壊さんばかりの勢いで蹴り開けられたホテルの扉を心配する間もなく、ナマエは柔らかなベッドへと押し倒された。視界には、天井を背にその長い髪を幕のように左右に下ろしたライムの姿が映っている。
 部屋に入ってたった数秒でぐるりと変わった景色に、ようやくナマエの頭がついてきたのは、外されたサングラスがベッドの端へ乱暴に投げ捨てられるのを、横目で見たからだった。お気に入りだと言っていたそのサングラスは、ベッドの上とはいえ乱暴に投げてしまえば壊れかねないというのに。

「ちょ、ら、ライム…!」 

 待って欲しいという思いを込めてライムの胸を押すも、びくともせず。それどころか押し返すように上体を屈めたライムは、ナマエの胸に顔をうずめ、シャツから覗く谷間に何度も唇を落としながら着々と服を脱がせていく。
 細い腰に巻かれたサッシュを解き、ボタンをすべて外しシャツを全開にする。そうしてそのまま背中に腕を回し下着のホックまでも外すと、ライムは下から右手をゆるりと滑り込ませ、支えを失った胸へと直に触れた。

「あ…っ、」

 そのあまりに早すぎる動きはナマエに驚く間も、抗議の声を続けさせる間も与えてはくれず。代わりに出てきたのは、わずかな艶を帯びた声だった。
 手袋をしていない、ほんの少し乾燥した手が肌を滑り、ナマエはびくりと身体を跳ねさせる。戸惑う声が響くも、それでもライムの手は止まらず。柔らかなそこをゆるゆると揉みながら、顔を寄せた首筋や肩口に噛みつき痕を残していく。

「ひ…っや、あ…ッ」

 甘い声に誘われるように、ライムの身体も熱を帯び始める。徐々に掌の下で硬くなっていく突起の根元を撫でてやると、慌てたようにナマエがライムの肩を掴んだ。

「らいむ、シャワー…っ」
「あ…?」
「シャワー浴びさせて…!」

 瞳に涙を溜め、息も絶え絶えにナマエは訴える。あまりに必死なその様子に、さすがのライムも動きを止め。眉間にしわを寄せながらも、ゆるりとナマエを見上げた。
 下半身はすっかり反応している。だというのにこのタイミング、こんな状態で止められたことに多少の不満は感じつつ。ナマエの訴えるような瞳と、「シャワー、浴びなきゃしないから」という強い言葉に、ライムは「…分かった」と、ため息交じりに呟き上体を起こした。
 ナマエもそれに続くように起き上がる。部屋は差し込む朝陽のおかげで、照明をつけずとも明るい。今さらとは思いつつ、ナマエは胸元を隠そうと脱がされたシャツを手繰り寄せた。

「おい、何してんだ」

 けれどその手は、シャツもろともあっさりライムに掴まれてしまう。

「や、なに…、」
「シャワー浴びたいんだろ。だったら服、脱いでけよ」
「……ここでぇ…?」

 ナマエは情けない声で「嘘でしょ」「それだけは勘弁して」と訴えるも、ライムは今度ばかりは一切聞く気がないようで。それどころか掴んだ腕を上げさせると、そのまま脱がせようと、再びシャツに手をかけ始めた。ナマエは慌ててその手を掴み止め、「自分で脱ぐから…っ!」と叫ぶ。
 ライムはまた止められたことに一瞬眉をぴくりとさせたが、ナマエの言葉にすぐに納得したようで。「…ん」と軽く返事をし立ち上がると、背を向け、代わりに今度は自身の服へと手を掛け始めた。
 コート、サッシュに、赤いシャツ。まるでストリップショーのように目の前で恥ずかしげもなく服を脱いでいくライムから、ナマエは慌てて顔を背ける。
 幾度身体を重ねようと、この"これからセックスをするため自分で準備します"といった雰囲気には、ナマエはどうしても慣れることができなかった。おそらくこれからも慣れることはないのだろう。
 ナマエは震える手でズボンのボタンを外し、ゆっくりと足を引き抜く。途中で靴すら脱いでなかったことに気付き、どれだけ慌てていたんだと、また頬がじわりと熱くなった。
 次いではだけたシャツと下着からも腕を抜いたが、やはり丸裸になるのは、なんだかはばかられて。意味はないと理解しつつ、せめてとばかりにシャツだけは肩に掛けたままにしておいた。
 羞恥と闘いながらも、ナマエがなんとか下半身を守る最後の下着に手を掛けたとき。「おい」と呼ばれると同時に、二本の腕が腹の前に回り。そのままナマエの身体を、軽々と持ち上げてしまった。

「え、え…っ!」
「遅ェ」

 戸惑うナマエを無視し、ライムはそのまま大股で風呂場へと向かう。ナマエは肩に掛けていたシャツがあっさり落ちていくのを止めることもできず。縋るような思いで落ちていくそれを目で追えば、ベッドの上にはライムの服が脱ぎ捨てられていた。どうやらすべて脱ぎ終えてもまだ裸でないナマエに、しびれを切らしたらしい。
 再び出そうになった制止の言葉は、既にバスルームに着いてしまったことで、喉の奥へとしまい込まざるを得なかった。
 小さな窓から差し込む朝陽で照らされたタイルの上に、ナマエの身体がゆっくり下ろされる。目の前には壁。背後にはライム。すっかり逃げられなくなってしまい、ナマエは思わず隠すように肩を抱いた。
 ライムはそんなナマエを逃がさぬよう壁に手をつき覆い被さると、さらけ出されたうなじへと顔を寄せた。戸惑う身体を押さえ付けながら、すんと鼻をひくつかせ。「…で?」と唸るように呟く。

「なんでこんなにホンゴウの匂いがすんのか…説明してもらうぞ」

 ここに運ばれている道中のごたごたで忘れてくれたと思っていたが、どうやらしっかり覚えていたらしい。逃がさないぞという強い意思の窮追に、ナマエは肩を跳ねさせる。
 なんでって──そう言いかけて、ナマエは言葉を止めた。ただ部屋から出てきただけならまだしも、ベッドで寝てました、なんて。いざ状況を思い浮かべたら中々に良くないのではないかと思ったからだ。たとえやましいことは一切ないと断言でき、なおかつ、それがもはや今さらな心配であったとしてもだ。

