ライムジュースにとって恋人であるナマエとのセックスで一番大切なことは、"いかにナマエが気持ち良くなるか"、である。
 涙を散らし嫌とかぶりを振る身体を、これ以上ないほどの愛念をもって、抗えぬ快楽の泥濘に溺れさせる──それがなにより大切で、そして重要なことなのだ。
 そうなると、「ナマエがライムに触れる」より、「ライムがひたすらナマエの身体を愛撫する」ことの方が多くなるのは、もはや自然な流れといえた。
 もちろん、ナマエからキスしてほしいだとか、抱き着いてほしいだとか。そういう細かいことを言い出せば多く列挙できるのだけれど。
 それでもやはりいざ事が始まれば、とにかく自らの手でひたすらに乱れる姿が見たい、という欲が上回り。結局ライムが始終好きにして終わることがほとんどだった。
 そう言っていたらこの間、ナマエがとんでもない下着で誘ってくるという、とんでもない出来事が発生してくれたわけだが。しかしやはりそのときも、ライムがその姿を堪能するため始終触ったり視たりをして終わったから、結局は同じことだろう。
 ただ、それに対して不満があるわけではない。恋人になる前の、そしてなってからもあった紆余曲折と、そもそもナマエの性格を考えれば、時々大胆になってくれるだけで、ライムとしては充分だった。──はずなのだが。

「…ライムはなにか、私にやってほしいこととか、したいこととか…そういうのは…ないの……?」

 顔、どころか耳と首元まで真っ赤に染めたナマエがそう訊ねてきたのは、ベッドの上で向かい合って座り。ライムがナマエのシャツのボタンに手をかけた、まさにそのときだった。

「………やってほしい…?したい、こと……?」

 あまりに唐突なその問いかけに、ライムはひどく動揺していた。
 だって、それもそうだろう。もしこれが何気ない日常の最中──それこそ食事の途中だとか、掃除のときだとか。そんなときだったなら、ここまで動揺はしなかった。
 けれど今は違う──ここはつい数時間前、補給と息抜きも兼ねて上陸した春島で。その歓楽街にあるホテルの一室で。さらにいえば、ここはいわゆる、セックスをするための部屋で。そして二人はこれからまさしく、セックスを、しようとしていたわけで──。
 そうなればもう、問いの"なにか"は、"セックスでしてほしいこと"の意味で、間違いないのだから。

「………それは…えろいことでもいい…、んですか…?」

 自ら溺れさせることが好きで、ナマエからのアクションが少なくとも構わない──なんて。そんな男前なことを言いながら、心は現金なもので。いざこうしてナマエから幸せの極みともいえる問いかけをされれば、欲望はあっさりと鎌首をもたげてしまう。
 ──今望めば、きっとナマエはなんでもしてくれる。文字通り、なんでも。
 夢のような問いかけが半ば信じられなくて。状況からみて間違いないにも関わらず、ライムは思わず確認のように訊ねてしまう。

「……ん、」

 けれどそんなあからさまな動揺も、羞恥と戦っているナマエは気にしている余裕がないようで。消え入りそうな声と共に、小さく頷いた。
 ライムの脳内は、もはや興奮でどうにかなりそうだった。今すぐ押し倒し、その健気な心を存分に愛してやりたかった。
 それを理性を総動員させなんとか耐えているのは、羞恥に耐え極上の申し出をしてくれたナマエの勇気を、男として無碍にしてはいけないと思ったから。
 ライムは興奮で険しくなっているであろう顔を片手で覆い隠し、心を落ち着けるため、すー…と細く息を吸う。

「じゃあ……ひとつ、あんだけどよ…、」

 そうして小さく、願いを口にした。




 うねる中から指を引き抜く。すべて抜き切る直前、鉤状に曲げた二本の指でざらついた部分を強めに引っかいてやれば、痙攣していた壁が再び指を締め付け。追うように噴き出した潮がぱたぱたと散り、ライムのズボンに濃い染みを作っていった。

「っは、ぁ…♡」

 ライムは指に纏わりつく潮をぺろりと舐めながら、肩で息をするナマエをじっと見下ろす。
 まだ指しか挿入れていないというのに。既に二回達しているからか、その呼吸は苦し気に荒れていた。
 春島とはいえまだ夜は冷えるからと、半分は気遣い、もう半分はただエロいからという理由で、下着を取り去った後に再び着せた白いシャツにはしわが寄り、ところどころにナマエの汗やら諸々が滲んでいる。もう遅いだろうが、あとで少しでも整えてやらなければ。きっと正気に戻ったときナマエは怒るだろう。
 そんなことをぼんやり考えながら、ライムは濡れた手を自身のズボンで乱暴に拭うと、枕に沈む頭をそっと撫でてやる。

「…ナマエ、できるか?」

 訊けば、ナマエはゆるりと視線だけをライムへ向け。そうして「ん…」と、返事とも漏れ出たともつかぬ声を発すると、緩慢な動きで両腕を広げた。
 それが、起こしてほしいの意だとすぐに察し。ライムはシーツと背の間に両腕を差し込むと、気怠げな身体を優しく抱き起こしてやる。

「大丈夫か?」

 乱れたベッドの上で座り向かい合い、汗と涙で頬に張り付いた髪を退かしてやりながら訊ねる。起こした途端くたりと背を丸めた身体に、やはり辛いか、という気持ちが湧いたからだ。

