霞がかった視界に、全身を包み込む温かさ。怠さの滲む四肢がわずかに浮く感覚さえ心地良い。横で勢いよく流されるシャワーの音をどこか遠くに聞きながら、ナマエはゆったり瞼を閉じる。
気を抜けばこのまま溶けてしまいそうだった。海賊が風呂で眠りこけてそのまま、など冗談にもできないが、すぐに、それでももう良いかもしれないと思い始めた。すっかり体力を奪われた身体は、やはりそのまま溶けろと叫んでいるのだから。
「おいナマエ。危ねぇからここで寝るなよ」
本格的に意識を手放しそうになった、その時。慌てたようにかけられた声と掴まれた腕に、ナマエの身体と意識は再び現実へと引き戻される。
「……寝てない」
「嘘つけ。身体落ちてたぞ」
呆れた様子でこちらを見下ろすホンゴウは、「まったく…」と言いながらナマエの身体を持ち上げると、そのまま自身の胸元へその身を抱えるように、バスタブへと入り込んだ。
途端に狭くなったことに、ナマエは分かりやすく眉間にしわを寄せる。
「狭い…」
「そう言うなって」
文句にも反応することはなく。それどころかまるで暴れる仔猫を可愛がるかのようにナマエのつむじに唇を落としている。数時間に及ぶセックスの後ということもあり、すっかり甘やかしモードに入っているらしい。
こうなったホンゴウはナマエの言動すべてを「可愛いこと言うなぁ、お前」で受け止めてしまうため、抵抗にはなんの意味も無いとこれまでの経験から分かっているだけに、ナマエは言葉の一切を飲み込む他なく。代わりに口から出たのは呆れたようなため息だけだった。
仲間になった際、大勢の男たちと寝床を共にするのはさすがにという、至極もっともな理由と共にナマエに与えられた部屋には、小さなバスルームが備え付けられていた。元々倉庫であった部屋を改造して作られているため、当たり前だが水回りなど一切無かったそこにどうやってシャワーや洗面所などを造設したのか。そういった方面の知識が一切ないナマエには分からなかったが、部屋作りを命じたシャンクスいわく、「船大工チームが頑張ってくれた」のだそう。頭が下がる思いだ。
とはいえそのバスルームも、当初は立ってシャワーを浴びる程度の設備しか付けられていなかった。それが何故今こうしてバスタブまで完備されている、船の中とは思えない立派なバスルームとなったのか。それはある島でナマエがたまたま見つけた、今まさしく二人が場所狭しと身を縮こまらせ入っている、そのバスタブにあった。
部屋を与えられてからというもの、大きな島に着ける度新しい家具を探し歩くのが、ナマエにとってのルーティンのようなものになっていた。これ買ってもいいのかな、と戸惑いながらも徐々に自身の部屋を整えていくナマエの姿を、船員たちも微笑ましく見ていて。時折共に降りては、荷物持ちも兼ねて買い物をすることもあるほどだった。
そんな中で見つけたものが、このバスタブだった。カブリオルレッグと呼ばれるいわゆる猫足を備えたそのバスタブは、海賊相手の娼館を数多く有していたナマエの生まれ故郷で、その可愛らしい見た目もあって多くの店で使用されているものでもあった。
その懐かしさも相まって、ナマエはそれをぜひ自分の部屋に置きたいと思い。無理だろうなとは思いつつ、「やりたいことがあったら何でも言えよ」という船大工チームの言葉に甘え、駄目元でお願いをしてみたのだ。
初めて自ら要望、しかもそれなりに大きなことを口にしたナマエに、彼らは怒るどころか「ようやく甘えてくれた」と歓喜し。すぐさま店に向かうと、「入らないんじゃないの」と心配するナマエに「シャワールーム拡張するから大丈夫」と、とんでもない発言と共に件のバスタブを購入。その後本当に壁をぶち抜くと、あっという間にバスタブを設置してしまい。立ってシャワーを浴びるのみだったそこは、ゴールドの水栓に、ゴールドの猫足。白いバスタブと、淡いアンティークグリーンのモザイクタイルという、なんとも立派なバスルームへと姿を変えてしまったのだ。
そのあっという間の出来事に、ナマエは「この人たちずいぶん私に甘いんだな」と本当の意味で自覚できたという。
とはいえ猫足バスタブというのは、本来であれば浴室の中央や窓際といった広々と空間を使える場所に置かれていることが多いのだが、ナマエの部屋ではそうもいかず。バスタブは三面を壁に囲まれた場所へすっぽりとその身を収めるように置かれ、空間の半分を潰してしまっている。唯一シャワーを浴びる場所も一人分の空間が空くのみといった状態だ。
確かに狭さを感じはするが、ただこの置き方と場所にはそれなりに良い面もある。船に乗る以上避けられない"揺れ"に対し、わざわざ溶接せずとも動いてしまうことがないのだ。
