「まっ、ホンゴウ待って…!」

 部屋に響いた悲痛な声に、ホンゴウは手の動きをぴたりと止めた。

「…なんだよ」

 荒い呼吸を整えることもせず、半ば睨むかのような鋭さで声の主を見る。その強さにナマエはわずかに肩を振るわせながら、背後から自身の腰を掴むホンゴウの手を止めるように掴んだ。

「っ今日、駄目な日、だから…」

 腰を掴む手がぴくりと反応する。快楽に頭が回っていないのか、ホンゴウは虚な目でぼんやりナマエを見た後「あ゙…?」と押し殺したような低い声を絞り出した。

「ぁんでだよ…ここで止めるとか無理だぞ……」

 "駄目"という単語は聞き取れたものの、"駄目な日"と制止した意までは気が回っていないようで。餌を目の前にした動物のように呼吸を荒くしながら、それでも言いつけられた"待て"を守るように、ホンゴウはナマエへと覆い被さった。

「ぜってぇ挿れる……ナマエの中、挿入りてぇ……」

 甘い熱を孕んだ、吐息混じりの低い声が耳元で囁く。口調はまるで我がままを言う子供のようだというのに、腹につきそうなほど硬く勃ち上がった屹立は、早く中に挿れさせろとばかりにナマエの腰へ押し付けられていた。

「あ、ちがっ、ご、ごむ…しないと、ッ♡」
「ごむ…?」
「っ、だから…きょう危険、日……、」

 押し付けられた屹立が背後から尻たぶの間を滑り、先端がぬかるむ秘部の入り口をくぷくぷと浅く出入りし始める。そのわずかな快感に小さく身体を跳ねさせならも、ナマエは必死に静止の言葉を紡ぐ。
 危険日、ゴム、というナマエの訴えに、彼の医者としての理性が働いたようで。ホンゴウの動きがぴたりと止まり。同時に、ぐっと奥歯を噛み締める音がナマエの耳元で聞こえた。
 ホンゴウは細く長く息を吐き出すと、震える手をベッドサイドの棚へと伸ばし。わずかに震える手で引き出しの中の避妊具を取り出そうとした。

「……あ?」

 けれど指先に触れるものは何もなく。まさかと思い気怠げに上体を起こし中を覗き込めば、予想通りそこはもぬけの殻で。必死に中身を探し空振るホンゴウの指先をあざ笑っているかのようだった。
 誰だ、と一瞬でも他責に走った思考回路はすぐに捨てた。そもそもこの船には今こうしてホンゴウと身体を重ねているナマエを除き、船員は野郎しかいない。そしてそんな野郎どもは上陸すれば夜の女の元へ向かうし、当たり前だがその際の避妊具諸々なんかを船で用意するわけはない。つまりこれを自費で用意し船内で使用する人物などというのは、ホンゴウを除いて他にいるはずもないのだ。ゆえに無くなっているというのは、ホンゴウがその管理を怠ったということに他ならないわけで。
 最悪だ。まさかこんな時にという焦りと、やってしまったという妙な冷静さが交互にホンゴウを襲う。医務室での備品管理を徹底している彼には珍しい失態だった。
 ただ、これに関しては理由があった。今回ナマエとホンゴウは、約二ヶ月ぶりに身体を重ねることとなった。というのも、ここのところ立て続けに戦闘が起きたり、船員がどこぞで風邪もらったらしく他に感染させないためにもホンゴウが一人で看病に当たったり。ようやく上陸でき時間が作れたと思ったら、今度はナマエの生理が重なり、結果キスだけで終わらざるを得なくなったりと。色々とタイミングが悪く、触れられたとしても中々挿入まで至らなかったために、結果としてその残数を把握できていなかったのだ。
 そうして中途半端に熱を高めるだけの日々を過ごし、ついに我慢のできなくなったホンゴウは夕食後、烏の行水でシャワーを浴びナマエを自室へと呼び出すと、雪崩れ込むようにベッドに押し倒し。半ば強引に行為へと及んだ。
 ホンゴウの自室は、船医という立場もあり医務室から扉を隔てたすぐ隣にある。夜更けといえど誰かが来る可能性もある場所で事に及ぶなど普段であれば全力で拒否するのだが、ナマエもこの二ヶ月、満足に触れ合えなかったことにもどかしさを感じていたのは事実で。まるで捕食せんばかりの勢いで触れてくるホンゴウに高揚感を覚え。場所や状況などすべて頭から消え去り、求められるまま身を委ねていた。
 そうして散々熱を交換し合い、ようやくその心地よい腹の中で重なり合えるという、まさにその瞬間。ナマエの言葉で棚の中を見たホンゴウは、最も重要な避妊具の補充を失念していたことに気が付いたのだ。