「だいじょうぶ……やりたい…」

 ライムとしては、「身体は大丈夫か」の意味で訊いたのだが。どうやらナマエは「できそうか」の意味で取ったらしく。絶頂の余韻にまだわずかに蕩けぽやっとしているくせに、どこか妙に強い決意を抱いたような声でそう返された。
 ──ライムがナマエに今してもらいたかったこと。それは口淫、いわゆるフェラチオだった。
 これまで幾度となく身体を重ねた中で「してもらえたら」くらいの気持ちは確かにあった。
 それでもやはりライムの性分として、ナマエを快楽に溺れさせることが好きなので。いずれ機会があれば、となんとなく後回しになっていたことだった。
 それが今、こうして機会が巡ってきてくれた。しかもナマエ自ら申し出てという、とんでもない爆弾と共に。内容はライムが提案したことではあるが、そんなのはもはや些末事だろう。
 ただまあ今回も例の如く、ナマエの身体に触れるのが楽しくて、結局ここまでいつも通り好き勝手に暴いてしまったわけだが。
 その自覚があるだけに、辛くて無理だとか、それ以外にも、やっぱり嫌だと言うのならば、それはそれでもちろん了承するつもりだった。既に二度も達しているうえ、お世辞にも綺麗とは言い難いものを舐めてくれるというのだから、直前で臆するのも仕方のないことだろうと思ったから。
 けれどナマエは拒否するどころか、「やりたい」と積極的な言葉までくれた。もはやその返答だけでも、ライムには色々と"くる"ものがあった。

「ん…ありがとな」

 奥歯を噛み締め、湧き上がる期待と興奮をなんとか抑えながら、ライムはお礼と共にナマエの額に小さく口付ける。

「…少し待ってろ」

 フェラをするのであれば高さを合わせなければいけないわけだが、かといって冷たい床にナマエを座らせたくはない。少し考え、ライムはおもむろに腰を上げると、ベッドの上で膝立ちになった。
 そうすると、ナマエの顔のわずかに下、頤辺りにライムの下半身がくる。ナマエが少しでも身を少し屈めれば、ズボン越しに勃ち上がるそれに唇が触れてしまうような位置だ。

「っ…、」

 早く解放しろとばかりに張り詰めたそこが目の前にきたことで、ナマエは思わず息を詰める。
 ライムは膝立ちになっているが、それでもまだナマエの顔の位置の方がやや高い。つまり今度はナマエが自ら、位置を調節しなければならない。それはまさしく、これから目の前のものを自ら舐めるのだと、そう自覚させるような行動だった。
 ナマエは一瞬、迷ったように視線をさまよわせる。けれど唇をぎゅっと結ぶと、迷いながらもゆっくりと腰を引いていった。
 亀のように首を少しだけ前へと伸ばし、ちょうど眼前に膨らみがくるように、高さを調節をしていく。
 自らそうして、ライムのものを受け入れようと準備をしている──それだけで既に羞恥で死にそうだというのに。わずかに腰を浮かせ引いた瞬間、秘部から溢れた蜜が、にちゃりとシーツを擦る音が微かに聞こえ。戸惑いながらも、この状況に身体は確実に期待しているのだと自覚してしまい。頬がかっと熱を持つ。
 汗で濡れたシャツは不快ではあるが、このときばかりは着ていてよかったとナマエは思った。
 そうでなければ、溢れた蜜が浅ましくシーツを汚す様を、ライムに見られていたかもしれないのだから。

「ん…、っ」

 漏れ出そうになる吐息を必死に抑えながら、いっそじれったくなるほどゆっくりと腰を引いていき。ナマエはようやく、無理のない位置に顔と腰を落ち着けた。
 ──次はどうすればいいのか。なにせシャツ一枚だけの自身と反対に、ライムは未だすべての服を身に着けたまま。陰茎はおろか、下着でさえ姿を見せていないのだから。

「ら、らいむ…、」

 情けない声と共に、ナマエはおずおずとライムを見上げる。
 その様子に、最初は一瞬、焦らすための駆け引きかとも思ったが、こちらを見上げる青い瞳には不安が滲んでいる。おそらく、本気で次の行動が分からないのだろう。
 もちろんライムとしては、ナマエの手ですべて脱がせてほしいのだが。この様子から見るにそれはまだ難しそうだ。なにより、これ以上焦らされるのはライムとしても辛い。だから、脱がせてもらうのはまた今度。
 ライムはナマエと、なにより自身の心臓を落ち着かせようと、ナマエの頭を一度優しく撫でる。そうしてその手で、自ら服を脱ぎ始めた。
 サッシュを解き、ズボンのホックを外す。ファスナーを下ろせば、窮屈そうに張り詰め、先の色を濃くした下着が現れる。
 すっかり先走りで汚していることに、童貞かよと情けなさを覚えつつ。ライムは勃ち上がるものを引っ掛けぬよう、ゆっくりと取り出した。

