折、柔らかな腹の肉に痕が残らない程度に軽く噛みつきながら、徐々に顔を下げ。そうしてへその下に辿り着くと、触れた唇がくすぐったかったのだろう。ナマエの薄い腹に力が入りわずかに固くなるのを、長次は唇で感じ取った。
いっそ内臓は入っているのかと疑いたくなる薄い腹だ。日々の鍛錬でしっかり筋肉も付いているのだと知っているはずなのに、こうして抱く度、長次は毎度驚かされる。本人はまだまだ筋肉をつけたいと嘆いているが、この薄さも長次はそれなりに好きだった。まあ正直、ナマエという存在であれば、長次にとってはなんでもよいのだが。
「長次…くすぐったい…、」
執拗にそこへ触れていたからだろう。くつくつと笑うナマエに「我慢してくれ」と小さく返事をしながら、ゆるく閉じかけていた膝に手を添え開かせる。あらわになる、既にしとどに濡れた秘部は、次を期待するようにひくついていて。長次は躊躇することなく顔を寄せると、べろりとそこを舐め上げた。
「あ…っ♡!?」
腰に絡められていた細い足がわずかに宙に浮き、長次の背を叩く。やわい内ももが顔を挟み込み、くんっと尻たぶが物欲しげに上がる。そうして近付いたあわいへ、今度は覆うようにむしゃぶりつく。
「ひっ、!?い゙あ、っああ…ッ!♡♡」
それまで、どこか慎ましやかに余裕さえ含んでいた声音が、悲鳴にさえ聞こえるほどに甲高いものへと変わる。その声に誘われるように中へと舌を滑り込ませ、尖らせた先端で抉るように内壁を撫で回す。
「や、あ、ちょ、ぅじぃ…ッ!ああぁ、あ…あっ!♡」
入口も、その少し上で震える突起も。まるごと口に含みながら、上唇で突起をくりゅくりゅと軽く潰し擦ってやる。途端、内ももやふくらはぎがぶるぶると震え。しなやかな指先が縋るように長次の頭を押さえた。
「あ゙、それだめっ、あ゙ッあぁ、や、あ、──っ!♡」
舌をきゅうと締め付けながら、ナマエは身体を大きく仰け反らせる。長次は痙攣する中から舌を引き抜き顔を上げると、溢れた蜜で濡れた口元を拭いながら、今度は指でひくつく入口をなぞりあげた。
「…指、入れるぞ」
達した余韻で呆けているナマエに一応断りを入れながらも、その返事を聞くことはせず。長次は入口を割り開くと、中指を一本、ゆっくりと差し込んでいく。
「あ、あ゙…っ、は、ぁ♡」
ぬかるむ中をかさついた太い指が割り開く。そうして容易く根元まで飲み込むと、奥から溢れた蜜が途端に指へと絡みつく。
舌で浅いところを弄っただけではあったが、これなら大丈夫だろう。長次は二本目の人差し指も差し入れ、そのまま奥を、こちゅこちゅとくすぐり始める。
「ひ、んぅ、ゔ、〜〜ッ♡♡」
奥を解しながら、時折指を軽く曲げ。かと思えばぎりぎりまで引き抜いて、入口をぐぱりと広げる。空気を飲み込んだ蜜の音がごぷ、ぐぽっと重たく響き、淡い桃色の粘膜は、ナマエが浅い呼吸をする度にひくひくと震えていた。
目の前の卑猥な光景に、長次は脳内が沸騰する感覚を覚え。耐えるように喉の奥底から熱い吐息を吐き出す。
「…ナマエ、」
長次は上体を起こすと、ナマエの顔を覗き込み。汗で額や頬に張り付く髪を退かしてやりながら、口端からこぼれる唾液を親指で拭ってやる。
「は、っぁ…?♡」
すると、その行動を「舐めろ」という意味だと思ったのだろう。ナマエは大した迷いも見せず口を開くと、長次の指先へ、ちゅうと吸い付いた。今度はびくりと長次が肩を揺らす。
まとわりつく唾液の温かさと、粘つき、ぬめる舌の感触。──明るく、接点の少ない忍たまの下級生にも優しいと慕われ。けれどひとりのくのたま六年生として、凛とした強さを持っている。そんなナマエが、まるで子供のように。けれど艶めかしく欲に従う姿が、いつも長次を堪らない気持ちにさせる。