「ほ、んごう…?」

 袋を破る音が聞こえないことを不思議に思ったのだろう。ナマエが振り向きホンゴウを見上げる。
 自身の名を呼ぶ唇は艶を帯び、上気する頬は食べてしまいたくなるほど可愛らしい。涙の溜まる青い瞳に見つめられ、崩れそうになる理性をホンゴウは既の所で止まらせる。

「悪ぃナマエ…ゴム、無くなってた…」

 絞り出した声は、なんとも情けないものだった。無いものはいくら悔もうとも無い。今さら過去の自分の失態を悔いても仕方がないが、まさかこんな盛り上がってるときにそうなるとは。
 正直なところ、ここまで長期間焦らされた以上おそらく制止がなければ生でも挿入していただろうという最低な自信が、ホンゴウにはあった。ナマエは普段避妊具を着けていようと徹底して薬を飲んでいたし、たまに勢いのまま、例えば酒に飲まれ生で行為に及んでしまったとしても、ほとんどが妊娠の可能性が低い期間に限られていたからだ。
 むしろそれ以外のときに生でしようものなら、ホンゴウの頬には立派なもみじどころか、痛々しい殴打痕ができていたことだろう。船上で予期せぬ状況は起こさないようにする。ナマエはそれぐらい徹底している女だった。
 だからこそ、いくらこのセックスが二ヶ月ぶりだとしても、危険日な以上生で挿入することをナマエは許さないだろう。逆に考えれば、危険日でも触れることを許してくれたということなので、それはそれでホンゴウも嬉しいのだが。
 そもそもホンゴウ自身も、痛み止めとして渡す薬の管理の関係もあり、ナマエのおおよその生理周期は把握していて。ゆえに今日が危険日だということも頭の片隅には入っていたはずなのだ。
 けれど実際はそれを忘れるぐらい余裕が無くなり、あまつさえ一番重要な避妊具の補充さえ忘れてしまう始末。自分で自分の首を絞めている状況に、ホンゴウはいっそ情けなささえ覚えていた。
 壁にかけたカレンダーを横目で見やる。予定ではあと三日程度で島に着く。滞在は一週間。今日が危険日だということは、それもあと数日程度でそれも終わるだろう。そして今回の滞在は互いに船番ではない。そこであれば島の宿なりなんなりで、それこそ一日中こもってセックスをすることだって可能だ。
 ならば今日は、自らの失態のせいとはいえものすごく不本意ではあるが、これまでと同じように触れ合うだけで済ませる他ないのだろう。もしくは舌でしてもらうか。いやでもそれだと余計にもどかしくなりそうだが。
 久方ぶりの熱に浮かされ、脳内の選択肢は油断すればすぐに挿入の二文字に走りそうで。我ながら最低な思考回路に、ホンゴウは小さく舌を打つ。
 そんな様子に、ナマエも彼の苦悩を感じ取ったのだろう。いっそ痛そうとすら思えるぐらいに勃ち上がる屹立へ一瞬視線を向けると、意を決したように、小さな声で男の名前を呼んだ。

「……ホンゴウ、」
「あ…?」
「向き、変えてもいい…?」
「ああ…」

 ナマエはふらふらの上体を起こし後ろを振り向くと、力の抜けた腕をホンゴウの首へするりと回す。そしてそのまま強く引き寄せ再びその身をベッドへ、今度はホンゴウと共に倒れ込んだ。

「う、わっ、!」

 ホンゴウは咄嗟にナマエの背中に手を回し、ベッドに身体を打ち付けぬよう、そして自身の身体で潰してしまわぬよう胸元に抱え込む。おかげでナマエはほとんど衝撃もなくベッドに寝転ぶことになったが、代わりに密着したおかげで、押し付けるようになった胸が間で柔らかく潰れている。
 途端にホンゴウの鼻をくすぐる汗の香りに、薄く混ざる甘い匂い。熱のこもった吐息に、白く柔く、湿った肌の感触。それらすべてが一瞬で脳内を駆け巡り、興奮を最高潮にまで高めていく。

「っ、ナマエ、急にどうした…」

 ほんの少しではあるが落ち着きかけていた思考回路が再び欲望に支配されそうになるも、ホンゴウはなんとか踏ん張り。腹の底から熱を追い出すように息をひとつ吐き出すと、ナマエに問いかけた。