「あ…っ、」

 ようやくとばかりに勢いよく陰茎が飛び出す。張り詰めた竿には血管が浮き出り、生き物のように生々しい。先端は先走りで濡れ、時折雫となって伝い落ちていく。
 太く、硬度を持ったものを眼前にして、ナマエは呼吸の仕方を忘れてしまった。息の音が無くなった鼓膜の奥では、代わりに心臓の音がどくどくと響いている。
 ──これを、咥える?こんな大きなものを?だって、歯とか当たったら絶対痛いだろうし、だからといって舐めるだけで気持ち良くなるものなの?ああもうこんな事なら、故郷の姉さんたちにやり方を訊いておくべきだった。
 ぐるぐると思考が回る。けれど騒がしい思考とは裏腹に、ナマエの身体は固められたかのように動かなくなっていた。まばたきすらできず、混乱を抱いた瞳でただ眼前のそれに唇を震わせている。

「ナマエ」

 ふと、温かい手に両頬を包み込まれる感覚に、ナマエはびくりと小さく肩を跳ねさせた。
 次いで呼ばれた名前に、はっと意識が戻ってくる。

「…嫌なら止めてもいいぞ。無理にするもんでもねェしな」

 かけられた声に顔を上げれば、ひどく優しい顔をしたライムがこちらを見下ろしていた。
「まあ、ちんこ丸出しで言っても説得力ないだろうけどな」からかう言い方ではあるけれど、頬を撫でるその手付きはナマエを気遣っていると分かるもので。どこまでも優しいその仕草に、ナマエは鼻先が、つん、と痛むのを感じた。
 ライムの足へ縋るよう手を添え、ぎゅうとズボンを掴む。

「違うの…嫌とか、無理なんじゃなくて…その……、」
「ん」
「し、したことないから、どうすればいいのか、分からなくて……、」

 別に悪いことをしているわけではないのに。まるで言い訳でもするかのように「それで、」と必死に続ける。と、それを遮るように、ライムの手がナマエの頬を、むにりとやわく揉んだ。

「な、なに…、」
「嫌じゃねェんだな?」
「…うん」
「無理もしてねェな?」

 うん、と小さく応える。
 ライムにいつも気持ち良くしてもらっているのだから、自分だって同じようにしてあげたいという気持ちはナマエにだってある。だからお願いされたときは嬉しかったし、どんなことでも可能な限り叶えたいと思った。それだけは、紛うことなき本心だ。
 ナマエのそんな想いは、言葉少なくともライムにはきちんと伝わったようで。ライムは「分かった」と嬉しそうに笑うと、頬を包み込んでいた手を顎へ滑らせ、親指でそっと唇に触れた。
 親指は一度、薄く開かれた唇を左から右へとなぞる。そうして先端をわずかに下唇にひっかけると、開いた隙間にほんの少し差し込まれた。途端、指先にぬるりと唾液がまとわりつく。
 ──温かなこの場所に、今から受け入れてもらえる。
 そう考えただけで、ライムの背にはぞくりと小さな稲妻が走り抜けていた。

「…舐めるだけでもいいし、もし咥えられんなら、無理のないところまでで構わねェからよ」

「してもらえるか?」と、最後まで決定権をこちらに委ねてくれるその優しさに、戸惑いと羞恥は、ナマエの中からいつの間にか消え去っていた。
 ナマエは深く小さく息を吐き、おそるおそる陰茎に顔を近付けていく。

「ん、む…、」

 張った雁首の部分に、そっと舌先を触れさせる。

「っ…、」

 わずかに息を詰めた音が頭上から聞こえる。それは吐息混じりの、色を含んだ音。少し舌を触れさせただけだけでも気持ちいいのか、となんだか新しい発見をした子供のような気分になり。ならばと今度は舌全体で触れてみせる。
 表面に感じる血管の形。それは張り詰めた皮の下にありながら、どくりと蠢く様を生々しく伝えてくる。滲んだ唾液を纏わせながら、ぬるりと裏筋を滑り、唇は先端を捉える。そうしてそのまま、ぱくりと咥え込んだ。

「っ、あ…」
「んん…ッ、」

 途端、口内にじわりと苦みが広がり、ナマエは思わず顔を顰める。けれど何故か離したいとは微塵も思わなかった。

「っあ゙ー…そこ…、舌と、唇使って…ん、偉いな…はぁ…、」
「んむ、ふ…は、ん゙ん…、ッ」

 褒められるままに、やわく尖らせた舌先を先端に擦り付け、液の滲む小さな穴をくりくりと弄る。そのまま雁首のくびれを一周しながら、じゅわりと滲んだ唾液を竿に纏わせ、舐め下ろし、ゆっくりと口内へその身を収めていく。
 先端が口内の限界まで辿り着いたところで、唇をわずかに窄め、今度は引き抜く。たどたどしく頭を上下させながら、それを繰り返していく。徐々に、ぐぽっぐぷっ、とはしたない音が響き始めていた。