茹だる熱は心臓の動きを速め、鼓動を大きく響かせる。下半身は早く解放しろと痛いくらいに張り詰め、先端へ褌が擦れる些細な刺激でさえ腰を震わせた。──でも、まだだ。長次は唇を噛み締め、名残惜しさと共にナマエの口内から指を引き抜くと、代わりに揃えた指の背で、やわい頬をするりと撫でる。
「ん…ふふ……」
そんな長次の葛藤など知らぬナマエは、撫でられたことが嬉しいのだろう、小さく笑みを浮かべながらその手に擦り寄っている。
その様子に少しだけ落ち着けた長次は、小さく息を吐き。上体を倒し汗ばむ額に軽く口付けると、止めていた指を再び動かし始めた。
「っや、あ゙…!♡う、ぁんっ♡んぅうッ♡」
少し手前、入口に近い腹側にあるざらついた場所を、傷付けないよう、けれど強めにひっかく。すっかり柔らかくなったことで大胆に動けるようにもなり、挿れていない薬指と小指の背は、ついでとばかりに会陰を圧迫している。
「っや、あ゙あぁ…!♡あ、ぁうっ、んぁッ!♡」
中から外から刺激され、ナマエの身体にはじわじわと快感が溜まっていく。腹の奥底になにかがじくりと滲み、指を締め付ける度、出せとばかりに疼いている。
「やらっあ゙、っ!ちょ、じぃッ♡でちゃうからぁ…!」
所在なさげに宙を舞っていた足先が、開いたり丸まったりを繰り返している。限界が近いときのナマエの癖だ。
「ああ…構わない」
「なっ、や、やだ!あ、あぁあっ…!♡」
長いまつ毛に雫を付けぐずぐずと子供のように泣きながら、ナマエは慌てて長次の腕を掴む。けれどそこにはまったく力が入っておらず。なんの意味も成していなかった。
ざらつきを引っかいていた指を、今度はとんとん、と叩き揺する動きへと変える。ふっくらとわずかに膨らんだそこは揺らす度指を締め付け。そうして、秘部の入口で震え勃ち上がる突起も、親指でぎゅうと圧し潰した。
「っ、──!?ひっあ゙、あ゙あぁ…っ!♡♡」
ナマエは悲鳴のような嬌声と共に、髪を振り乱しながら、喉を、身体を仰け反らせる。千切らんばかりに指を締め付ける秘部からは、びしゃりと勢いよく潮が噴き出し。小さな弧を描いたそれは、長次の手首までも濡らしていった。
「あっ、♡う、ぁ…ッ♡」
真っ赤な顔で、生理的な涙をこぼしながら呼吸を荒くしているナマエを横目に、長次はぬかるむ中から指を引き抜くと、興奮でかすかに震える手で自身の帯を解いていく。
寝衣をすべて脱ぐこともせず前だけくつろげ、そうして、痛いくらいに張り詰め先走りで濡れる褌をも取り払い。ナマエの腰を掴み持ち上げると、自身の足の上に尻たぶを乗せ抱えた。
「あ、♡ちょ、じ…ま、まって…ッ、」
立て続けに達し、最後には潮まで噴いたのだ。いくら鍛えているとはいえ、閨事の快楽は単純な体力だけを消耗するわけではないから辛いのだろう。
けれどそんなことを聞き入れる余裕は、今の長次にはなかった。部屋に来てから煽られ、自らの手で乱れるナマエの姿を、散々目の当たりにしたのだから。
「…無理だ。待てない」
制止を無視し、先端を秘部にあてがう。途端、待っていたとばかりに吸い付き、奥から溢れた蜜が屹立に絡みつく。長次はひとつ深く長く息を吐くと、ゆっくりと腰を進めていった。
「は、あ゙…っ!♡あ、ぁ、あ、……ッ!♡」
既に二回達しているおかげか、中はすんなり長次のものを飲み込んでいく。
「ひ、ぐ…っ♡は、あぇ…ッ♡♡」
ナマエは背こそそれなりに高いが、いかんせん身体が薄い分、長次のものを受け入れる最初のときには、その圧迫感にいつも苦し気な声を漏らしている。くわえて体格差もあるものだから、思っているよりも負担は大きいのだろう。
ただ、こうして何度も交わった今では、その分馴染むのも早いようで。敷布を強く握り締め、ちかちかと瞬かせる瞳の奥には、確かに快楽の色が滲んでいた。