くわえて、これは使っていくうちに気が付いたことだが、壁を背にしながら縁に腰掛けることもできるし、頭をもたげて寄りかかることだってできる。狭いというのもこういう面では利点になるのだと思ったのを、ナマエはぼんやりと覚えている。
だがそこにもう一人、しかも体躯のいい男が入り込むとなっては、そうも言っていられない。
「ちょ…ホンゴウ、苦しい……」
「狭いんだしくっついてなきゃ駄目だろ」
「だったら別々に入ればいいじゃん…」
「それは嫌だ」
「………」
ナマエとて決して背は低くはなくのだが、それでも少々膝を折れば充分入れていたバスタブは、どれだけ言おうと入り込んでくるホンゴウによってすっかり膝を抱え込まなければいけなくなってしまった。この状態では休まるどころの話ではないし、なによりこうしてホンゴウと入浴するときは、たいていが散々身体を酷使した後なのだ。休ませる気があるのかないのか。
ナマエは腹いせとばかりにホンゴウの胸板へ頭を押し付けるも、もちろんそんなものに意味はなく。それどころか、ようやく甘えてくれたとばかりにホンゴウはナマエの頭に頬を擦り寄せ。腹に回した腕に、ぎゅうっと力を込めている。ますます身動きが取れなくなってしまった。墓穴を掘ったなと思うと同時に諦念が浮かぶ。
背中を預ける胸板は程よい柔らかさでクッションとなり、腹に回された逞しい腕はしっかりとナマエの身体を支えている。これなら寝落ちても湯に沈むことはないだろう。
なんとも硬い椅子だこと、と思いつつ。いっそこの状況に身を委ねてしまった方が良いのではないだろうかという考えがナマエの頭を過る。するとまるでそれに呼応するかのように、なんとか保たれていた意識に再び霞がかかり始めた。狭さより、ホンゴウの口うるささより、ナマエの中では眠気が勝っているようだった。
「あ、おい寝るなって」
「ん……」
また船を漕ぎ始めたナマエにホンゴウが声をかけるも、今度は会話にならず。ついに長い睫毛が伏せられ、薄く開いた唇はもごもごと「ねむい…」と舌ったらずな言葉を出すだけだった。
ホンゴウは呆れたように「仕方ねぇな」とため息をつくと、何を思ったのか腹に回していた手をするりと動かし。ぴったり閉じられている脚の付け根、三角の隙間へと滑り込ませた。
「ん…、?ちょっと…、ぁっ」
突然あわいに触れた指先には、さすがのナマエも目を開き。背後のホンゴウを驚いたように見上げる。
「なにしてんの…」
「寝かせないようにする」
それがどうして秘部に触れることにつながるのか。未だわずかに靄のかかるナマエの脳内では、その理由には思い至れなかった。おそらく冷静になったところで、このあまりに突拍子もない言動は一切理解できないのだろうけれど。
困惑するナマエをよそにホンゴウはさらに手を進め。閉じられたそこをやや無理やり割り開くと、中指と人差し指をにゅぐりと押し込んだ。
「や、あ…ッ」
たった数十分前までそこはホンゴウの熱を受け入れていたのだ。中に出されたものはすっかり掻き出されたとはいえ、それでもまだ柔らかさを維持したままで。思わず拒絶の言葉を吐いたナマエの意志とは裏腹に、指先を簡単に飲み込んでいってしまう。
「ほんごっ、止めて、ぇ、あ…、」
寝かせない、の意がようやく分かり。ナマエは慌ててホンゴウの腕を掴むも、既に指は根元までその身を埋め。壁をかき分けるよう蠢き始める。
「や、お湯入ってる…っ!」
「そうだな」
「あ、あぁあ…ッ♡」
折り曲げられる度開いた空間にすかさず少量の湯が入り込み、溢れ始めた蜜と絡まり合う。奥から浅いところ、勝手知ったるとばかりに掻き回す指は的確に気持ちいいところを刺激していく。
「あ、やぁ、っ!ほんごっ、ぅあ、あッ!♡」
薬品を使うことが多く、保湿も間に合わないとホンゴウの指先は少し荒れていることが多い。湯に浸かり内も外も温かく解れた身体には、わずかにかさついたその指先との摩擦がより顕著に感じられ。ざらつき、中でぷくりと主張し始めた場所をこね回される度、ナマエは激しく湯を波立たせる。
「は、あっ♡そこだめっ、い、いっちゃ、ぅ、からぁ…ッ♡」
「ん。一度イっとこうな」
「ん、い゙っ──!?♡あ、ああ、ぁ…ッ!♡」
限界を訴えるナマエの言葉にホンゴウは指の動きを速める。壁全体をまんべんなく刺激するように擦り上げながら、掌を下腹部に押し付け。より深く入り込んだ指先で子宮口をかりっ、と軽く引っかいた。
耳元で囁かれる甘やかな声と共に身体に響いた快感に、ナマエは目を見開き。背を仰け反らせ後頭部をホンゴウの肩に擦り付けながら、大きく身体を跳ねさせた。重たい蜜が溢れたのか、湯の中からは、ごぷっと鈍い音が聞こえる。
ホンゴウは荒く呼吸をするナマエのこめかみに「お疲れ」と口付け。蠢く中からずるりと指を引き抜くと、その身体を両腕で抱え直し立ち上がった。ざばっと勢いよく波立つ湯がバスタブからこぼれていく。