「…ごむ、無いんでしょ、」
「ああ…悪い、俺が管理できてなくて…」
「ん…いいの………無いなら……、」

 ホンゴウの問いにナマエは少し逡巡した後、意を決したように腕に力を込め。けれど蚊の鳴くような小さな声で囁いた。

「いれるのは、駄目、だけど…ここ、ホンゴウので……擦って、ほしい…っ」

 言うと同時にナマエは脚をゆるりと持ち上げ。ホンゴウの腰に絡めると、わずかに力を込めその身体を引き寄せた。ぬかるむ秘部と屹立の裏筋が、卑猥な音と共に触れ合う。
 いくら脳が蕩けていようと、危険日に避妊具の無いセックスはしないし、させない。ホンゴウとナマエの共通認識であり、絶対のルールでもあった。だから本当であれば、粘膜同士がすれ合うこの行為でさえも避けなければいけないことだ。
 けれど二ヶ月、その姿を見ていながら満足に触れることが叶わなかった中でこうしてようやく繋がれたこの昂ぶりを、何もせずに鎮めることは、どうしてもできなかった。
 それならばせめて、可能な限りそれに近い触れ合いをしたい。ナマエもそう思っての行動と言葉だったのだろう。
 普段からは考えられないようなその言葉を、恥ずかしさよりも快感を追いたいと欲望に負け、あのナマエが口にしたことが、あれほど必死に押さえていたホンゴウの理性のタガをあっさりと外してしまった。

「おっ、まえなァ…!」

 ぐわりと脳内が熱くなり、ホンゴウのこめかみに青筋が立つ。他でもないナマエ本人から、この先の許可が出たのだ。もはや止める理由などどこにもなかった。
 ホンゴウは腰に絡んだ柔らかな脚を振り解き、代わりに膝裏に手を添えると、躊躇することなく大きく開かせた。性急な行動にナマエが驚く暇も与えないうちに、露わになった秘部に屹立を押し付ける。先端を抉り入れないようにと注意しながら、雁首で敏感な突起の裏筋をずるるっ!と擦り上げた。

「あ゛ぁあっ!♡」

 悲鳴のような嬌声が響き、ナマエが背を仰け反らせる。普段であればそんなナマエの様子にホンゴウは多少なりとも気遣うような素振りを見せるのだが、今日はそれができないようで。中に挿れない分、欲をぶつけるかのように腰を動かす。

「や゛っ、あ!ほんご、ぅっああ♡は、あっ!♡」
「わり…っ止まんねっ、は、あ゙、っ」
「い゙、っゔぅ、ぁ、あ゙ああ、〜〜ッ!♡」
「っあ゙ー、くっそ……んでゴムねえときにそういうこと言うんだよお前は…ッ!」

 そういうことと言われても。ナマエにとって互いを満たすにはこれが最善だと本気で思ったから言っただけで、そこに他意はなかった。ただ今の彼女には、我慢に我慢を重ねたホンゴウに、その一言がどれほどダメージを与えるものなのかが想像できていなかっただけで。
 時折先端を埋めながらも、寸前のところで中には挿れず。屹立全体で入り口と敏感な突起を擦り上げていく。そうして溢れた蜜と先走りがぐちぐちと絡まる音は、徐々に大きく、重たいものになっていく。
 痛みすらわずかに感じるその乱暴な動きが、焦らされ続けた今はどうしようもないほど気持ちよく。久しぶりということも相まってか、互いの身体はすぐに絶頂へと向かう。

「はっあ゛♡あっ、ホンゴウ、っも、だめ、ッ♡」
「んあ゙…俺も、もっ、」
「あ゛、あ、あぁぁっあ、──ッ!♡♡」
「っ、う、あ゛…はぁ…、っ♡」

 ホンゴウは腰を大きく引くと、すっかり勃ち上がった突起を捏ねるように、雁首から根元に掛けてを屹立全体で押し潰した。その瞬間秘部からは潮が噴き出し。ナマエは大きく身体を震わせながら達してしまう。
 きゅうきゅうと蠢く秘部の入り口の動きがまるで口でしているときのそれに似ていて。裏筋を舐められたときの感覚に、ホンゴウもつられるように、ナマエの腹の上へと精液を吐き出した。