「は、っあ゙……ッ」
「………」

 溢れた唾液をじゅるりと吸い上げる度、鼻から青臭い匂いが抜けていく。
 はしたない、みっともないとは思いつつ、同時にひどく脳を揺さぶられるような興奮を、ナマエは確かに覚えていた。
 伏せていたまつ毛をわずかに上げ、ちらりとライムを伺い見る。
 普段よりさらに眉間にしわを寄せ、漏れる声をなんとか抑えようと歯を食いしばっている。人には声を我慢するなと散々言うくせに、自分はあまり出したくはないらしい。
 恥ずかしい話、いつもはあまり余裕もなく。気付いたときにはぐずぐずにされ、意識も定かでないことがほとんどで。だからこんなライムの姿を、意識がはっきりしている状態で見るのは初めてだった。
 ──ライムがいつもひどく楽しそうに自分を見ている理由が、今ならナマエは分かる気がした。
 こちらの一挙一動に、こんな、"堪らない"みたいな反応をされたら。頑張りたいというか、もっとして色々してあげたい、そんな気持ちになる。
 けれどそれは同時に、ライムに"こう"されているときの自分も、こんな顔して、こんな反応を見せているということで。それはそれで恥ずかしいが、そもそもセックス自体羞恥が生まれる行為なのだから、もうそこはお互い様だろう。

「ふ、んぅ…ぅ、っ♡」

 湧き上がる興奮がナマエの背中を押す。苦し気に喉奥から漏れ出る声には、けれど確かに甘さが混ざり始めていた。
 ナマエはさらに身を乗り出し、より奥へと呑み込んでいく。けれどさすがにコツも掴めぬまま全てを喉奥まで咥えることはできず。収まりきらなかった根元には、こぼれた唾液が伝っていった。

「は、んむ…っんん…♡」
「………」

 長いまつ毛を伏せ必死に頭を上下させるナマエを、ライムはじっと見下ろす。
 ──正直なところ、気を抜けば多少声が出てしまいそうにはなるが、物理的な刺激だけでいえば我慢できないほどではない。
 初めてだから仕方ないとはいえ、言葉を選ばず言えば、下手だと思う。けれどライムにしてみれば、そんなことはどうだっていい。重要なのは、「ナマエがしてくれている」という、この状態そのものだ。だから、上手い下手などは二の次だった。

「ふ、はぁ…っ♡ぢゅ…ッん、…」

 艶を帯びた髪は乱れ、汗で頬や額にばらけながら張り付いている。それを退けながら、落ちる髪を耳にかけてやり、顔がよく見えるようにする。
 ナマエは一度、ちらりとライムを見上げるも、すぐに目を逸らし、頭と舌を動かし続けている。
 大きく開かれた淡い色の唇、粘液を纏い卑猥な音と共にそのあわいを出入りする、赤黒い熱。一生モノのオカズができた気分だ。ライムはまばたきも忘れ、この光景を網膜にこれでもかと焼き付ける。

「はは…っ、いい子だな、ナマエ…」

 ナマエも少し慣れてきたのか、徐々に動きがスムーズになっていた。
 ライムは荒くなる呼吸を抑えながら、褒めるようにナマエの耳輪をなぞる。そのまま優しく手を滑らせ、反らされた喉元から顎先を、まるで猫を愛でるように、こしょりと撫で上げる。

「ん、う…っ!ん、ん゙…ッ!♡」
「っ、ぅあ゙…、!」

 瞬間、突然触れられ驚いたのか、ナマエの身体が大げさなくらい跳ね上がった。きゅうと締まった口内に、ライムも思わず大きく声を漏らしてしまう。
 ──やべェ、出るかと思った。
 寸前のところで踏み止まったものの、下半身にはじくじくと射精感が溜まっている。次は我慢できるか分からなかった。
 けれどもう少しだけ、この光景を見ていたい。ライムはぐっと背中を丸め、刺激に耐える。──そこで、ふと気が付いた。
 屈めた視線の先には、ナマエの細い腰が見えている。わずかに浮いたそこが、小さく跳ねながら、引き攣るように揺れていた。
 舐めているからとか、そういうものではない。その動きはまるで、そう。決定的な刺激が与えられず、もどかしくて、焦れているような、そんな動き。
 しかもそれは、ナマエが陰茎を限界まで咥えているとき。そして、ライムが喉の奥を軽く突き上げた、まさにそのときに行われていた。
 そのまま流れるように、ライムは視線を腹の方へと落とす。
 シャツ越しにふるりと揺れる胸、力が入る度へこむ薄い腹の、その先。やわらかな太腿が、膝が、すりすりと小さく擦り合わされていた。──ナマエも舐めながら、興奮している。

「っ…!」
「ん゙、っ…!?ふ、んん、ん゙…!♡♡」

 それに気付いた瞬間、もう駄目だった。
 心臓が大きく跳ね、全身が茹るように熱くなる。くらりと歪んだ視界に、ライムは無意識のうちに腹に力を込めていた。

「あ゙、くそ…、ッ」

 ライムはうめき声を上げながら、咄嗟にナマエの後頭部を掴んだ。絹髪がぐしゃりと乱れる。伏せられていた青い瞳が見開かれ、ぼろりと涙がこぼれ落ちた。
 迫りくる射精感に歯を食いしばった瞬間、わずかに残った理性が、ライムにあることを気付かせた。──このままでは、ナマエの口の中に出してしまう。
 こうして舐めてもらった時点でそんな考えが今さらなことは充分理解している。してはいる、が。舐めると飲むでは、また意味が大きく変わってくるだろう。味なんて当然知るはずもないが、青臭いこれが美味いものなわけはないし、そもそもそんなこと、ナマエにはさせられない。
 普段からライム自身、既にナマエの汗やら蜜やら潮やら、それこそあらゆる体液を飲んではいるのだから、同じだろうと言われてしまえばそうなのだが。それはライムが好き好んでやっていることだから、少なくともこの状況のこれは、ライムにとってはまた別問題なのだ。
 とにかく駄目だとライムは慌てて腰を引く。けれどそれは、ズボンを掴むナマエの手に止められ。むしろ逃げる腰を追うように、ナマエの頭が陰茎を喉奥へと誘い込んできた。

