「お願いします」
正座をするナマエに対し床へ額を擦り付け自身の願いを叶えてもらおうとする神永は、およそ前世で暗躍したスパイとは思えないほど情けなく、かつ今生での男としての自負心…今ではプライドといった方が一般的だろう。それらを投げ捨てているように見えた。
昨今ではネットの普及に伴い、個人によるSNSへの登録・発信というものが一般的となり、何処かの誰かが購入や体験したものを同じように感じ、見聞きができる時代となった。現在進行形でプライドをかなぐり捨てている神永自身も例に漏れずそれらを器用に使いこなし生活をしている男であり、連絡ツールとしてはもちろんのこと、情報仕入れや暇つぶしの種として利用をしていた。
そんな中、同僚である甘利が彼へと送った一枚の写真。そこには女性物であろうセーターの画像が貼られており、一言『すごく可愛かったよ』と続いていた。その画像とメッセージを見た瞬間、神永は通販サイトを開き、迷うことなく購入のボタンを押していた。
そしてそれが届いたのが今日の夕方の事。早速開封をした神永は晩御飯の支度をするナマエを呼び出すと、床へ広げたセーターとナマエを前にただ一言「着てください」と告げたのだった。
ついにきたか、とナマエは眉をひそめた。実は彼女自身、このセーターが話題になり始めた頃からその存在を知ってはいたのだ。しかし新しいもの好きですぐに食いつくであろうと思われていた神永が何も言ってこないことから、おそらく興味がないのだろうと結論付けすぐにこの事を頭の片隅へ追いやっていたのだが…。まさか知らなかっただけで、知った途端購入するとは。そして断られるとわかっていて、土下座までしてくるとは。神永のあまりの行動力とその勇気に、ナマエは頭が痛むのを感じた。
「…私は絶対似合わないですよ、こういうの」
とりあえずこのままでは雰囲気的にまずいと頭を上げるよう促し、神永が頭を上げると同時にその目の前へ畳まれていたセーターを広げた。首の後ろでリボンが結ばれ、背中部分は臀部の割れ目が始まる辺りまですっぽり無くなっている。実際に着ている姿をネットで見たことはあり、その時は淡い紫という色もあってかナマエ自身も可愛いと思ったのは事実だ。
しかしそれはモデルやスタイルの良い女性が着ていたからであって、いざ自分が着るとなると話は別のものとなる。あいにく腰はあそこまでくびれていないし、尻も小ぶりではない。胸もブラジャー無しでセーターを持ち上げられるかどうか。視覚的に残念なことになるだろうから諦めろ。そういったニュアンスを込めて神永へと告げれば、一瞬鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした後、勢いよくナマエの肩を掴んできた。
「絶対似合う。ナマエなら似合う。てゆうか俺はナマエが着るものは何でも興奮…似合うって断言する」
「今なんか不穏な言葉が聞こえたんですけど」
「気のせい気のせい。いいから、早く着てきて!」
神永の並々ならぬ雰囲気に押されるがままセーターと共に寝室へと押し込まれたナマエは、着てことが済むのならさっさと終わらせて早く晩御飯の準備をしよう、と半ば諦め半分で服を脱ぎ始めた。
「めっちゃ似合う…えろい……」
目元を抑え感極まった声を出す神永に、彼女として喜べばいいのか嘆けばいいのか、ナマエはわからなかった。ただ言えるのは、思っていたよりもずっと恥ずかしいということだけだ。
背中が無い分、ご丁寧に下腹部がぎりぎり隠れるぐらいまで丈がある。そういえばネットでは、童貞を殺す服とキャッチコピーが付いていたとナマエは頭の片隅で思い出した。童貞でなくても殺傷能力はあるようだが。