「お前ら元々距離は近ェけど、それでもこんな匂いつくほどじゃねェだろ」
「そう、だね…うん……」

 誤魔化したいわけではない。そもそもそんな愚行をした結果あんな大喧嘩にまで発展してしまったのだから。 
 ただ、それはそれとして。普段から嫉妬心を隠さないライムの、ある意味一番の地雷を踏み抜くであろうホンゴウがらみというその理由を、いったいどう波風立てずに伝えるべきなのか。今のナマエには良案が、何一つ思いつかなかった。
 内心冷や汗をかきながら、ナマエは必死に考える。そんな横顔をそれまで探るようにじっと見ていたライムが、はっと何かに気が付いたように目を細め。獣の唸り声の如く、「まさかお前…」と、小さく呟いた。

「な、なに…」
「ホンゴウのベッドで寝たりしてねェだろうな…」

 ナマエはその言葉に、わずかに身体を強張らせてしまった。おおよそ一般人ならば気が付かないであろうくらいのわずかな反応ではあったが、ライムにはそれだけで充分だったようで。途端にその雰囲気は黒さを帯びたものへと変わる。
 ライムは逃げるように俯いたナマエの肩を掴み、くるりと身体ごと向きを変えさせ。片手で頬をわし掴みにすると、無理やり視線を合わせた。
 軽く捻った首に、ナマエからは「ぐぇっ」と蛙が潰れたような声が漏れる。背中を打ったタイルが、いやに冷たく感じられた。

「テメェ…俺のベッドでは絶対寝ないくせに、なにホンゴウのベッドではあっさり寝てんだ…あ゙ァ?」
「え…あ、そっち……?」

 他の男のベッドで寝ていたことはもちろん気に食わないが、なにより、"自分の部屋では絶対に寝ないくせに、なにを他ではあっさり寝てるんだ"という点で、ライムは怒りをあらわにしていた。ここで、"ベッドで寝ただけだ"と考え、不貞を疑わない辺りはライムらしいともいえるが。
 怒りの点はそっちなのか…と、予想と若干ずれていた内容に逆に冷静になれたのか、ナマエは「ら、らって、」と舌ったらずになりながらも、頬を掴むライムの手を叩く。離せと訴えていると察したライムは、しぶしぶといった様子で手を離した。

「っ…だってライムの部屋、人が来ること多いでしょ。いつ誰が入ってくるか分からないから、寝てるところとか…見られたくないし……」

 大幹部の中でも先陣を切る、いわゆる特攻タイプ戦闘員であるライムには、稽古をつける関係もあり部下が多い。くわえて両隣にはスネイクとルウの部屋があり、そのどちらにも同じく船員が多く訪れるため、遭遇率が他より格段に高いのだ。
 そんな場所から出てきたとなれば、何をしていたのかとからかわれるのは目に見えている。ライムとナマエの恋人関係は周知のこととはいえ、恥ずかしさは拭えない。
 その点ナマエの部屋は、居住エリアとは食堂を挟んで反対側の、倉庫エリアのひと部屋を改造して作られているため、遭遇確率は格段に低く。人の気配を気にせず過ごすことができるのだ。
 ゆえに二人は恋人関係になった際、"もし船内でセックスするのなら、何があろうとナマエの部屋で"と、なんとなくだがルールのようなものを定めていた。
 最低なルールだという自覚はあるし、そもそも大勢がいる屋根の下でそんなことをするなという言い分も分かっている。が、それなりの男女の仲なのだ。そこは致し方ないことでもあるし、許して欲しい。
 そのルールに最初こそしぶっていたライムだったが、船内で唯一の立ち入り禁止区域でもあるナマエの部屋に自分だけが入れる、という点については、それこそが恋人たる自身の特権でなのだと悪い気はしなかったようで。最終的には納得していた。
 だが、それはそれとして。やはり自身のベッドで、自身の匂いに包まれ眠るナマエの姿を見たいという気持ちも、もちろん男としてあるわけで。せめて寝るだけならいいだろうと交渉したことは何度かあったが、その度「そう言ってライム、結局寝るだけで済ましてくれないから嫌」とはっきり断られてしまい。
 いつか絶対説得してやると密かに願望を抱いていたところに、まさかのホンゴウに先を越されたと知り。現在ライムの不機嫌値は、非常に高まってしまっていた。
 ただ、人に見られたくないというナマエの言葉も理解はできる。ライムとてナマエの無防備な姿を他の男に見せたいわけでないからだ。気に食わないのは、ホンゴウに先を越されたということ。それだけだ。
 そしてナマエもまた、事情があれど恋人が自分以外の所で無防備にしていたことが気に食わないというライムの思いを、少なからず理解ができた。

「あの…ライム……っ!?」

 怒りをあらわにしつつも、同時に見るからに落ち込んだライムにさすがに申し訳なくなり。ナマエは謝ろうと、ライムの名を呼んだ。
 その瞬間、突如頭上から温かいものが降り注ぎ、ナマエの身体を一気に包み込んだ。どうやらライムが、ナマエから死角になる位置でハンドルを捻っていたらしい。
 乾いたタイルがみるみるうちに濡れていく。バスルーム内には一気に湯気が立ち立ち上り、まだ下着を履いたままだったナマエは、当然の如くもろともびしょ濡れになってしまった。
 降り注ぐシャワーで濡れた髪が頬に張り付く。ライムはうっとおしそうにそれを退かすと、突然のことに呆然と開いたままのナマエの唇に、かぷりと噛みついた。
 わずかな隙間からするりと舌を侵入させ、根元から絡め取る。これにはさすがにナマエも驚いたようで。ぎくりと身体を強張らせた後、慌てたようにライムの手を掴んだ。
 けれど壁とライムの身体に挟まれているせいで充分に身動きが取れず。むしろ抵抗したことが気に食わなかったのか、ライムはさらに激しく舌を絡ませ始める。