「っばか、ナマエ…!あ゙…、くそ、出る…ッ」

 限界に近い、どころか限界でそんなことをされてしまえば、我慢などできるはずもなく。抵抗虚しく、ライムはナマエの口内へ精液を吐き出してしまった。深い快感に腰がぞくぞくと震える。
 ──結局出してしまった。抜けていく熱に自己嫌悪に苛まれつつ、それでもせめてこれ以上はと、ライムは再び腰を、今度は止められぬよう乱暴に引いてしまう。

「ん゙ん…っ、ふ、ぁ…ッ!」
「っ…!」

 太ももを掴む小さな手からはすっかり力が抜けていたようで、今度は難なく逃げ出せた。
 けれど慌てるあまり吐精の最中に腰を引いたせいで、最後とばかりに噴き出た精液のそのほとんどが、ナマエの顔に降りかかってしまった。
 青い瞳の眦、小鼻の横、まろい頬、小さな頤の縁をなぞりながら、白く濁った液体はナマエの顔を方々へ流れ落ちていく。
 そしてそれは、咳と共に薄く開かれた淡く色付く唇の奥。覗く赤い舌の上にも、その身を重く残していた。

「は…っげほ…」

 痰が絡む苦し気なその声に、今すぐ吐き出せと、そう言うべきなのに。
 やわくぬめる赤い舌、笑顔の愛しい花顔。そのすべてを汚す、卑しい白濁──そのあまりに淫猥な光景に、荒い呼吸を正すことすら忘れ。ライムはすっかり言葉を失ってしまった。

「ん゙ん、ん…、ッ」

 目を見張り固まるライムをよそに、ナマエは唇を引き結び、一度小さく咳払いをする。 そうして口元を押さえると──あろうことか口内に残った白濁を、ごくりと音を立てて飲み込んだのだ。

「は…、」

 小さな喉仏が大きく上下する様に、さすがにライムも声を漏らさずにはいられなかった。
 ──意図せずとはいえ顔にかけてしまったことを、吐き出したライム本人は「やってしまった」と後悔しているというのに。
 当のナマエは顔にかかったことも厭わず。あまつさえそれを、躊躇いなく飲み込んでいるではないか。
 達して幾許か冷静になってきていた頭とは裏腹に、その信じられない光景に下半身には瞬く間に熱が集まっていく。欲に忠実で理性の制御ができない、情けない獣のように、陰茎はあっという間に硬さを取り戻していった。

「んん…、っは、ぁ……」

 喉に絡む苦みと匂いに息を漏らしながらも、ナマエはようやく残っていた白濁をすべて飲み込み。最後に味わうように、舌を上あごに擦り合わせながら、吐息混じりのため息を吐き出した。
 そうして、俯いていた顔を上げ──ぎょっと目を見開く。
 自身の口内へ吐き出し一度は萎えたはずのそれが、再び目の前で勃ち上がっているではないか。しかも舐めたことで最初に見たときよりも、ひどく生々しいぬめりを纏いながら。
 ナマエが目を離していたのなんて、ほんの数分だ。その間にいったいなにがどうなって、再び硬さを取り戻すに至ったのか。
 まるで時間が巻き戻ったかのような目の前の光景に呆然としながら、ナマエはゆっくりとライムを仰ぎ見る。そうして、絞り出すように呟いた。

「……なんでもう勃ってんのよぉ…」

 眉尻はへにゃりと下がり、涙を浮かべた青い瞳がきゅうと細められる。上気してほんのりと赤く染まる頬には、汗で乱れた髪が張り付いていた。
 呆れを含んだ声を発した唇の端に付いていた白く濁った液体が、粘度を保ちながら、顎のラインをすうと落ちていく。

「……あ?」

 瞬間、ライムの脳内で、なにかが弾けた音がした。次いで鼻の頭がじわりと、ひどく熱を帯び始める。

「え…?あっ…!?」

 こぼれたライムの声に、ナマエも大きな声を上げ。細めていた瞳を大きく見開いた。

「ちょっ、ライム!は、鼻血!出てる!」

 信じられないことに、ライムの鼻から一本の線を描くように、つう…と赤いものが垂れていた。 
 血なんてものは海賊である以上見慣れているが、セックス中というこの状況下では、当然ない。なにより、どうしていきなりライムが鼻血を出したのかナマエには分からず。あまりに唐突なこの光景に、羞恥だとか興奮だとか、そんなものはあっという間にどこかへすっ飛んでいった。
 ナマエは大慌てで上体を起こすと、「座って!」とライムの肩を掴み強く押す。そのあまりの勢いと、先ほどまで慣れぬ行為に脱力していたとは思えない力の強さに、ライムは「お、おう…」と素直に腰を落とした。
 そうして入れ替わり膝立ちになったナマエは周囲を見回し、跳ね除けぐちゃぐちゃになっていたベッドシーツを引っ掴むと、ライムの鼻を抑える。
 いくらここがそういうホテルで、既にシーツはべたべたになっていたとしても、ホテルの備品を血で汚すなどもっての外だ。
 けれど最初から部屋に置かれていたティッシュはとうに使い終え無くなっているし、ハンカチだってどこにあるかもう分からない。だから咄嗟にシーツを掴んでしまった。あとでしっかり弁償するから許してほしい。