「は…わりぃ、ちょっと無理させた…身体、痛くねぇか」
「ぁ、ん…だいじょ、ぶ……、っ♡」

 ホンゴウは膝裏を掴んでいた手を離すと、ナマエの額に流れる汗を拭ってやる。ナマエは荒くなった呼吸を整えながら、腹に飛ばされた精液をぼんやり眺めた。
 おそらく中で達していないことが原因なのだろう。腹の中、とくに下腹部の辺りに妙なもどかしさのような、寂しさのようなものがあった。けれど中に迎え入れることは絶対にできない以上、どうしようもないわけで。ナマエはその熱を誤魔化すように瞳を閉じると、頭を撫でるホンゴウの手に擦り寄り身を委ねる。

「……」

 そんなナマエの様子をじっと見下ろしていたホンゴウは、不意に頭を撫でていた手をゆっくりと下ろし。投げ出された両脚の間にするりと忍ばせると、余韻にわずかにひくつく秘部へ、何も言わずに指を二本突き挿れた。

「あ゙…っ!?♡」

 油断してた身体は指を締め付けながらも、嬉々として侵入者を迎え入れる。
 何が起きたか理解できてないのだろう。信じられないといった顔で目を見開くナマエをよそに、ホンゴウは指を動かし始めた。

「や、ホンゴウッ、なんでぇ、ッ♡」
「お前中でいけてないし。そのままじゃ中途半端で辛いだろ」

 一度達したことで少し余裕を取り戻したのだろう。もっともらしい気遣いの言葉を吐きつつ、ホンゴウはナマエの意見を聞くことなく。的確に彼女の感じる場所を刺激し追い詰めていく。
 その顔がどこか楽しそうで。先ほど不意打ちで翻弄された仕返しだといわんばかりに口角が上がっていた。

「あ、あッ!や゙、やだっ、そこやらっあぁあ…ッ!♡」

 ホンゴウはナマエの右胸に顔を寄せると、中心で勃ち上がる突起を咥え込む。硬いそこを解すように軽く噛んだり、時折犬歯を立てゆるく吸い上げ、伸ばしたり、絶え間なく刺激を与えていく。その度蠢く中はびくびくと痙攣し、シーツに水溜まりができるほどの蜜を奥底からこぼしていた。

「ひっ、い゙───ッ!♡♡」

 ばたつく脚を押さえ付け、手の角度をわずかに持ち上げ。腹側のざらついた場所に指先を押し当てながら小刻みに振動させる。それだけで堪らないようで。ナマエは喉をさらけだしながら再びその身を大きく震わせた。
 噴き出した潮に濡れる指を引き抜きながら、ホンゴウは上体を倒し、虚ろな瞳で見上げるナマエと唇を重ねる。舌を絡ませ粘つく唾液を交換し、細い喉が上下する度、褒めるように舌を根元から吸い上げてやる。
 その小さな口内を散々楽しんだ後、ようやく唇を離したホンゴウは指先に絡みつく体液を舐めながら、ナマエをじっと見下ろしていた。

「ほん、ご…?」

 どうしたんだといった様子でナマエはホンゴウを見やる。先ほどの、中途半端で辛いという言葉に多少の本心が含まれているのなら、ナマエが達した時点で行為は終わりのはずだ。
 けれどどうしてだろう。交わったホンゴウの瞳は、相変わらず熱を孕んでいて。ナマエの背筋を言い知れぬ何かが這い上がっていく。

「足んねぇ…」

 小さく、唸るような声だった。ほんの少しくぐもった低い声でそう呟いたホンゴウは、有無を言わさずナマエの腕を引き起き上がらせ、胡坐をかいた自身の膝の上に向かい合わせで座らせた。
 腰を抱き寄せ小さな身体が逃げないようにわずかに上体を倒すと、下半身がぐちりと音を立てて密着する。触れ合うそこに、ナマエの肩が小さく跳ねた。

「あ、っ♡も、無理だよぉ…ッ」

 羞恥からか、それともこれ以上続けられることへのもどかしさからか。大きな瞳に比例するような大粒の涙がこぼれる。
 ホンゴウはそれを舌でべろりと舐め取りながら、赤ん坊をあやすように眦へと口付けた。

「無理じゃねぇだろ…挿れられねぇ分もっと触らせてくれ……」

 まるで子供がおねだりでもするように甘えた声だった。けれどそうしておいて結局ナマエの意見を聞く気はないらしく。ホンゴウは腰を動かし、密着したそこを再び擦り合わせ始める。