「ん゙んんっ…!」

 顔の角度を変える度、隙間からお湯が入り込む。そのせいですぐに酸素は足りなくなり、されるがままになっているナマエの身体はなおのこと、いつもよりもずっと早く息苦しさを覚え始める。
 いよいよ限界を迎えかけたナマエは、慌てて頬を掴むライムの手を叩く。ライムは一瞬眉間にしわを寄せたものの、ナマエの訴えが抵抗ではなく限界を知らせるものだと察し。最後に唾液をじゅるりと唾液ごと舌を吸い上げると、ゆっくりと離れていった。

「げほっ…な、んでいきなり…ッ」

 ようやく肺に送り込めた酸素に肩を上下させるナマエとは正反対に、ライムの息は一切乱れていない。文句の一つでも言ってやろうと、ナマエはライムを睨み上げる。
 けれど、そうしてライムの顔を見た瞬間、文句はあっさり喉の奥へと引っ込んでしまう。──まるで宝物を奪われた子供のようにむすっとして、それでいて少しいじけているようなその顔は、ホンゴウが自身の代わりにナマエを慰めてくれていただけだという事を、なんとか飲み込もうとしているようだった。
 気付けばナマエの身体からは力が抜けていた。小さくため息をつきながら、後ろ手にシャワーのハンドルを捻り止める。難し気に歪んだライムの顔に手を伸ばし、濡れて張り付いた髪を退かしてやりながら、頬をそっと撫でてやった。

「……船に帰ったとき、ちょうどホンゴウと会って。目とか腫れてるからって、手当してくれたの」
「……」
「それで、ライムと仲直りしたいなら、ちゃんと寝ろって。大事な話は寝不足じゃできないだろって言ってくれて」
「…ん」
「一人だと寂しいだろうからって、ベッド貸してくれたの。……本当に、それだけだよ」

 だからそんな顔しないでと目を合わせ、すりすり頬を撫でる。

「…分かってるつーの」

 珍しく甘やかしてもらえたことで少し溜飲が下がったのか、ライムは添えられた手に擦り寄りながら、ナマエの背中に腕を回し力いっぱい抱き締めた。
 それに応えるようにわずかに踵を浮かせながら、ナマエもライムの首に腕を回し、ぴったりと肌をくっ付ける。湿った互いの肌が触れる感覚が、ひどく心地良かった。

「…多少は消えたか?」
「…石鹸使わないと、シャワーだけじゃ、そんなに消えないと思う……」
「だよなァ…」
「っ、あ…」

 ライムはナマエの首筋に顔を寄せながら、しなる背中をするりと撫で下ろしていく。濡れて貼り付いた下着の中へ両手を差し込むと、そのままゆるゆると尻たぶを揉み始めた。

「ん…っふ、ぁ…」

 小さく声を漏らすナマエの耳元やこめかみに唇を落としながら、ライムは片手で、淡いイエローのレースがあしらわれた下着を太ももの半ばまでずり下ろした。その間ももう一方の手は柔らかな尻たぶを揉むことを忘れていない。
 下着はいっそこのまますべて脱がしてもよかったのだが、抱きしめたときに胸板に触れた柔らかさや、濡れた肌の感触に、それすらももどかしくなってしまい。ライムは腹の奥底に生まれ始めた熱に急かされるように、あらわになった秘部へ、そっと指先を這わせた。

「あ…ッ」

 そこはわずかにではあるが、粘度のある液体で湿り気を帯びていて。くちゅりと指先に絡む蜜に、ライムは小さく口角を上げる。

「もう濡れてんの」
「い、わないくていいから…っ」

 ナマエは恥ずかしさで真っ赤になった顔を隠すように、ライムの肩口に額を擦り付ける。その耳元で「悪ィ」と小さく笑いながら、ライムはぬかるむあわいへ、指先をくぷりと埋め込んだ。

「あ、ぁ…っ」

 中の具合を確認するようにゆっくりと、時折小さく壁をくすぐりながら進んでいく。まだわずかに濡れているだけなせいか、いつもより圧迫感があるようで。指一本だけでもぎゅうぎゅうに締め付け、ナマエは少し苦し気に短い呼吸を繰り替えしている。

「…おいナマエ、こっち向け」
「んっ、ぁ…?ふ…ッ」

 ライムはそんなナマエを横目でじっと見つめると、名を呼び自身の方へと顔を向けさせる。素直に顔を上げたナマエの薄く開く唇を奪うと、ゆるりと舌をねじ込んだ。
 上顎を撫で、頬の内側を辿り、音を立てながら、縮こまる舌を根元からゆるゆると絡める。時折唾液を送り込めば、ナマエの喉が小さく上下していた。

「は、ふ…っ、ん、ぅ…♡」

 身体が解れるようにとキスを続ければ、強張っていた四肢からは徐々に力が抜けていき。角度を変え絡め合う度、締め付けていた中はすっかり潤いを増していく。
 ライムは尻たぶを揉んでいた手を滑らせ、今度は胸へと添える。ふるりと揺れるそこを揉みながら、中心で勃ち上がる突起を柔く摘まんだり、弾いたりしていけば、ナマエの声はたちまち艶を帯び始めた。

「ふ、ん、ぁ…んぅ、っ♡」

 その声に誘われるように、ライムは入れたまま止めていた指を再び動かし始める。中はすっかり柔く解れ、奥からは蜜がこぷこぷと溢れてきていて。それを指全体に絡めながら、動きを徐々に大きなものにしていく。

「んぅ!ふ、は、ん゙、っあ、あ…!♡」

 ぱっと唇が離れた途端、抑えきれなかった声が細い喉から飛び出す。もう痛みは微塵も感じていないようだった。
 ライムは抜き差しするだけだった指をばらりと曲げてみる。そうして腹側のざらつく場所を少し強めに擦り上げてやれば、蠢く中は嬉しそうに締め付けてきた。