「ナマエ、ここ座れるか」
「ん、ぇ…?」
てっきりそのまま風呂を出るのかと思いきや、ホンゴウはナマエをバスタブの縁に座らせた。少しずり落ちそうになるもホンゴウの手がそれを支え。そして壁を背にできることもあり、ナマエは浅くではあるが腰掛けることができた。
なに、と思う間もなく。ホンゴウはナマエの頬に手を添えると、身を屈め唇を重ねる。すぐに差し込まれた舌にまだ行為は続くのだと悟ったナマエは、せめて滑り落ちないようにとホンゴウの首に腕を回し、口付けを受け入れる。
「ん…、」
「ふ、んぁ…んむ、っ♡」
ちゅくっ、ぴちゃっと音を立て舌を絡めながら、ホンゴウはナマエの首筋、肩口へと手を滑り下ろしていき。ふるりと揺れる胸へ触れた。けれどその手は柔らかなそこを揉むのではなく。ゆるく勃ち上がり始めた突起を指の背ですりすりと優しく撫で、時折気まぐれに柔く摘まむだけで。一度達した身体にはもどかし過ぎるその刺激に、溢れた蜜がとろりと内ももを伝い落ちていく。
「ふ、ぁっ…ほんご、っ♡」
ねだるように名を呼び、刈り上げられた襟足を撫でる。ナマエの甘ったるい声と視線にホンゴウは嬉しそうに瞳を細めると、細い身体のラインを確かめるように手を下ろしていき。くびれの曲線をなぞった後、閉じられた内ももへと添えた。
散々弄んだ秘部の近く。柔らくしっとりした場所を親指で軽く圧迫しながら、ホンゴウはそのまま太ももを掴み持ち上げ。ナマエが腰掛けるバスタブの縁へと乗せてしまう。
「んぁ…、っ」
再び落ちそうになる身体はやはりホンゴウに支えられ。片脚を上げたおかげで口を開くこととなった秘部が、目の前で勃ち上がるホンゴウのものを飲み込みたいというようにひくついている。
けれどホンゴウはその期待に応えることは無く。物欲しげに開かれたナマエの唇をひと舐めし離れると、身を屈め、再び湯の中へと浸かった。
「や、これやだ…っ」
そうすれば必然的に、ホンゴウの目の前にはナマエの秘部がさらけ出され。上げているのは片脚だけとはいえ、それでもこの近さ。物欲しげにひくつくそこを見るには充分だった。
まるで自分から見せつけているかのようなその体勢に、ナマエの内ももがぎくっと震える。身体は何度も重ねているが、こんな明るさの元で、しかもそんな近くで見られるとなると、さすがに羞恥心も生まれる。ナマエは咄嗟に脚を下ろそうとしたが、内ももにはホンゴウの手が添えられたままで。当たり前のように簡単に止められてしまった。
「…そういやさ、ずっと気になってたんだけどよ」
それでも軽い抵抗を止めないでいると、鼠径部を親指でなぞっていたホンゴウが、ふいに口を開いた。
「なに…」
脚を広げ、そこに顔を近付けられ。卑猥だが同時に間抜けな絵面に何とも言えない気持ちになりながらも、ナマエは聞き返す。
「お前、これの処理ってどうしてんだ?」
言いながら、ホンゴウはあわいの縁。わずかに生えている毛を、ちょいっと指先で摘まみ上げた。
「……は、」
突然投げかけられた予想外の問いに、ナマエは間抜けな声を上げてしまう。す、と脳内が冷静になってい感覚を覚える。
「剃ってんなら、生えてくるとき短い毛がちくちくしてくるだろ?だけどナマエのはつるつるしたままだし」
つらつらと純粋な疑問を口にする姿は、まるで親に質問をする子供のようである。けれど目の前の男は立派な成人で、なおかつたった今まで、ナマエの秘められた場所を卑猥に弄っていたのだ。この状況でなぜその疑問を、そんな純粋な様子で口にできるのか。
驚いて言葉の出ないナマエであったが、ホンゴウはそれ以上続けず。代わり答えを促すようにじっとナマエを見上げている。
ああこれはもしかしなくても、言わないとずっとこのままのやつだろうか。察してしまったナマエは、「それ今聞くこと?」と若干頬を引きつらせながらも、呼吸を整え言葉を紡ぐ。
「脱毛して…ほとんど生えてこない、から…、今は少し剃るくらいしか、してない……」
娼館が多かった、というのも理由の一つなのだろう。ナマエの生まれ故郷では、"下の毛は処理するもの"というのが、女たちの間では当たり前のことで。その点についてナマエも疑問に感じることは無く、まあ確かに楽だからなと、生え始めの頃から脱毛処置を受けていたのだ。生えてきたとしても申し訳程度に薄っすらといったぐらいで。おかげでこうして海に出た今でも、大したことはせずともつるりとした状態を保てている。
「脱毛?いつしたんだ?」
「船に乗る前…」
「へぇ、じゃあ結構前なのか。それなのに全然生えてないし…脱毛ってすごいな」
何故こんな毛の事情、しかも下の方を話さなければいけないのかと思いつつ。疑問は解消されたようで、ホンゴウは何故か感心した様子で小さく頷いている。