「…はあ、もういいですか」
「ま、待って。ちょっと一回後ろ向いて」
要求しつつなにやらポケットを弄り始めた神永に対し、ナマエは「写真撮るなら向きませんから」と言い放つ。その言葉にどうやら図星だったらしく、追い詰められた犯人のようにすっと両手を挙げ何もしない事を示すポーズを取る神永だったが、その目は期待に満ちている。ナマエ自身も頑固なため、言ってしまった手前引けないと仕方なく後ろを向けば、背後から神永が息を呑む音が聞こえた。
「…………」
「…………」
それまで騒がしかったことが嘘のように、室内は一気に静まりかえった。突然神永からの反応がなくなったことにナマエは戸惑いを覚える。やはりあまりの残念さに言葉を失ってしまったのか。
「か、神永さん…?」
「あー…」
「どうし、っ!?」
不安になり振り向こうとした瞬間、重なるように神永の低い声が耳元で響いた。いつの間にこんな間近へと思う間もなく、するりと侵入してくる手にナマエは身体を跳ねさせる、驚いて振り返れば、そこにはまるで獲物を見つけた肉食獣のような瞳の神永がいて。剥き出しになっているナマエの肩に、柔く歯を立てる。
「っ神永、さ、」
「ごめんナマエ、やっぱ無理」
そう言っている間にも神永の手は素早く動き、守るものが一切無いナマエの胸を無遠慮に揉み始める。
「ひ、あっ、やだ、かみながさ、っ」
「だってナマエ、めっちゃ似合うから。…興奮した」
「なに、言って、やあっ!」
ぐにぐにと形を確かめるように揉みしだかれ徐々に固くなり始めた突起が、神永の指先に触れる。ナマエが口を開く瞬間を狙って摘めば、予想通り甘い声が響いた。
「あっ、やだっそこやだ、っひ、う」
「こんなに固くなってんのに?ナマエちゃんは嘘つきだなあ」
「あっあ、それは、かみながさ、が、触るからぁっああ!」
何という殺し文句だろうか。好いた女の、あなたのせいで、なんて言葉は男にとっては直接下半身にくると言っても過言では無いくらいの破壊力を秘めているということに、ナマエは気づいていない。ましてやこんな淫らな方向で言われると、なおさら。
挿れたい。頭を駆け巡る欲望を振り払うように、神永はこのセーターを見た際に浮かんだもう一つの目的を果たそうと、名残惜しげに手を引き抜き、代わりに裾を握ると、思いっきり下へと引っ張った。すると最初はあまり目立っていなかったナマエの胸の形が、引っ張られた布に押し潰されはっきりと分かるようになる。そして触れられたことにより主張し始めた、先端の突起も。
「はは…セーターの上からでも勃ってんのわかんな」
「っ、やだやだっ!」
指摘されて初めて神永の行動の目的が分かり、ナマエは恥ずかしさからそれを視界に入れまいと必死に目をつむる。生地の厚さもあり僅かではあるものの、ナマエのそこはたしかに、もっと触って欲しいとでも言いたげに布を押し上げている。その先端を爪先で軽く擦ったり、強めに弾いたり。まるで玩具で遊ぶかのように神永の手は好き勝手に動き回り、ナマエの身体に快感を生み出す。
「や、あっ、あ、かみながさ、手、離してっ」
「あ〜最高…」
「っひ、うぁ!」
裾を掴んでいた手を離し、先ほどから恥ずかしそうにすり合わせていたナマエの太ももの間へ差し込む。するすると手を登らせたその先にある物へ手をかけようとした時、神永はあることに気がついた。
「…あれ?」
あるはずの物の感触が無く、代わりに熱い液体が神永の指先を濡らしていく。まさか、と期待半分確信半分で、神永は声がうわずらないようにナマエへと問いかける。
「ナマエ、下着は?」
「っ、」