「んあ、ぁ…っ♡あ、や、あっ、あっん…!♡」

 絡む蜜は空気を含む度、ぐぽぐぽと卑猥な音を立てていて。ナマエの甘やかな嬌声と共にバスルームに響き、ライムを耳から犯していくようだった。くらりと頭の中が揺れる。

「ら、いむっ♡も、ぁ♡」
「…イきそうか?」
「っん、ぅ…♡」

 問いかけにナマエは必死に頷く。動きを緩めてくれるとでも思っているのだろうか。そんなことをすれば、結局辛いのは彼女の方だというのに。
 必死に縋るナマエの額に濡れて張り付いた髪を退け、ライムはつるりとしたそこにキスをする。ごめんな、という意が込められていることに、きっとナマエは気が付いていない。

「あ、あ…っ!♡ッ!?♡♡」

 溢れた蜜が掌に溜まっていく。ライムはそれを秘部の入口全体に擦り付けながら、ざらついた場所に指を再び押し当てると、今度は細かく擦り動かし始めた。
 じわじわと子宮を揺さぶるようなその動きに、ナマエの瞳からはついに涙がこぼれ落ちる。

「やっ、あ…!それだめ…っ!♡いっ、あ、ああぁ…っ!♡♡」

 ライムの首に回されていた腕に力がこもる。濡れる金糸に細い指先が絡み、わずかに見えたうなじを爪先が引っかいた。
 大きく腰を跳ね上げたナマエは、すぐにぐったりとその身を後ろの壁へと委ねる。

「は、ん、うぅ…っ♡」

 中から指を引き抜けば、蜜が指と秘部の間に糸を作り出す。それは弧を描きながら落ちていき。ぷつりと切れた後も、秘部からだらしなく垂れ下がったままだった。
 足に力が入らないのか、支えをなくしたナマエの身体は床に崩れ落ちそうになる。ライムは胸を触っていた手でそれを支え壁に寄りかからせると、そのまま足元へとしゃがみ込んだ。

「あ…?なに…?」

 ライムは太ももの半ばで中途半端に止まっていた下着を片足だけ抜かせ、自由になった足を、そのまま自身の肩に乗せさせた。むに、と肩に乗る柔さと共に、ひくつく秘部が目の前に現れる。
 一度達したせいなのか、それとものぼせているのか。靄のかかったナマエの脳内では、現れたそこにライムが顔を近付けていると気付くのに、わずかだが遅れてしまい。あれ、と思った次の瞬間には、かぱりと開かれた口が、そこへとかぶり付いていた。

「あ゙…っ♡!?」

 ようやく状況を理解したナマエの身体は咄嗟に逃げようと動くが、ライムはそれを、持ち上げた足を掴むことで抑え付け。そのまま秘部の入口を舐め始める。

「あ、っや゙、あぁあ…ッ!♡」

 突然の強すぎる刺激に、ナマエは拒むように手を伸ばす。けれどそこにライムを止めるほどの力は入っておらず。濡れたプラチナブロンドを、ただ絡ませ乱すことしかできなかった。

「やだ、ライム…っ!んあ、あ、あッ♡」

 抵抗虚しく秘部には舌が侵入し、生き物のように蠢きながら、にゅぐにゅぐと狭い道を進んでいく。指ほど奥までは届かずもどかしさはあるものの、それより、ライムが自分のそこを舐めているという視覚からの情報が、ナマエにはもはや暴力的なほどの快感となっていた。

「あ゙、ぃっ♡や、ぁい、っちゃ、あ、あ゙あ…ッ!♡♡」

 ナマエは涙ながらに限界を訴え、離せとライムの頭を押し返す。けれどそれに従うはずもなく。ライムは蜜を絡ませながら舌を引き抜くと、尖らせた舌先にそれをまとわせ。親指で割り開いた入口の、少し上で硬くなっている敏感な突起を、くりゅくりゅと転がし始めた。
 その瞬間、熱くなっているはずのナマエの身体は、冷えたように寒気を感じて。ぶわりと肌を粟立たせながら、二度目の絶頂を迎えた。
 達した瞬間奥から溢れ出した蜜を躊躇なく飲み込むと、ライムはようやく秘部から顔を離す。口の周りについたものも残さずぺろりと舐めながら、虚ろな瞳のナマエを見上げた。

「残念…。潮噴かなかったか」
「ぁ、う…」
「出たら飲もうと思ったんだけどな」
「っば、かじゃないの…!」

 ナマエは力の入らない手で、ライムの頭をぺしっと叩く。ライムはその手を握り、「冗談だよ」とどちらともつかない声音で笑いながら、肩からナマエの足を下ろし。それからゆっくり立ち上がると、「一旦出るぞ」と手を引いた。
 ナマエはぼんやりと壁にもたれたまま、ゆるりとライムの首に腕を回す。それが、歩けないから連れて行けという意味だと察したライムは、「しょうがねェな」と嬉しそうに目を細め。壁付けの棚に置かれたタオルに手に取りナマエの身体をかしかしと拭くと、そのまま横抱きにし、騒がしくバスルームを出た。
 ほとんど濡れたままベッドに投げられたナマエの上に、すぐにライムが覆い被さる。顔が近付き、ちゅうと吸い付くように唇が重ねられた。
 そうしてくっついた唇は、今度はすぐに離れ。鼻先が触れ合う距離で二人はじっと見つめ合う。
 あのとき向けられた冷たい視線は、もうどこにもその気配を滲ませてはいない。淡いヘーゼルカラーの奥底には炎の如く熱が揺らめき。同時にどうしようもないほどの愛を孕みながら、ナマエを見つめていた。──好きだと思った。目の前の存在が、ただ愛おしくて仕方がなくて。見えないその想いは代わりに涙となって、ナマエの瞳からこぼれていく。

「…なに泣いてんだ」

 頬を伝い落ちていく雫を、ライムは小さく笑いながら拭ってやる。それが悲しみによるものではないと彼も分かっているのだ。「ごめん」と謝るナマエに、ライムは「謝んな」と目尻に唇を落とす。そのまま耳元、こめかみ、頬、顎先と顔中にキスをしながら、徐々に場所を下へと移していく。

「ふ…ぁ…あ、っ」

 首筋、肩口、鎖骨、胸元と辿りながら下りていく唇のくすぐったさにナマエが身を捩れば、シーツと背中の間に差し込まれたライムの手が、もっと近付けとばかりにナマエの身体を持ち上げた。後頭部がくしゃりと枕に押し付けられる。
 ライムは胸に顔を寄せると、先で淡く色付く突起を舐め上げ、柔く噛む。傷付けないように、けれどほんの少しの痛みを生むようなその力加減は、そこから全身に、じくじくとした甘い痺れを広げ。抑えきれぬ嬌声を、ナマエの喉からこぼれさせていく。