男はあまり下の毛を脱毛しないというのもあるのだろうが、ホンゴウの口振りからするに医者的な目線の方が大きいのだろう。現に「清潔になるし良いな」と言っているし。
いくつになっても医者として知識に貪欲なところはナマエがホンゴウを好きになった理由の一つではあるが、けれどやっぱり、「それ今じゃなくてもよくない?」とは思うわけで。
なにより今のホンゴウは医者モードとはいえ、自身の下腹部、ましてや秘部に顔を近付けてるのをこうも明るい場所で見るというのは、さすがに居た堪れない。ナマエはじわじわくすぶる羞恥心とホンゴウの視線から逃げるように、目元を腕で覆い隠した。
視界を遮って落ち着きたい気持ちもどこかにあったのだろう。ナマエは深く吸い込んだ空気を、鼻から細く長く吐き出しながら、わずかに唇を噛み締めた。腹筋に力を込める度わずかに収縮する秘部にホンゴウはきっと気付いている。中途半端な熱は放置されたところで消えてくれはしなかった。
ついに耐え切れなくなり。ホンゴウの名を呼ぶためナマエがわずかに口を開いた、その瞬間。見られるだけだったそこを、熱くぬめる感覚が襲った。
「ん゙あ、ぁ…っ♡!?」
ふいに与えられた刺激に、無防備な口から大きな声が飛び出す。バスルームに響く声に慌てて口元を抑えたナマエは、涙の浮かぶ瞳でホンゴウを睨みつけた。
「なっ、にすんのよ…!」
行儀が悪いとは思いつつも、ナマエは下したままの脚でホンゴウの肩を強めに小突く。離れろ、と怒りを込めたものでもあったのだが、そこはやはり体躯の違いもあり。少し強く膝で押されたにもかかわらずホンゴウは一切動じず。それどころか、相変わらず顔を近付けたまま。鼻先が触れそうな距離で秘部を見つめている。
ナマエはなんだか実験動物にでもされたかのような気分だった。今の抵抗もホンゴウにとっては、これから解剖する動物が少し暴れた程度なのかもしれない。そう考えると、これから何をされるのかも分からず。ひやりとした妙な感覚がナマエの背中を震えさせた。
「っ…、」
「おっ、と…危ねえ」
思わず身じろいだせいか、縁に乗せたままの脚が滑り身体が落ちかける。けれどホンゴウの手がそれを支え。ついには両脚ともバスタブの縁へと乗せられてしまった。
片脚だけのときより大きく広げさせられた秘部がホンゴウの目の前にさらされる。散々弄ばれた秘部は見られているという事実だけでも堪らないようで。呼吸の度奥から蜜を溢れさせ、内ももを濡らしている。
片手で細い腰を支えていたホンゴウは、空いた手の親指を秘部の縁に掛けると、さらに横に割り開いた。
「やっ、開かないで…ッ!」
「…こうするとさ、中がよく見えるだろ」
くぽっ、と音を立てて空気を飲み込んだ秘部は内壁を震わせ、アーモンドピンクの粘膜が捲れ上がっている。
「普段は暗いし、こういう場所じゃねぇと見えないから…ちゃんと見ておきたくて」
ナマエの言葉を無視し淡々と話すホンゴウの声は、一見普段と変わりないように思えた。けれど紡がれる度内ももに触れる吐息は酷く熱く。秘部を割り開く指先は待ちきれないとばかりにわずかに震えてさえいた。
劣情に揺れる瞳がゆるりと細められ、低く唸るような呼吸と共に顔が近付く。ほんの一瞬にも満たないであろうその時間は、熱に浮かされたナマエの脳内ではいやにゆっくりと感じられた。
「あっ、あ゙ぁあ…ッ!♡」
「ん…」
ホンゴウは秘部全体を覆うように顔を押し付けると、躊躇することなく舌先を滑り込ませる。うねる中を押し開き奥へと進みながら、尖らせた舌先で内壁を抉り。時折腹側のざらついた場所をくすぐる。
「あ、っう、んうぅ、ゔ、あ、〜〜ッ!♡」
風呂の中ということもあり、適当に結ばれただけのホンゴウの髪が内ももに張り付き、刈り上げ部分は動く度擦れてくすぐったさを生んでいて。普段は触り心地の良いそれらが、今ばかりは敏感になった身体を刺激し、一層ナマエを追い詰めるものとなっていく。
「あ、ああぁ…ッ♡ほんごっ、ほんごぉ…、」
突起を、中を、奥を。ざらざらとした舌で擦られ抉られ。喉奥からもはやうめきのような嬌声を漏らしながら、ナマエは軽い絶頂を繰り返す。
気持ちいい。ふわふわとした快楽が身体中を巡り、くすぐったいような、もどかしいような。涙と唾液と汗と、もはやなにかも分からないもので顔をぐちゃぐちゃにしながら、ナマエはひたすらホンゴウの名を呼んだ。
ずり落ちないようにとバスタブの縁についた手に力を込めるけれど、やはり時折つるりと滑り。腰がわずかに落ちる度、まるでもっとしてくれとでも言うように秘部を押し付けてしまう。
崩れた身体を支えることなど容易いらしく。ホンゴウはナマエの腰を、支えるのではなくもはや両手で掴み持つと、散々中をかき回していた舌を引き抜き、今度はすっかり勃ち上がった突起に、ぢうっと吸い付いた。