「上向いたら駄目だからね」
「鼻血なんてよくあるだろ…んな慌てることじゃ、」
「いきなり鼻血出したら普通は慌てるの…!ああもう、ちゃんと押さえてっ」
「………」

 シーツを離そうとするライムの手を、ナマエはまるで子供を叱るように押さえつける。
 普段の方がよほどひどい怪我や出血をしているというのに。たかだ鼻血ごときでそんなに騒ぐこともないだろう。過剰なその様はまるでホンゴウのようだとライムは思った。
 とはいえ、ここで「問題ないって言ってんだろ」「それより続けるぞ」などと言おうものなら、「は?続き?鼻血出した人がなに言ってるの駄目に決まってるでしょ」「というかこっちは心配してるのに」となり。最悪今日はもうこれ以上はしない、となる可能性だってある。それだけは避けたい。こんな状況になろうと、相変わらず下半身は元気なままなのだから。
 それにまあ、なんだ。ナマエは気付いていないようだが、目の前で膝立ちになってくれているおかげで、赤い痕が方々散るやわらかな双丘が、シャツ越しではあるが目の前でふるりと揺れているのだ。しかも、ちらちらと淡い色の突起を見え隠れさせながら。
 普段は寝転び横にやや流れている状態を見ることが多いので、ありのままの位置で揺れる様も、これはこれでいい。とても扇情的な素晴らしい光景だ。
 どうせ血が出た量は少ない。すぐに止まるだろうし、それまでくらいは大人しくしておこうとライムは言葉を呑み込んだ。

「…ん、もう止まったかな」
「……」

 言いながらナマエはそっと手を離す。少し待っても血はそれ以上出てこない。完全に止まってくれたようだと、ほっと胸を撫で下ろす。
「よかった。もう大丈夫だよ」ナマエは最後にもう一度鼻元を優しく拭おうとする──と、それを制止するように、ライムの手が重ねられた。
 掴まれた手はそのまま強く引かれ、ナマエの身体が傾く。「わ、」と声を上げたのも束の間、気付いたときには、ナマエの身体は胡坐をかいたライムの膝の上へ、向かい合わせに座らされていた。
 やわい尻たぶがライムの太ももに乗せられる。ようやく見慣れた、いつも通りの光景だ。

「ライム…?」

 いきなりどうしたのかと、ナマエが小首を傾げる。けれどライムがそれに返事をすることはなく。無言のまま、けれどなにか言いたげにじっとナマエを見つめている──と、ふいに、その淡いヘーゼルカラーの瞳が細められた。そうして流れるように、わずかに首を傾けた顔がゆっくりと近付いてくる。
 ──キスされる。そう理解した瞬間、ナマエは思わず、両手で自身の口元を覆い隠していた。

「………」
「………」

 言葉がなくとも、ライムがなにを言いたいのかは分かる。放たれる、「なにすんだ」「手退けろ」という、圧。プレッシャーが、肌をぐさぐさと刺してくるのだから。
 ただ、当然ナマエの方にも考えがあった。もっとも考えというより、確認と言った方が正しいのだが。

「だって、いいの…?」
「あ?なにがだよ」
「なにって……一応、その…舐めてるわけだし…」

 そう、決してキスが嫌なわけではない。訊きたいのは、フェラをした後にキスなど、嫌悪感はないのかということ。
 もごもごと小さく呟かれる問いに、ライムはなんのことかと一瞬思案するように眉間にしわを寄せ。けれどすぐに、「…ああ、」と納得したように声を漏らした。

「んなの今さら気にするわけねェだろ」
「…そうなの?」
「おう。つーかそれ言うならお前だって、俺がお前の舐めた後でも普通にしてんだろ」

 今回はナマエがライムのものを舐めたが、普段はその逆が多い。どころか、むしろセックスをすればほぼ毎回、ライムはナマエの秘部を舐め回すし、なんなら潮を飲むことだってある。自らそんなことをしている人間が、フェラごときで今さら気にするわけもないだろうと、そういう事らしい。
 とはいえこうもはっきり言われてしまうと、少し恥ずかしいのだが。

「それは、そうだけど…でも、」
「じゃあいいだろ」
「んむ、っ」

 それでもまだ続けようとしていたナマエを遮り、ライムは互いを隔てていた手を無理やり外すと、ようやくとばかりにやわい唇に噛み付く。
 差し込んだ舌先で、ナマエの舌の上にわずかに残っていた精液を掬い、にゅくりと擦りつけ合う。──途端、ライムは少し慌てたように唇を離した。

「…まっじぃ……」
「だから言ったのに…」

 ひどく顔を歪めるライムに、ナマエは呆れながらシャツの袖で口元を拭ってやる。

「お前、よくこんなん飲んだな…」
「うん…」

 確かに美味しいものではないが、不思議と飲み込むことに抵抗はなかった。それどころか──この苦みと青臭さが、ナマエの愛撫にライムが快楽を得た証だと思えば、むしろ吐き出してしまうのはもったいないとさえ思ったのだ。
 さすがにそんなこと、恥ずかしくて言えるわけもないけど。