「ね、まって…らいむっ、らいむ、ぅあ、ん…っ♡」
「ん…」

 下乳や、脇と胸の境。骨を感じる肋に、薄くも柔らかな腹。そのすべてに吸い付いたり、時には噛み付いたり。ライムはまるでナマエの身体すべてを楽しむかのように唇で触れていく。

「はぁ、ん…♡ふ、ぅ…ん、んん…♡」

 背に回された手は、太ももで中途半端に止まっていた下着を取り去りながら、するすると滑り下りていく。そうして腰を支えると、指先で仙骨の辺りをくりくりと押し撫でている。
 快感を拾うような場所ではないはずのところでさえ、ナマエの身体は刺激を感じてしまい。微弱な電気が走ったように中が蠢めき、鼻にかかった柔らかな声が、かぷかぷと噛みつく音と小さなリップ音と共に、部屋の温度を上げていた。
 ただ、なにかが決定的に足りない。ぬるま湯につかっているかのような優しい刺激も確かに心地良い。けれど既にバスルームで二度達しているナマエの身体は、そんな優しい刺激では足らなくなってきていて。腹の奥底が、ライムが欲しいと蠢き、重たい蜜を溢れさせていた。
 このままではもどかしさで殺されてしまう。本気でそう思ったナマエは、羞恥を押し殺しながら半泣きで訴える。

「らいむ…も、それやだぁ…っ!」

 柔らかく湿った肌と、少し触れるだけでいい反応を示すナマエに息荒く夢中になっていたライムは、その訴えに、薄い腹に滑らせていた舌の動きをぴたりと止める。
 懇願するようなその声音に、ナマエが先を要求していることは、ライムにもすぐに分かった。確かに彼女の身体と同じく、まだ一度も熱を吐き出していない自身の屹立も、ナマエの淫靡すぎる姿に先端から先走りを溢れさせ、情けなくも限界を訴えている。
 ただ、そこまで素直な下半身とは裏腹に、脳内は、もっとナマエの身体に、そのすべてに触れていたいとも訴えていて。ちぐはぐな思考と身体に、もはやライム本人の意識ものぼせたように茹っていた。
 ライムは「あ゙ー…」と唸るように吐き出す。

「挿れてェ…でももっと触っててェ…どうすりゃいいんだ……」
「なに言ってんのよぉ…」

 熱に浮かされた声音で支離滅裂な言葉を吐くライムに、ナマエは「いいから一度止めて…」と言うと、力の入らぬ上体をなんとか起こし。ライムの額をぺちんと叩いた。
 そうして軽くライムの髪を掴み痛くない程度に引っ張れば、腹に埋められていた顔がゆるりと上げられる。うっすら汗をかき頬を赤く染めるライムのその顔を見たナマエは、きゅう…唇を噛みながら、震える声で呟いた。

「も…はやく……、ライムの挿れて…っ」

 響いた吐息交じりの声。その生々しさが、どうしようもなくナマエの羞恥を煽る。けれどそれを構わないと思ってしまうほど、今はただひたすらに、ライムが欲しくて仕方なかった。
 青い瞳から、耐え切れず涙がこぼれる。その雫が赤く上気する頬を伝い、薄く開かれた唇の艶と重なった、その瞬間。ライムの身体は、本人の意識の外で動いていた。

「あ゙、──ッ!?♡♡」
「っ…、」

 ライムは勢いよく身体を起こし、ナマエの腰を両手で掴み引き寄せると、一気に奥まで突き入れる。奥を突かれたその瞬間、ナマエの目の前にはちかちかと白い火花が散り。身体は雷に打たれたように、四肢の先まで痺れていく。
 その締め付けに、我慢を重ねていたライムもぶるりと肩を震わせ達してしまう。挿れただけで達したことを頭の片隅で情けなく思いつつ、これは仕方ないだろうと、誰に対するでもない言い訳を並べ立てた。

「っ、〜〜ッ……ひ、♡」

 仰け反ったナマエの喉からは引き攣った声が漏れ、シーツを握り締める手が白く染まっている。けれど苦し気なその様子とは裏腹に、吐き出される熱に腹はきゅんきゅんと蠢いて。ライムは腰を震わせながら最後の一滴まで吐き出し。先端を柔い壁へと、染み込ませるように擦り付ける。

「は、ァ…っ♡……あ…?♡♡」

 体勢を整えるためわずかに腰を引くその動きにさえ、柔い中は過敏に反応していて。溢れた蜜が縋るように屹立に絡みつき。閉じることのできなくなったナマエの口からは、詰めたような声が漏れている。
 無理やり絶頂へと引き上げられ、息つく間もなく腹を熱いもので満たされ。乱暴に蹂躙されているこの状況を理解できていないナマエに、頭の片隅で、止めてやらなければ、とライムは思う。
 けれど同時に、止まれるわけがないということも、痛いほど理解していた。──ごめん、と呟いた言葉は、果たして音になっていたのだろうか。
 まるい肩を掴み、身体の向きを勢いよく変えさせる。そうして掴んだ腰を乱暴に上げさせた瞬間、うめきと共に枕に突っ伏した泣き顔が、驚いたように背後を振り向いた。
 くずれかけた四つん這いを、細い腕で支える間も与えず。ライムはナマエの胎内へ、後ろから打ち付けるように再び屹立を差し挿れた。

「あ゙、っ!?ぃ、あっ♡ああ、あ…、〜〜〜ッ♡♡」

 これまで散々とろけたおかげで痛みはさほど感じていないらしく。突き入れられた熱に、ナマエは再び達してしまう。
 立て続けの絶頂はナマエにとってひどく辛いだろうが、正直今のライムにそれを気にする余裕はなかった。