「い゙っ!あ──ッ、!?♡♡」
弄るのが好きなホンゴウによって、触れればすぐに剥けるようになってしまった突起は身体の中でもいっとう敏感で。強く吸い付かれた瞬間、ナマエは全身の毛穴が開くような心地と共に絶頂を迎えた
背を仰け反らせたナマエの身体を壁に押し付けながら、上体を少し起こし、ホンゴウは絶頂の余韻に開閉する秘部へ再び舌を差し入れる。今度は溢れた蜜を吸い上げ、より柔くなった奥をくすぐる。
「やらっ、も、いった、いったから、ぁ…ッ!♡」
「ん、もう少し」
「っい゙、またいっちゃ、ぁ、あ゙あぁ、♡」
洗ったとはいえ、つい数十分前まで自分のものが入ってた場所をよくもまあそんなに舐められるなと妙な関心さえしてしまう。
けれどそんなことを考えられたのは一瞬で。狭いバスルームには秘部をじゅるじゅると吸い上げる音と、喉を上下させる音。そして自身のみっともない喘ぎ声がひたすらに響いていて。視覚からだけでなく、聴覚からも犯されているような感覚にナマエを陥らせていく。
見る、という目的はとうの昔に達成されているはずなのに。もはやホンゴウの頭からはそんなことは抜け落ちているのだろう。蜜を溢れさせ男を欲する蜜壺をただひたすらに貪り、熱い吐息をこぼしている。
「……俺さあ、」
口の周りどころか顎下まで汚した蜜を舌先で拭いながら、ホンゴウはぽつりと呟く。
「お前の身体から出るもの、全部調べたいんだよな」
まるで「今日食べたいものあるんだよな」くらいの軽さ。けれどその奥には、そうするんだという意思の強さを感じる声音だった。
なにを言っているんだこいつは、と思うと同時に、ナマエの背筋に冷たいものが流れる。ホンゴウは今、"お前の身体から出るもの"と言った。しかも"全部"とも。今まさしく、ある意味"身体から出るもの"を飲みながら。
蜜を飲まれるだけでも死にたいほどの羞恥だというのに。それ以外に何が、どんなものが含まれているのか。医者という彼の立場も相まって想像するのも恐ろしい。それにそもそも、調べるとはいったいなんのために。
顔を引き攣らせるナマエに気付いているのか、そもそも気にしていないのか。ホンゴウは淡々と続ける。
「でもそんなことしたらお前怒るだろ?」
当たり前でしょ、という言葉は、熱さと快楽で喉が震えまともに紡ぐことができず。「あ、あらりまえ、れしょ…」と舌ったらずに返すことしかできなかった。
大した否定の言葉も吐けないほどナマエを、ホンゴウは試すようにじっと見つめた後。「だったら、」と口角を上げる。
「これくらいは許してくれよな」
「うあッ!♡、あ…っ!?♡♡」
言いながら、ホンゴウはナマエが言葉を発する前に再びそこをべろりと舐め上げた。
これくらいは、なんて。いったいどんな理屈でそうなるのだろうか。そう文句を言おうにも再び差し込まれた舌が暴れ回り、言葉を紡ぐことは叶わなかった。
「んあ、ぁ…ッ!♡はあ、あ゙っ♡んっ!」
もはや声を抑えようという考えはなくなっていた。突っぱねるようにホンゴウの髪を掴み、力の入らぬ手で必死に退かそうと押す。ぎゅうっ、と乱すように掴んだせいか、ホンゴウの髪を結んでいたゴムが解け、髪がぱさりと落ちた。
「こら、解くなよ」
舌を抜き少しだけ口を離したホンゴウは、ちらりとナマエを見上げる。
「だ、ったら、今すぐ止めて…、」
「はは、それは無理だな」
「やっ、あ、あ゙、〜〜っ♡」
息も絶え絶えに訴えるナマエをホンゴウは笑いながら一蹴にし、今度は先ほどよりも強く顔を押し付け舌を奥まで差し込む。
蜜をこそぐように動かし、溢れたものをずるるっ、と音を立てて吸い上げ。剥けて大きくなった突起を前歯で柔く噛み、こしょこしょとくすぐるように歯で扱く。ひ、と喉を引きつらせながらナマエが髪を振り乱す度、中は搾り取るように舌を締め付けている。痙攣するその様子に、ホンゴウの望む限界が近いのだと察した。
腰を支えるように掴んでいた手を動かし、痙攣する腹、臍の少し下辺りに親指をそっと添える。薄い腹の下できゅうきゅうと蠢く膣壁をわずかに感じながら、ホンゴウは指先に力を込め、軽くそこを押した。
「っ、ぃ、あ゙!?、♡──ッ!」
その瞬間、ナマエの身体は電気が走ったかのように震え。大きく腰を跳ね上げながら絶頂を迎えた。同時に一気にせり上がってくる疼きに堪える間もなく。秘部からは、びしゃっ、と勢いよく潮が噴き出してしまう。
「ん…、」
「あ゙、うそ、やだやだッ、〜〜っ!」
必然的に、顔を埋めていたホンゴウの顔にもそれは掛かり。溢れる蜜と共に流れていく潮を、信じられないことにホンゴウは躊躇することなく喉を上下させ飲み込んでいく。
最後の一滴が出終えすべてを飲み干したホンゴウは、ぷはっ、とまるで酒を飲んだときのような、満足げな様子でそこから顔を上げた。