「やっ、あ゙っ♡ああぁ、っ♡♡」

 わざとらしく音を立てるように擦り合わせているせいで、そこがどれだけ濡れているのか自覚せざるを得ないのだろう。しかも今回は膝の上に乗せられているおかげで乱れるホンゴウの吐息も耳をくすぐり。それに興奮してまた奥から蜜が溢れてしまう。悪循環だ。

「は、あ゙っ♡やら、ぁっ♡や、やらぁっ♡」

 これ以上ないほど乱れているというのに、未だかぶりを振り拒絶の言葉を吐くナマエに、ホンゴウはわずかに唇を尖らせる。何をそこまで意固地になるのか。ここまできたら素直に身を委ねればいいというのに。
 苛立ちとまではいかないまでも、素直にならないナマエへの仕返しのような気持ちで、ホンゴウは擦り合わせるそこの少し上で震える突起を根元から強めに摘まみ上げた。

「っ、!?───ッ!♡」

 掠れた声と共に秘部から噴き出した潮がホンゴウの腹筋へかかり、伝い落ちて下生えを濡らしていく。余韻に丸まった足先は何度もシーツを蹴り、ナマエにはもはや身体を支える力も残っていなかった。

「…なんで、そんな嫌って言うんだよ」

 すっかり脱力するナマエの身体を支えながらホンゴウは尋ねる。その間も腰はゆるゆると動いていて。くぷくぷと溢れ続ける蜜と潮を小さく絡めている。

「あっ…あ、んぁ……ッ♡」
「なあ、ナマエ」

 ホンゴウの問いかけに鼻を啜りながら、ナマエは嬌声混じりに「だっ、だってぇ…っ」と言葉を紡ぐ。

「い、ってるのに、なか、ずっと…さっ、寂しく、て、」
「…は、」
「ホンゴウの、っお、奥に、欲しくなっちゃうからぁ…ッ」

 涙に混じりの訴えの最後は、「ホンゴウの馬鹿あぁ…」という言葉にかき消された。
 足りない。足りないのだ。いくら触れられどうしようもないほどの快感を与えられようとも、ナマエの身体は疼くばかりで。
 熱く硬く、苦しいほどの圧迫感を与えてくれるもので中を満たされたい。壁を抉り奥を突き上げ、腹の奥底へと注がれないと、もはやナマエは満足などできなくなっていた。
 ぴきっ、と。ホンゴウのこめかみに再び青筋が立つ。確かに先ほど、中で達せなかった分中途半端で辛いだろうとは言ったが、あれはからかいのような、彼女の突飛な行動に翻弄された仕返しのような意も混ざっていたのだ。
 けれど彼女は今、それを肯定した。もはや触れるだけでは物足りず、その中をホンゴウのもので満たされないと満足ができない。奥まで蹂躙してほしいと、快楽に溺れた働かない頭でそう告げているのだ。まさか一の問い掛けに十以上で返されるとは思わず。ホンゴウはナマエに掌で転がされているような感覚さえ覚えていた。
 落ち着け落ち着けと歯を食いしばらせながらも、今度はどうしても抑えきれなかった欲が、唸るような、うめきのような声となって出てきてしまう。

「し、んじらんねぇまじで……今日は絶対挿れらんねぇんだぞ?お前俺を殺してぇのか?あ゙ぁ……?」
「そ、んなこと言ったってぇ…っんむ、!」

 言えって言ったのはそっちでしょ、と半ば八つ当たりのように泣くナマエの後頭部に手を回すと、ホンゴウは乱暴に唇を重ねる。
 体格差のせいで覆い被さられるようになるナマエは息苦しくとも逃げることは叶わず。すぐに滑り込んできた舌に、抗議の声も嬌声も、丸ごと呑み込まれてしまう。

「ん゙ん、ん、ん、〜〜ッ!♡」

 口付けの間にもホンゴウはナマエの腰を片手で掴み直し、再びそこを擦り合わせ始めた。反動で唇が離れ、だらしなく伸ばされた舌同士を繋いでいた糸が落ちナマエの胸元を汚す。

「ふ、あっ♡や、やだぁ♡ほんご、ほんごぉ、ッ♡」
「は…お前、覚えてろよ…、次はぜってぇ腹ん中パンパンにしてやるからな……ッ」

 なんとも恐ろしい宣言も、今のナマエには一切聞こえておらず。ただ与えられる暴力的な快感に文字通り満たされる未来を想像した胎内が、物欲しげに蠢き。その刺激にさえもナマエは声を上げるしかできなかった。





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