「っや、あ゙あぁ…!♡あ、ぁうっ、んぁッ!♡」

 先ほどまでのもどかしさから一転、蹂躙するように激しく与えられる快楽に、ナマエは声が抑えられず。喉からは悲鳴の混ざった嬌声が漏れ出ている。

「い゙、っ♡あ、ら、いむっ、や、ぁあ゙ッ!♡」
「は、あ゙…っ」

 がんがんと痛む頭に、もはやナマエの声は響かず。ライムは歯を食いしばりながら、ただひたすらに蠢く中を押し進む。
 先端で腹側のざらつく場所を擦りながら、雁首で柔く蠢く壁を抉る。そうしていきついた奥底で、小さく開きかけた子宮口をさらにこじ開けようと、まるでキスでもするように腰を押し付け。けれど口が先端に吸い付いた途端、すぐに腰を引いていく。

「あ゙、ッ♡ああ、っは、んあ、ぁっ!♡」

 浮き出た血管の形ひとつひとつも敏感に感じ取る中は、突かれる度喜びの蜜を奥からさらに溢れさせている。吐き出された精液と混ざり合ったそれは、柔らかな太ももを伝い、シーツへぱたぱたと落ちていった。

「ぁ、いむッ、ま、ぁ、まっれ、ぇ…っ♡」

 せめて少し待って欲しいと、ナマエはなんとか後ろを向き、腰を掴む手を必死に握る。けれどそれでライムが止まるはずもなく。むしろ煽っているのだということに、ナマエは気付けていない。
 ライムは伸ばされた片手を掴み上げると、ベッドに突っ伏すナマエの上半身を、捻りながら後ろに引き寄せる。半身が持ち上がり、ナマエの身体は片腕だけで、中途半端に支えることとなる。

「ひっ…!?や、あ、あ…ッ!♡♡」

 身体は中途半端に持ち上げられ、腕は掴まれ。何かに縋ることもできず、快楽を逃がす場所がどこにもなく。ナマエはただ腰を跳ね上げ、四肢を力なく震わせることしかできなかった。

「い゙、っぅう、あ、あっ!♡ら、いむッ、ら、ぁ…〜〜っ!!♡♡」

 もはやそれしか言葉を知らないとでもいうように、ナマエはただひたすらにライムの名を呼ぶ。ライムはそれに応えるように、上体をわずかに倒しナマエに覆い被さる。そうして、腰を掴んでいた手を腹の前に回し、その身を強く抱き寄せ。項垂れるうなじに顔を寄せると、がりっ、とそこに噛みついた。

「い゙っ、あ…!?♡♡」

 人より尖った犬歯が薄い皮膚を突き破る。わずかに血の滲む痕は後に痛みを伴うだろう。可哀想と思うけれど、今はそれすら喜びとなってライムを満たしていて。今度は労わるようにそこをべろりと舐め上げれば、興奮でナマエの肌が粟立つ。

「あ゙、ぁ…ッ……、っ♡♡」

 無意識なのだろう。噛みつき舐め上げる度物欲しげに押し付けられる下半身に、ライムは腰を掴んでいた手を、気付かれぬよう繋がるそこへと滑らせる。そうしてまだわずかに皮を被っている突起に触れると、根元からきゅうっと摘まみ上げた。

「っ、──!?あ゙、ぁあ…〜〜ッ♡♡」

 裏返った悲鳴と共に、ナマエが喉を、腰を仰け反らせる。繋がったそこからは、びしゃっと勢いよく噴き出す音がして。ライムの掌には温かな潮が溜まっていった。

「い゙、っ♡…ッひ、ぅ、ぁ……っ♡♡」
「ん゙、ぁ…あ゙ー……っ」

 掴んでいた片手を解放してやれば、ナマエの上半身がスプリングを軋ませベッドに落ちる。その拍子に屹立はずるりと引き抜かれ。栓を失った秘部からは重たい蜜と混ざり合った精液が溢れ出し、ぼたぼたとシーツに染みを作っていく。
 ライムは掌にわずかに残った潮をぼんやりと眺め。もったいないと、ほとんど無意識のうちにべろりと舐め上げていた。

「あ、ぅ…♡♡……っ♡」

 ナマエは快感が抜けないのか、瞳からとめどなく溢れる涙と、みっともなく半開きになった口からこぼれる唾液でぐちゃぐちゃに濡れた顔を、枕に押し付けながら必死に息を整えていた。足先はきゅうと丸まり、もどかしげにシーツを蹴っている。
 ライムは餓えた獣のように呼吸荒く目を据わらせ、その様子をじっと見下ろす。それだけで、二度の絶頂を果たしたはずの屹立は簡単に熱を取り戻していた。
 身を屈め、屹立を後ろからあわいへと擦り付ける。そうすればひくつく秘部はすぐに吸い付き。柔らかな肉が、食むように屹立を挟み込む。
 ゆるく腰を動かせば、雁首が勃ち上がる突起を潰しながら擦り上げるのか、ナマエは再び喉をか細く震わせていた。

「あ、ぁ…ッ♡」
「悪ィ…もうちっと、頑張れるか……?」

 興奮からだろう。必死に耐えているような、ひどくざらついた声がナマエの鼓膜を揺らした。
 ナマエは枕に顔を埋めながら、横目でライムを見上げる。自身の肩越しに見えた瞳は、同じように熱に浮かされ潤んでいて。ぎりぎりのところで耐えているのだというのは、聞かずとも感じ取れた。
 ここまでしておいて我慢だなんて、今さらだろう。なにより、止めて欲しいなどとは、ナマエは微塵も思わず。ただひたすらに自身を求め、触れて欲しいと、そう思った。
 ナマエは掠れ始めた喉を震わせ、「か、お…」となんとか声を絞り出す。消えそうなその声に、ライムは耳を傾ける。

「ん…?」
「かお…見た、い……」

 お願い、と続けられた言葉に、ライムはわずかに目を見開き。けれどすぐに、きゅうと唇を引き結んだ。

「…向き変えるぞ」
「ん…」

 肩を掴み、くるりと向きを変えさせる。ライムはナマエの顔の横に両肘をつくと、そのまま隠すように覆い被さった。プラチナブロンドがはらはらとシーツに舞い、ナマエの視界を包み込む。
 再び向き合ったことに安心したのか、ナマエはライムの背中に腕を回し、ぎゅうっと抱きついた。そうして甘えるように、ライムの肩にすりすりと擦り寄る。
 それがナマエの示す、"まだ続きをしていい"という了承の意だと受け取り。ライムも同じようにナマエの背中に腕回すと、隙間なんてなくなるくらい、強く抱き締め返した。