「し、んじらんない…っ」
ぺろりと口の周りを舐めるホンゴウと目を合わせた瞬間、ナマエはついに羞恥心の限界に達したらしく。大きな瞳からぼろぼろと大粒の涙をこぼし出した。
舐めるのは、この際百歩譲ってまだいい。ホンゴウは元々舐めるのが好きなようで、普段の行為でも全身くまなく舐められたことは何度もあった。だから慣れている、というと少々語弊はあるものの、こうした明るい場所でもギリギリ許容できる範囲ではあった。
けれどこれは違う。よりにもよって眼前で潮を噴かせたあげく、それを飲み干すなど。もはや拷問といってもいいのではないだろうか。羞恥という名の拷問だ。
「潮は薄い尿みたいなもんだから、身体に害はねえよ。あ、もちろん飲み過ぎは駄目だけどな」
「そういうことじゃないっ…!」
周囲よりいくらか気が利くとはいえ、この男も結局若い頃から男所帯で過ごしているだけに、デリカシーというものが著しく欠如している部分がある。この的外れな言動がいい例だ。どこの世界に自分の分泌液を飲まれて、あげくそれの成分云々をフォローのように説明されて喜ぶ女がいるというのか。おそらく今ナマエがホンゴウを殴ったとしても、百人が百人許してくれるだろう。本気で思う。そんな気力も体力もないのが悔しいが。
もはや言い返すこともできず。べそべそと効果音がつきそうな様子で泣くナマエに、さすがのホンゴウも悪いと思ったのだろう。お湯か涙か、もはや分からないものでびしょ濡れの頬に手を添えると、親指で眦を拭ってやる。
「悪かったよ、調子に乗り過ぎた。許してくれ」
そうして素直に謝罪ができるくせに、何故ああいった暴挙に出られるのか。そもそも謝るくらいなら最初からするなと思うわけだが、舐めるのも謝罪も、ホンゴウにとってはどちらも本気でやっていることなのだ。ホンゴウの本質というか、そもそもそういう考えがナマエの理解の範疇とは少し外れたところにあるのだということは、こうして身体を重ねるようになって分かったことだった。
「なぁ、ナマエ。許してくれよ」
額をくっつけ鼻先を擦り合わせながら、上目遣いでナマエの顔を覗き込み。甘えるように、すり…と擦り寄る。低く、腹の底に響くような声がナマエの鼓膜を揺らした。
ナマエの好きな甘い声で、少し申し訳なさそうな顔をしながら許しを請うなんて。これが計算でないところがホンゴウの恐ろしいところなのだ。ああいうとんでもない事はわざとやるくせに、こんな仕草は無意識でやってしまう。しかもナマエがそれに弱いとも知らずに。そして結局毎回流されてしまうのナマエもナマエなのだ。
普段とは違い解かれてしまった髪も相まって、まるで捨てられ雨に濡れる子犬のようにも見えるホンゴウの姿に、ナマエは一瞬息を詰まらせ。そうしてすぐに深く長く吐き出すと、返事をする代わりに「ん…」とホンゴウの首に腕を回した。
文句を言うのはもう後でいい。とにかく今は、手前ばかりに触れられもどかしさだけが溜まり疼く腹の奥を突き上げ、熱いものを注ぎ込んで欲しかった。
怒りのオーラをわずかに含みながらも甘えるように擦り寄って来たナマエに、ホンゴウはどこかほっとしたように息をひとつ吐き。こめかみに唇を落とすと、狭いバスタブに再び身を沈めた。
頬を掴み、まるで仲直りだとでも言わんばかりに顔中に口付けながら、ホンゴウは膝に乗せたナマエを抱え直し。湯の中で先端をあてがい、ぬかるむ中へわずかな湯と共に挿入していった。
「ん、あ、あぁあ、あ…ッ♡」
ぐぷぷっと音を立てながら飲み込んでいった中は、ようやく与えられた熱量に歓喜し、待っていたとばかりに屹立を締め付けてしまう。
湯の中にいるという状況も相まっているのだろう。普段よりも熱く蕩け搾り取るような内壁に、ホンゴウからは艶を含んだ吐息が漏れ、ナマエの耳をくすぐる。
「あ、あ…っ♡ぅぁ、あ、あ゙ああ、…ッ♡」
太く出っ張った雁首が中を広げ進み、その先端で子宮口を、こつんっと叩いた瞬間。堪らずナマエは脚をホンゴウの身体に巻き付けた。
軽く突かれただけで、待ち焦がれた快感に腹の奥はどうしようもないほど震え喜んでいる。同時に身体を、脳内を支配される小さな恐怖が浮かんでいた。
「ほら、ちゃんと息しろ」
「っう、あ…は、ぁあ゙……ッ♡」
狭い中を掻き回しながら引き抜いたと思えば、血管の浮き出る様子も脈打つ様も、すべて感じろとばかりに擦り付けながら押し進め。そうして最奥に辿り着けば、未だわずかに閉じる口を開けてくれとこつこつと突き、くすぐる。
狭いバスタブ内に大人二人が動き回れるほどの余裕などあるはずもなく。ホンゴウはナマエを抱えながら小さく動くことしかできなかったが、それでも数度の絶頂で充分過ぎるほど解れた中には、ゆっくりと奥を押されるその動きでも恐ろしいほど気持ちが良いようで。ナマエは下腹部にじわじわ溜まっていく熱に、目の前が歪んでいくような感覚に襲われた。小さな火花が頭の奥でちかちかと散っている。