「は、あ、……っ、♡」
こつんと最奥に当たり、長次が腰を止める。ようやく腹を満たした熱にナマエは枕に横顔を擦り付けながら、閉じられぬ口で大きく息を吸い込んだ。かふ、と咳にも似た乾いた音が、喉の奥から漏れる。
「………」
「ん…、?」
白い敷布に乱れる絹髪を、長次の手がまとめ退ける。その手付きが、いつもよりほんの少しだけ乱暴、もとい戸惑いを含んでいることにナマエが気付けたのは、普段の長次がいっとう優しく、その身に触れてくれているからなのだろう。
ナマエは顔を上げる。瞳に映ったのは、太い眉をぐうと寄せ、少し垂れた眦を細め。わずかに下唇を噛み締める、長次の顔だった。
難しいような、悩んでいるような。様々な感情がない交ぜになっているであろうその表情を見た瞬間、ああこれは、と。ナマエはすぐに思い至る。
ナマエは両腕を長次へと伸ばす。それに気付いた長次も身を屈めると、その腕はするりと首に回され。隙間など知らぬとでもいうように、互いの身体が重なった。
「ごめんね。そんなに嫌だったなら、断ればよかった」
耳元で優しく囁かれた言葉に、長次は一瞬息を詰め。けれどすぐに小さく吐き出すと、華奢な身体がしなるほどに強く抱き締め返した。掴んでいた細腰にはくっきりと手の痕が残されている。
「…別に嫌とは言っていない」
「あれ、そうだった?」
どこか拗ねたような口振りの長次に、ナマエは「そっか」とくつくつ笑う。
「でもやっぱり、長次が少しでも気になるなら、次からは断るようにする」
そうして、すべて分かっているという風にナマエは優しく長次の頭を撫でた。
──ナマエのことを信じていないわけでも、タカ丸の行動を煙たく思っているわけでも、もちろん二人の仲を疑っているわけでもない。だから嫌なのかと聞かれれば、それは少し違う。ただ気になるだけ。ほんの少し、心がもやっとするだけなのだ。
長次のそんな心の機微を、ナマエはしっかり分かっていた。けれど重たく深刻に言ってしまうと
、真実がそうでないとしても、自身の想いをどう言語化すればいいのか分からず長次も困っただろう。だからこそナマエはなにもないと、いつもの笑みを浮かべたのだ。
そしてナマエのそんな想いも、長次はよく分かっていた。それに自身がどうしようもないほど救われているということも。
「…あ、でもタカ丸くんも、変な意味は持ってないからね。むしろ最初、『もしかしてナマエちゃんの髪を触るなら、中在家くんに許可取らなきゃ駄目かなあ〜?』とか言ってたくらいだし」
「…それはタカ丸の真似か?」
「うん。似てるでしょ?」
「ちっとも」
「えー、そう?」
結構いい線いってたと思うけど、なんて言いながら、ナマエは肩を揺らし笑っている。
欲をぶつけられたにもかかわらず普段と変わらぬその様子に、甘えているのは自身の方だと、長次は心臓が締め付けられる感覚を覚え。こみ上げる想いを示すように、抱き締めるその腕に、さらに力を込めた。
「わっ…んふふ」
自身の肩口にぐりぐりと頭を擦り付ける長次を横目で見やり。「くすぐったいよ」と楽し気に言いながら、ナマエはそのこめかみに小さく口付ける。
「可愛いね、長次」
どこか上擦った声は、持ちうるすべての愛と呼ばれるものを詰め込んだような、そんな音をしていた。
敷布に落ちた髪が水面のように揺らめき、互いの境を曖昧にする。我ながら現金な思考回路だとは理解しつつ。混ざり合う糸が、今度はとても嬉しいと思えた。
長次は顔を少し上げると、こつんと額を触れ合わせ、至近距離でじっとナマエを見つめる。数秒見つめ合い、ゆるりと目を細めたナマエが、強請るように唇を軽く尖らせ。長次のそれに、ちうと吸い付いた。
「………」
「んふふ、…っん」
啄み、離れ。悪戯が成功したとばかりに喜ぶ唇を、今度は長次が追うように重ねる。