「…水、取ってほしい」

 ナマエは誤魔化すようにサイドテーブルに置いていたボトルを指差す。ライムは「ん、」と返事をしながら、すぐにボトルを手に取った。
 ありがとう、とお礼と共にそれを受け取ろうとする。──けれど直前で、ライムは固く閉まっていた蓋をばきりと開けると、そのまま中身を一気に呷ったのだ。
 突然のことに「え、」と困惑に声を漏らすとナマエを置いていくように、ライムはまだ中身の残るボトルを乱暴に投げ捨てると、首を傾け、薄く開く唇へ再び噛み付く。途端、こぷりとナマエの口内になにかが流れ込んでくる。
 水を飲まされているのだと気付いたのは、喉を通る冷たさに身が震えたときだった。

「ん、ぅ…っ」
「ん…、」

 流し込まれた水を、こくこくと喉を鳴らしナマエは必死に飲んでいく。
 口端からわずかに溢しながらもすべて飲み切れば、最後、まるでよく出来たと褒めるようにライムの舌がナマエの上顎を撫でながら、ゆるりと出て行った。

「ふ、ぁ…、♡」
「ん…もう苦ェのなくなったな」

 わざわざ口移しでなくとも、と思いつつ。すっかり綺麗になったことに満足そうに笑い、ちゅっちゅっと軽く音を立てながら口付けを重ねてくるライムが、どうにも可愛らしいものだから。ナマエは、もうなんでもいいかと思った。
 覆い被さってくるライムの首に腕を回し、隙間もなくなるほど肌を重ね合わせる。

「んぅ…ん、はぁ…っ♡」

 ライムはキスの合間に、すっかり汗でしわくちゃになったシャツを脱がしてやり、ナマエの身からすべてを取り払う。汗の滲む背の骨を辿るように両手を滑り下ろしていき、辿り着いた腰を掴み持ち上げると、先端を秘部にあてがった。
 わずかに残る白濁と唾液とが混ざった粘液が、濡れた秘部と触れ合い、ぷちゅりといやらしい音を立てる。小さく響いたその音に誘われるに、ライムはゆっくりとナマエの腰を落としていく。

「は、ッあ…んぁあ、あ…♡♡」
「ん…あ゙、っは……」

 隘路を埋めるように押し進んでいく陰茎はすぐに最奥へと辿り着く。自重も相まり深く突き刺さる熱の先端に、二回の絶頂で下り、やわく口を開いた子宮が嬉々として口付けている。
 快楽に痺れ痙攣する腹の奥で響く、くぽっと呑み込む音。上も下も境なく、すべてがぐちゃぐちゃに混ざり合ってしまうようだった。

「ふ、ぁッ、♡は、っぁ、あん…ッ!♡」

 もう我慢することもできないようで。ナマエの唇からは、あられもない声が唾液と共にみっともなくこぼれ落ちていく。

「んあ、あっ♡あ…ぁあ…♡♡」
「ん…ナマエ、舌出せ」
「っ、あ…?あ…、んむ、んん…♡」

 言えば、すっかり快楽に溺れるナマエは疑うことなく舌を小さく差し出してくる。ライムはそれをちゅるりと吸い上げると、絡めながら自身の口内へと誘い込んだ。
 粘つく唾液を纏わせ、ねろねろと舌を絡める。苦みもすっかりなくなったおかげで、口内に満ちるのはナマエ自身の甘さだけだった。

「ふ、っ♡あ、ん…んぅ♡♡」

 キスをしながら、ライムは腰を支えていた右手を滑らせ、胸へと触れる。そうしてやわらかく揺れる丘の先端で硬く芯を持つ突起を、きゅむっと摘まみ上げた。

「ん、ッ!♡ん゙ん、う、っ♡」

 口内にくぐもった声が響く。苦しげなそれに、けれど離れることはせず。震え縮こまる舌を根元から無理やり吸い上げ、絡ませ。その度連動させるように、突起をきゅっきゅと軽く摘まんだり、くりくりと押し潰したりする。

「っふ、ぅ…ッあ、あん、ん…!♡」

 苦しさと刺激に耐え切れず、ナマエはライムの胸を叩く。そうすればようやく唇は離されるものの、胸を弄る手は止まらない。

「ひ、ぁんん…あ、あ…!♡」
「…ここ、舐めてる間も触って欲しそうに勃ってるから、いつ触ってやろうかってずっと思ってたわ」 
「あっ、ぅ♡そ、んなこと…、っ」
「いや、してたぜ?健気に震えてよ」
「あ、ん…っ!♡」

 ぴんっと先端を乱暴に弾かれ、ナマエは上半身を大きく反らしてしまう。

「脚だって、もどかしそうに擦り合わせてよォ…正直見てるだけでやばかったんだよなァ……」
「っも、なに言って…ッひ、ぁ!♡あ、んあぁ♡」

 上がる声に合わせて、ライムは止めていた腰をゆっくり動かし始める。とちゅとちゅ、奥を突きながら、胸の突起もくりくりと根元から摘まみ上げ、先端を爪先で引っかき弾く。

「やっ、一緒、駄目だってぇ…ッ」
「気持ちいいんだろから、良いだろ」
「だからやだっ、ひ、あ゙、ああぁ…!♡」

 ライムとは体格差もあるせいで、膝に抱き上げられてもなお、ライムの方がやや目線が上になる。そのためナマエがいくら膝に力を入れ刺激から逃げようとしても、抱き締め覆い被さられてしまえば、そんな抵抗は意味をなさなくなるのだ。
 くわえて、すっかり力の入らなくなった脚を持ち上げられ、あげく腰に絡めるように動かされてしまえば、動きも自重も、なにもかもすべてライムに任せることになり。ナマエの身体は逃げ場を失ってしまう。