「は、あ゙、っ♡ぅ、んううぅ…、っ♡」
痙攣してほとんど意味はなかったけれど、ナマエは縋るように巻き付けた四肢に力を込めた。互いの間で柔く胸が潰れ、勃ち上がる突起がくにゅくにゅと圧迫される。繋がる下半身はより密着することとなり、弄られすっかり顔を出していた突起が、動く度ホンゴウの下生えと擦れていく。
「う、んあ、♡はぁ、あ、ほんご、ぉ…ッ!♡」
「ん…いいこ。きもちいな」
「あ…、う、ん…きもち、い…♡きもちぃ、んぅ…ッ♡♡」
物欲しそうにだらしなく伸びた舌をパクリと咥えられ、そのままちゅるっ、と吸われる。あれ、そういえばさっき潮飲んでなかったっけ、とぼんやり思ったけれど、すぐそんな考えはどこかへ消え失せた。
舌は粘ついた唾液を交換するように絡まり合い、飲み干せなかったものは互いの顎から首を伝い流れ。秘部の奥から溢れた重たく濃厚な蜜と、屹立の先端から吐き出される精液で濁った湯の中へ、ゆるりと溶け落ちていく。
「いぐ、のっ♡とまらなっ、ぃ…あ゙、あ、ああ…ッ♡」
「はは…ずっとイッてるなぁ♡」
どこもかしこも性感帯になったのではと思えるほど気持ちがよかった。頭の奥で弾けるだけだった小さな火花は、今では身体のあちこちでくすぶり。弾けるその時を今か今かと待っていた。
「も、ほんごぉ♡おく、おぐッ♡、まら、い゙、いぅ、っ♡」
「は、あ…っ、俺も、ん…ッ」
「ひ、い゙ッ!♡あ、あ゙あぁ…♡あ、あ、〜〜っ!♡♡」
限界を訴えるナマエの眦に吸い付き、こぼれる涙を舌で拭い。ホンゴウはナマエの身体を軽く持ち上げると、ゆるく子宮口を擦るだけだった先端を、開き始めたそこへ、ぐぷっと穿つようにはめ込んだ。
その瞬間ナマエの視界に、ばちっとひときわ強い光が弾けた。直後全身を襲った快楽に喉からは悲鳴のような嬌声が出ていく。
「っ、んあ、ぁ、あ゙…、〜〜ッ♡♡」
「ぁ、は…ッ」
じゅわ、と下半身が一層熱くなる。湯でないものが纏わり付く感覚に、ふたたび噴き出された潮が湯と溶け合ったのだと分かった。同時に腹の中を満たしていく慣れた温度に、ホンゴウも達したことを悟る。
「ナマエ、意識あるか?」
「ん、ぁ…?」
「のぼせる前に出るぞ」
しっかり最後までしておいてよくそんなことを、と思いつつ。ずるりと引き抜かれ内ももを精液が伝う感覚に中を震わせながら、軽々抱き上げるホンゴウにしがみ付き身を委ねる。
ホンゴウは片腕でナマエを抱えたまま風呂の栓を抜き、シャワーで身体を洗い流すと、適当にタオルを取り部屋へと向かう。ベッドに着き脱力するナマエの首筋に手を当て脈を図りながら、湯冷めしないようにと大きなタオルで全身を包んでやる。
「ん、水飲んどけ」
棚から取り出したグラスにボトルから水を注ぎナマエに手渡す。ゆっくりと喉を上下させる様子に、「よし」とひとつ頷いたホンゴウは、それまでの丁寧さとは裏腹に自身の髪や身体を乱暴に拭くと、タオルを適当に腰に巻き、すぐに勝手知ったるといった感じで部屋を歩き回り。引き出しからパジャマやケア用品を取り出し並べ始めている。
冷たい水が全身に巡る感覚にようやく少し冷静さを取り戻したナマエは、その姿をぼんやりと見つめる。
「ほんごう…風邪ひくよ……」
「俺よかお前が先だ」
いや船医の方が優先でしょ、というナマエの言葉は、化粧水を携えたホンゴウの両手に頬を包まれたことによって遮られた。むにぃ、と頬が柔く歪む。
「んむ…あにしゅんの…」
「はは」
舌ったらずに文句を言うナマエにホンゴウは嬉しそうに笑うと、押され尖る唇に小さくキスをする。何が彼の心を満たしたのかは知らないが、大層ご機嫌なその様子に、このまま身を委ねるのも悪くはないとナマエは思った。
柔らかさを堪能するような手つきでナマエの顔に化粧水を染み込ませると、次いで美容液、乳液、保湿クリームと塗っていく。しかもそれぞれ少し間を開けることも忘れずに。
そうして顔のケアがようやく終わったと思ったら、その後は身体。巻き付けたタオルを取って、今度は身体用の化粧水を叩き、クリームを塗って。すべて淀みなく、なんとも慣れた手付きである。時折ナマエも忘れそうになる面倒な手順を、当人でもないのにしっかり覚えているとは。鮮やかな手付きはもはや介護のようで。タオルを剥かれ明かりの下で裸にされていることなど、ナマエの頭からはすっかり抜け落ちていた。
ここまですべてやってくれるとは、やはりホンゴウは根っからの世話好きなのだろう。
「ん、じゃあ髪乾かすぞ」
ホンゴウはベッドに乗り上げ、腰掛けていたナマエの背後に回りドライヤーのスイッチを入れる。事前に髪に着けるオイルも忘れていない辺り完璧だった。