「んっ、ちょ、じ…んん…っ♡」
「っ、は…」
互いの熱い吐息が耳をくすぐり、わずかに冷静さを取り戻していた身体は、一瞬で再び情欲に支配されていく。
先に我慢ができなくなったのはナマエの方だった。強請るように長次の唇をこじ開けると、隙間から舌を滑り込ませ、拙い動きで舌を絡め取る。
それに応えるように、長次も自身のそれを絡ませながら、止めていた腰をゆるゆると動かし始めた。
「ふっ、は…♡あ、あぁ、あっ、ん、♡」
挿れてしばらく動かなかったおかげか中はすっかり馴染んだようで。最奥を突けば、わずかに開いた子宮口が、先端を嬉しそうに飲み込んでいる。
「ひ、ゔっ♡や、ああぁ、〜〜っ♡ちょうじ、ちょぉじ、ぃッ!♡」
散々指で弄りふっくらと主張している内壁を先端でしっかり辿りながら、ごつごつと最奥を突く動きは、くすぶっていた快楽を乱暴に引きずり出す。
肌がぶわりと粟立つ心地と共に、わずか開いた蛇口のように少しずつ噴き出る潮が、互いの下生えを濡らしていた。
「ナマエ、ナマエ…っ、」
「あ゙、あんっ!♡らめ、も、い゙、いぅ、っ♡♡」
目の前に瞬く閃光を涙で滲ませながら、ナマエが息絶え絶えに限界を訴える。長次は返事の代わりに、開いたまま唾液をこぼす唇に軽く口付けると、腰の動きを速めていく。
「あ゙っ、らめっ!♡い゙、ぅあっ!♡あ、ぁああ、──ッ!♡♡」
「ん゙…、っ」
締め付けに耐えられず、長次も中へと吐き出す。直後に、それまでわずかに溢れるだけだった潮が勢いよく噴き出し。長次の腹にぱたぱたと飛び散った。
「ひ、んぅ、〜〜ッ!♡♡」
「はっ…ナマエ、」
「んむ、っん、ぁ…♡」
子宮に直接注ぎ込まれる精液の熱さに、ナマエは身体を痙攣させ。しがみ付いた長次の背中を縋るように引っかいている。けれど寝衣を脱いでいないせいで、その手が痕を残すことはない。脱いでおけばよかったと、長次は頭の片隅でぼんやり思った。
代わりに汗ばむ胸元に顔を寄せ。やわく噛みつきながら、心臓の音が響くそこへ、音を立て強く吸い付いた。
「あ、中在家くん。ちょうどよかった」
「…もそ」
翌日。返却期限を過ぎた本の回収を終えた長次は、中庭でタカ丸に呼び止められた。
「どうした」
「これを渡したくて」
そう言って渡されたのは、長次の掌半分程度の大きさの、小瓶だった。中には少し粘度のある琥珀色の液体が入っている。
突然渡されたそれを、長次は不思議そうに見つめた。
「これは?」
「新しいケア用トリートメントなんだけど、多分中在家くんの髪質に合うと思うんだ〜」
「…どうして私に?」
尋ねれば、タカ丸は「実はね、」と笑みを浮かべる。
「昨日、ナマエちゃんの髪を弄らせてもらったんだけど」
「ああ」
「そのとき、中在家くんの髪が少し痛んでるみたいだから、いいケアの方法はないかなって相談されたんだ」
タカ丸の言葉に、長次はわずかに目を丸くした。
「…そうなのか」
「うん。だから、使ったらぜひ感想聞かせてほしいな」
長次は小瓶をぎゅうと握りしめる。──悋気して、ナマエに無体を強いておいて。それでも真を知った長次の心に湧き上がったのは、どうしようもない喜悦だった。
「…ありがとう。……ナマエも、髪が綺麗になったと喜んでいた」
喉から絞り出した声は、それでも音になると普段となんら変わらぬ冷静さを保っていた。そこに、毛の先ほどの牽制の意が込められていることなど、誰にも見せぬとでも言いたげに。
長次の言葉に、タカ丸は「それはよかった〜」と間延びした声で笑う。
「あ、もしよかったら、今度中在家くんの髪もアレンジさせてね」
「……考えておく」
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