「ライム…」

 名を呼びながら、ナマエはライムの耳元にそっと唇を寄せる。顔は見えないけれど、くすぐったさからか「ん…?」と小さく笑みをこぼしているのを感じた。

「…好きにして……」

 囁いた瞬間、わずかにライムの身体が強張る。

「ライムの、好きにしてほしい……ライム、らい、ぅ、んっ…!」

 気付けばライムは、ひたすら己の名を呼ぶ小さな口へ、貪るように噛みついていた。すぐに隙間から舌を差し込み、逃げる小さな舌を捕まえ引きずり出す。表面を擦り合わせ、あふれる唾液をじゅるりと吸い上げ。それでも足りないと、熱い口内を喰らい尽くす。

「っ♡ぅ、んううぅ…、は、うっ♡」
「ん…、っあ、はぁ…ッ」
「あ、っんむ、ぅん゙、ッ♡」

 口の中もひどく敏感になっているのか、舌を絡めるだけでナマエの身体は軽く達しているようだった。
 ライムは急かされるように、あわいへ再び屹立をずりずりと擦りながら、先端を入口へと引っかけ。そのまま、ずぷりと差し込んだ。

「ん゙♡ふ、んん゙ッ♡っ、あ…ッ!♡♡」」

 どちゅんっと奥へ押し当たった先端は、今度は簡単に子宮口へはまり込み。勢いで離れた唇の代わりとでもいうようにぐりぐりと押し付けながら、ライムは腰を動かし始める。
 とんっとんっ、と優しく。けれど気持ちいいところをしっかり辿りながら奥を突くその動きに、唾液で艶を帯びた柔い唇からは泣き声が漏れている。

「な、んで、こんな、ゆっくり…っあ、ああ、あ゙…♡」

 てっきり先ほどまでのように貫かれると思っていただけに、突然与えられた質の違う快感に、ナマエの頭は混乱していて。思わず子供のように、いやいやとかぶりを振ってしまう。

「っ、これも気持ちいいだろ?…は、あ゙…ッ」
「や、あんッ♡ああ、ぁ…っ♡」

 じわじわ追い詰めるような、優しいけどひどく意地の悪い快感。乱暴に揺さぶられるよりも少し余裕ができるため羞恥も大きく、ナマエは止めてというようにライムの胸を押す。
 けれどその手は取られ、片方はそのまま指を絡め繋がれる。もう片方は、ライムの背へ回すように誘導された。
 こつりと額を合わせ、至近距離で見つめ合う。その間もゆるく奥を突かれ、あ、あ、とうわ言のような甘い声がナマエの口からはこぼれていく。それを見られていることを恥ずかしいと思うけれど、同時に、こうしていられることが、ナマエはどうしようもなく幸せだった。
 わずかな隙間さえ無くなればいいと、ナマエは背に回した腕で必死にライムに縋りつく。

「…なァ、ナマエ」

 ふと、ライムがナマエを呼んだ。それはどこか縋るような声で。動きが止まり、ふたつの視線が交わる。

「俺のこと…好きか?」

 わざわざ聞かずとも、答えはもうライムにも分かっていた。けれどどうしても、ナマエの口から、もう一度。今度はきちんと目を見て聞きたかったのだ。
 淡いヘーゼルカラーの瞳の奥底が、未だわずかに不安で揺れている。──正直、目を見て口にするのは、やはりまだ恥ずかしさがあった。けれどその瞳を見た瞬間、そんなのは些末事だと、ナマエはそう思った。

「……好き…」

 小さく呟かれた言葉に、ライムの瞳がわずかに細まる。

「…ライム以外のひとを好きになることなんて、絶対にない………ずっと、ずっとライムだけ……っ」

 もはや生理的なものなのか分からなかった。ただ涙だけが溢れてきた。
 子供のように涙をこぼすナマエに、ライムは嬉しそうに顔を緩ませ。よしよしとナマエの頭を撫でてやる。

「…泣い、」
「ない゙てない……ッ!」

 遮るよう叫べば、ライムはきょとんとして。そうして「はは」と笑う。

「泣いてねェの?」
「ん、ぅ…っ」
「はは…そっか」
「ふ、…」

 ライムは眦をゆるりと下げながら、ナマエの瞼にキスをする。溢れた涙をちぅと食み、そのまま鼻先、頬と滑り下りながら、最後に唇と重なった。
 舌は絡めない、ついばむようなキス。戯れるそれにくつくつと笑い合いながら、ライムは再びゆるりと腰を動かし始める。
 唇と同じように身体を擦り合わせれば、ナマエの胸が互いの間でぐにゅりと歪む。柔らかな中心で芯を持った突起は動く度擦れるのか、濡れた唇からは小さく声が漏れている。
 全身でナマエを愛撫しながら、ライムは腰をゆるく動かすものから、徐々に奥へ奥へと押し付けるようなものに変えていく。下りてすっかり開いた子宮口は、もう簡単に先端を飲み込んでいて。重く粘ついた蜜を、奥からこぷこぷと溢れさせている。

「ひ、ッ♡あ、ああぁ…、あ゙…ッ♡」

 下半身をぴったりと密着させているせいか、ライムの下生えが皮の剥けた突起を擦る。唇も、胸も、胎の中も、繋がるそこで勃ち上がる突起も。敏感な部分すべてを刺激され、ナマエはみっともなく舌を覗かせ喘ぐ。

「らい、む…っ♡んあ、あ゙、ぁ…♡」

 名を呼べば「ん、」と短い音だけが返ってくる。けれどそのたった一言に、こちらを愛おしむすべての感情が乗せられていて。──手を伸ばせば、触れられる距離にライムがいる。返事をしてもらえる。それだけで、ナマエの心は満たされていく。
 必死に自身の名を呼ぶナマエに、ライムもまた、どうしようもないほどの幸福で満たされていた。