耳元でごうごうと響く音に、疲れでぽかぽかの身体。優しい手付きで触れられたことも、まだほんの少し奥に残る熱もあって、ナマエの身体には眠気がぶり返してくる。
「寝てもいいぞ。あとはやっとくから」
「ふふ…今度は寝ていいんだ…?」
「風呂じゃねえからな」
絡まないように髪を梳く優しい手付きに、少し遠くに聞こえる低く少し色気のある声が、余計に眠気を誘う。身を委ねてもいいかと一瞬思ったが、このまま寝るのはなんだか勿体ない気がした。
わざと大きく目を見開きながら、けれどどこか間延びした声で「寝ないよお…」と返事をするナマエに、ホンゴウは「そうか。頑張れ」と小さく笑っている。
「ん、終わり。お疲れさん」
「ありがと…」
ドライヤーのスイッチを切り手櫛で髪をまとめながら、ホンゴウは仕上げとばかりにナマエのうなじに、ちゅっと吸い付くように唇を落とす。
「ほら、湯冷めする前に服着ろ」
「ん…」
「…着せてやろうか?」
「それはいい…」
「残念」
「ふ…ばか」
眦をへにゃりと下げるナマエに、ホンゴウも楽しそうに瞳を細めながらてきぱきと服を着ていく。普段上半身は裸に羽織ものだけだというのに、寝るときだけはきっちり上下揃いの寝間着を身に着けるのだから、何とも面白いこだわりだ。
「…ホンゴウ、髪乾かしてあげる」
再びドライヤーを手に取り、今度は自身の髪を乾かそうとしたホンゴウにそう声をかけ。膝立ちになりながら、ナマエは自身の隣を招くように叩いた。
ホンゴウは一瞬きょとん、とした後。すぐにどこかうきうきした様子で「じゃあ頼む」と向き合うようにそこへ座る。
「なんでこっち向き?」
「顔見たい」
「なぁにそれ…甘えてるの?」
「うん」
ホンゴウは甘やかし上手であり、甘え上手でもある。普段つるむことの多い大幹部の中では年下の部類に入るからだろうか。船医という世話焼きな立場でも、どこか子供のような一面も持ち合わせているのだ。
素直な返答に、聞いておきながら心臓を鷲掴みにされるような感覚を覚えながら、ナマエは誤魔化すようにホンゴウの髪を乱していく。「痛ぇよ」と笑うホンゴウにはそれも気付かれているのだろうけれど。
意外と長さのある髪を、刈り上げの触感を楽しみながら乾かしていく。最後に手櫛で整え「終わったよ」とスイッチを切りながら、ナマエはホンゴウの額の傷痕に、小さく唇を落とした。すぐにホンゴウが驚いたように顔を上げる。
「え、今キスした?」
「え、うん」
「……」
「…え、なに、なんでじっと見てるの…怖い怖い」
「…なんだよ、可愛いことすんなよなぁ」
「は?え、あ、ぁっ!」
額に感じた柔らかさにホンゴウは一瞬呆気に取られたような、間抜けな顔になる。けれどすぐにぎゅうっと下唇を噛み締めると、辛抱堪らん!とばかりにナマエを抱き締めた。
ベッドの上で膝立ちしていたためバランスも取れず。胸元へ勢いよく跳びつかれたナマエの身体は、そのまま後ろに倒れ込んでしまう。
「ちょっ、なにすんの危ないでしょ!」
「だってお前が急に可愛いことするから…」
「理由になってないっ」
もう、と呆れながらドライヤーを近くの棚に追いやり、ナマエは自身の胸元へ顔をうずめるホンゴウに向き合う。じっとこちらを見上げる瞳は一見黒にも見えるが、よく見るとチャコールグレーのような濃い灰色をしている。知っているのはじっと目を見つめることがあるナマエくらいだろう。
もっとしっかり見たいと、親指で額の傷痕を柔く撫でながら、落ちた髪を耳にかけてやる。けれどすぐに、へら、と溶けた顔で笑われ。瞳は見えなくなってしまった。残念だ。
ホンゴウは褒められた犬のようにその手に擦り寄り、ちゅっ、ちゅっと可愛らしい音を立てながら、掌へ何度もキスをする。最後に手首の内側へ少し強めに吸い付き痕を残すと、満足そうにナマエの隣へと寝転んだ。
「…あ、そうだホンゴウ」
「ん?」
「お風呂出てから水飲んでないでしょ。寝る前にちゃんと水分取らなきゃ駄目だよ、船医さん」
眠気に負けそうなタイミングもあったため定かではないが、少なくとも風呂を出てからずっとナマエの世話をしていたため、ホンゴウはまだ何も飲んではいないはずだ。風呂上がりと寝る前は水分補給。これまで口酸っぱく言っていた張本人が、セックスをして水分補給をしないというのも気になるだろう。
ホンゴウは「んー…」と少し考えるように上を見た後、まるで怪我が治った患者を診た後のような、どこか晴れやかな顔で笑う。
「まあ、あとで飲むけど…多分大丈夫だろ」
「なんでよ」
「風呂の中で一応水分は取ったから」
にこにこと放たれたその言葉にナマエは一瞬、きょとん、とし。けれどすぐにその意味に気付くと、「っ馬鹿じゃないの!?」という叫びと共に、笑うその頬を、べちんっ!と大きな音を立てて叩いたのだった。
BACK |
HOME