「ああ゙っあ、♡──ッあ、あんっ、ああぁ…♡♡」

 だからナマエにできることは、目の前の分厚い身体に必死にしがみ付くことだけ。今、まさに己の身を追い詰めているのは、他でもないその男だというのに。

「ひ、ぅ♡ぁ、あ、ああ、ん、あ゙ッ♡」
「は…、ん…っ」

 突き上げる度、堪らないとでもいうように汗の滲む額が肩口に擦り付けられる。耳元ではすっかり抑えることのできなくなった声が響き、肌と鼓膜を撫でるくすぐったさに、ライムの背筋にも、ぞくぞくと雷が走り抜けていく。
 その衝動に抗うことなく、ライムは片手でナマエの尻たぶを掴み持ち上げると、子宮口に先端を押し付けるように短く早く、腰を打ち付け始める。気遣いもない、ただ男が欲を吐き出すためだけの、自分勝手な動き。ナマエは擦り付けていた顔をばっと上げ、大きく背を、喉を仰け反らせ、ライムの身体にしがみ付く。

「やっ、あ゙ああっ!♡ぃ、く、いぐっ、い、ぁ、あ!♡」
「ん、あ゙…俺も出る…ッ」
「あ、あ゙あ、ぁ、〜〜〜っ!♡♡」

 ライムは必死にしがみ付いてくる身体を抱え直すと、あわいの肉が恥骨にふにりと潰れるくらいに、ぐっと下半身を密着させる。そうして今度は下腹同士を擦り合わせるよう、ぐりぐりと動かす。ライムの下生えが、繋がるその上で勃ち上がる敏感な突起に擦れた。

「っ、──!♡♡」

 まろい胸で硬くなる飾り、あわいの間から顔を覗かせその身を健気に震えさせる蕾。蜜をこぼし顫動するやわい肉壁。物欲しげに口を開く腹の奥。──女の身体の敏感な場所をすべて刺激され、ナマエは青い瞳を、涙を飛ばし見開いた。
 細い喉がきゅうと仰け反る。瞬間、互いの間で、じゅぶっとひどく濡れた音が響く。

「や、あ…っ♡あ、でちゃっ、あ、あ゙っ♡」
「おー…すげ出てんなァ…」
「も、なんれっ、止まんなぃ…ッ♡♡」

 深く達したせいか甘イキが止まらないようで。しゃぶる肉壁に扱かれた陰茎が重たい精液を奥底に吐き出す度、繋がるそこから、ぷしっぷしゃっと断続的に潮が噴き出し。ライムの下生えを温かく濡らしていく。

「あ゙…ッ♡らめ、あ、またい、い゙く、っああ、あ゙、〜〜…っ!♡♡」

 腹の奥に注がれていく熱に、丸まった足先が痙攣と共に引き攣り、ライムの腰を軽く叩いている。
 ナマエはもう、自分がいつ達しているのか分かっていないようだった。

「は、あ゙ッ♡あ、ぁ…♡」
「あ゙ー…っはは、俺もすげぇ出た…」

 やわく温かな中に名残惜しさを感じつつ、ライムはナマエの身体を持ち上げる。抜け出た陰茎には、蜜と精液が混じるひどく粘度の高い液が、べっとりと纏わりついていて。それは、ぬろ、重たい糸を作りながら、切れることなく互いの下腹部を繋いでいた。
 あまりに淫猥なその光景に、ライムの頭がくらりと揺れる。再び熱くなる鼻頭に気付き、誤魔化すように小さく啜り上げた。

「はっ…なあ、また今度、んっ…やってくれよ」

 ──セックスでは、とにかくナマエを可愛がりたい。それはずっと変わらない。
 けれど今回、ナマエが自らライムの要望を聴こうとしてくれたこと。そしてナマエ自身も同じように、ライムになにかをしてあげたいと思っていてくれたこと。その事実が、ライムはとても嬉しかったのだ。
 だから、びしょ濡れの下半身も気にせず密着し、甘えるように唇を重ねながら次をねだった。
 余韻でぼんやりとしているナマエは、ライムがなんのことを言っているのか、理解するのに一瞬遅れたものの、ゆるりと差し込まれ絡まる舌に「ああフェラのことか」と思い至る。
 仮に、「また今度」の指す言葉が、フェラでなく「おねだりを聴いてほしい」だけだとしても。ライムがしたいと言うのなら、もうなんでも、どんなことでも聴いてあげたいと思った。 

「ん、ぅ…ふ、あっ♡ら、いむが、したいなら…っ」
「はは…じゃあ約束な」
「んぅ、う…♡」

 ──次はなにをしてもらおうか。それでいて、どれだけの愛を返そうか。
 甘く蕩けた返答に、ライムは堪らないとばかりに笑った。




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