「好きだ…」
「ん、ぅ…ッ」
「俺も、ずっと、ナマエだけだ…ずっと、ずっと好きだ…っ」
「あ、あぁ、あ…ッ!」

 互いの背中がしなり、丸まる。その反動で先端はさらに奥に押し込まれ、ぐぷりとはまる。目の前が一瞬白く光ったと思ったら、気が付いたときには、強張っていた全身が弛緩していた。

「は、ぁ…あ……、っ♡」
「ナマエ…ん、」
「ぁ、んぅ…♡」

 荒い呼吸も構わず、ひたすら唇が重なる。腹の奥底へこぷこぷと注ぎ込まれる熱が身体中にじんわりと広がっていく感覚に、死ぬまでこのまま繋がっていたいと、ナマエはぼんやりと思った。
 ちゅるっと最後に舌が吸われ、唇が離された。離れていく体温に名残惜しさを感じたナマエは、後を追うようにライムの耳元に顔を寄せ。未だ燻る熱を持て余した声で強請る。

「らい、む、もっと…♡」
「あ゙…ッ!?♡」

 吐息と共に、濡れた唇がライムの耳をかぷりと食む。その甘すぎる刺激に、がなり声と共にライムの肩がびくりと跳ねあがった。

「ん…ね、らいむ…っ♡」
「ちょっ、あッ、ナマエ、ま…っあ゙ー…ッ」

 慌てたような、苦し気な声を出し、ライムはぐうっと背を丸める。下腹に力を込めているのか、腹筋がぐっと浮き上がっている。
 萎えていたはずの中の屹立が、再び硬さを取り戻していくのが感じられ。今度はナマエの肩が跳ねる番だった。

「あ…っ、なか、大きくな…ッ♡♡」
「も、お、まえなァ……っ、!」

 耳を這う舌から逃げるように、ライムは勢いよく上体を起こす。

「どこで覚えてきたんだ、そんなん…っ!」

 顔を真っ赤にしながら、ふうふうと呼吸を荒くし、必死に何かを耐えるかのようにぐっと下唇を噛み締める姿は、さながら獲物を目の前にした獣のようで。それでもわずかに残った理性が、ライムをかろうじて人間へと繋ぎとめていた。
 自身がしたことが、ライムにとってどれほどの威力を持っているのか、もはや理解できていないのだろう。それどころか、ライムが余裕をなくしているところを見れたことがよほど嬉しかったのか、ナマエは「ふ…ライム、顔まっか」と眦を下げている。
 状況にそぐわない、その屈託のない笑みに、ライムはぐっと息を詰まらせる。そうして痛いくらいに締め付けられる心臓をなんとか落ち着けようと、深く息を吸い、長く吐き出し。全身に空気を取り込んだ。

「…お前さ、なんでそんな可愛いんだよ。まじで意味分かんねェ……」
「ふ…なにそれ……」
「馬鹿にすんなって…心底本気だぞ俺は」
「うん…ふふ……知ってる」

 楽しそうに笑みをこぼしながら、ナマエはライムの頬を両手で包み込む。交わったふたつの瞳をじっと見つめながら、「ライム」と名を呼んだ。返事をするように、淡いヘーゼルがナマエを強く見つめ返す。

「…好き」

 ぽつりと呟かれた言葉に、ライムはなにかが、ぎっと軋んだような、驚いた顔をした。

「……今まで、ライムに甘えてばっかりで、ちゃんと伝えなくてごめん。……正直、まだちょっと恥ずかしいけど…でも、ライムが好きって言ってくれる分、私もちゃんと言葉にするから……だから、っ」

 ライムからの問いかけに対する返答でもなく。かといって、熱に浮かされたうわ言でもなく。ナマエは今度こそ自らの意志で、きちんと想いを伝えたかった。
 けれどそうして続けようとした言葉は、ライムの手に口を塞がれたことによって、あっさり遮られてしまう。
 顔の半分を覆う大きな掌に困惑するナマエに、ライムは相変わらず押し黙っている。その頭は、未だ密着する下半身を覗き込むように垂れているせいで、ナマエから窺い見ることもできず。手の下でもごもご口ごもりながら、なんとか「ライム…?」と名を呼ぶ。

「………やべェ」

 蚊が鳴くどころか、飛んでいることすら気付けなさそうなほど小さく低い声が、ナマエの耳に届いた。何かに耐えるような色を含んだその声音に驚きライムをよく見れば、髪の間から見える耳が真っ赤に染まっていて。一瞬でも、「怒っているのか」と浮かんだその考えを、ナマエはすぐにどこかへ消し去った。
 自身の発した、"好き"というたったその二文字にあからさまに動揺を示すライムに、これまできちんと言葉にしなさすぎていたという事を、ナマエはさすがに申し訳なく思う。
 けれどそれと同時に、ここまで狼狽えるライムの姿を、少し面白く思ってしまっているのも、また事実なわけで。
 ナマエは一瞬、きょとんとしながらも、すぐに「あははっ」と大きく笑った。

「やだ…ライム、すごく可愛い」
「……うるせ」

 普段自身がナマエに言う専売特許の言葉でからかわれたことが悔しかったのか、くつくつ笑うナマエの鼻先を、ライムは悪戯返しのようにがぶっと噛む。それでもナマエは楽しそうにしながら、「可愛い」の言葉をライムに与え続けている。
 そうしてひとしきり笑った後、ナマエはライムの首に腕を回すと、まるで宝物へ飛びつくかのように、その身を思い切り抱き締めた。

「好きだよ、ライム。…大好き」

 美しい青い瞳を屈託なくほころばせ。噛み締めるように呟きながら、ナマエはライムを見つめる。
 あまりに真っ直ぐなその言葉と瞳に、ライムはやはりぐうっと眉間にしわを寄せたけれど、今度は顔を隠すことはしなかった。

「…俺も……好きだ。お前が一番」
 
 言うや否や、ライムはくしゃりと緩んだ淡い唇を、噛みつくように塞いでしまった。
 喉の奥でまたくつりと声が響く。幸せが、身体の中で確かに息をしていた。




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