耳を真っ赤にし顔を隠すように俯くナマエの姿に、神永は背中を言い知れぬ何かが這い上がるのを感じた。なんだかんだ言いつつ彼女は神永のお願いには弱く、どんなに恥ずかしい要求でも最後には聞いてくれるのだが、まさか下着まで脱いできてくれるとは。
予想外のおいしい展開ににやけるのを抑えきれず思わず熱い息を吐き出せば、それが耳に触れナマエの肩がぴくりと跳ねる。ゆるりとそこへ手を滑らせ、指先で筋をひと撫でする。
「ほんっと可愛いな、ナマエは」
「っあ、ぅっん!んぁっ、あっあああ!」
誤魔化すように突き入れた二本の指を早急に動かせば、ナマエの中は喜びに震えさらに蜜を溢していく。ぐちゃ、ぐぽっ。聞くに堪えない卑猥な音が大きくなり、それにつられてナマエの締め付けも強くなっていく。
神永は太ももを伝いぽたぽたと落ちていく蜜を親指で拭うと、女の体の中で一番敏感であろう突起を強く押しつぶした。その瞬間ナマエの視界は真っ白になり、次いで火花が散ったようにいくつもの光が目の前を覆う。
「っあ、やっあ、ああ…っ!」
中が激しく収縮し神永の指をより一層締め付ける。力なく崩れ落ちるナマエを抱き上げ、神永はソファへと腰を下ろした。
膝の上へ乗せられたナマエは呼吸を落ち着けようと必死に息を吸い込むが、熱を持ち硬くなった神永のものが余韻でひくつく入り口へと擦り付けられ、再び甘い声が引きずり出されてしまう。時折狙ったように先端が突起を掠め、ナマエの身体が大きく跳ねる。
「あ、う…」
「ナマエだってさ、本当は期待してたんだろ…?」
低く甘い声が耳元で響く。ナマエは涙でぼやける視界の中神永を見つめ、そして微かに笑って見せた。
「…どっちだと、思いますか」
薄く開いた唇から紡がれる言葉はひどく熱を帯びている。濡れた瞳が全てを物語っているくせに優位に立ちたがるのは、ナマエの前世の記憶からくるものなのか、それとも彼女本来の気質なのか。どちらにしろ神永にとっては可愛い抵抗で。答える代わりにその唇を塞ぎ舌を絡めれば、嬉しそうにナマエのそれが絡んできた。
「ふ、んぁ、」
「ん…」
「っんん、はっ、ん、かみな、さ、っあああ!」
ちゅう、と音を立てて唇を離した瞬間、油断していたナマエの中へと神永は熱を突き立てた。突然侵入してきた熱にナマエの体は快感に跳ね、神永のものを強く締め付ける。白い喉をさらけだし、だらしなく唾液を零すナマエの姿を可哀想と思うと同時に、こんな姿にさせられるのは自分だけなのだと考えると、神永はひどく高揚した。
突然上り詰めたことにより思考が付いていっていないのだろう、ナマエは目を見開き自身の身体に何が起きたの分からないといった状態だ。そんなナマエの身体を、神永は無遠慮に突き上げていく。
「あ、んあっ、はぁ、ひぅ、あんっ!」
「なあ、さっきの、答えだけっど、」
「は、あっ、あっ、あああっ」
「やっぱお前、期待、してたよ、なっ」
「っあ、い、あ、あぁっ、んああ!」
再び上り詰めた中の搾り取るような動きに神永は一瞬息をつまらせ、つられるように奥へと吐き出した。何度も達したせいで敏感になっているナマエの身体は、その感覚にさえ過敏に反応してしまう。
丸くなった白い背中や、見え隠れする胸の横に唇を落とし痕を残していく。微かに触れる度甘い声を出すものだから、神永は再び下半身が熱くなるのを止められなかった。
「っナマエ、やっぱこっち向いて」
すっかり脱力した体を軽々持ち上げ自身と向かい合うようにすれば、熱に浮かされた瞳が神永のそれとかち合う。切なげに寄せられた眉に、閉じることを忘れた口の端からは唾液がこぼれている。
涙と汗でぐちゃぐちゃになった顔に張り付いた髪がひどく蠱惑的で、神永は湧き上がる加虐的な感情を抑えるように喉を鳴らした。
「裾、持ち上げて」
自身の肩を掴む手を取り、子供にするように導いてやる。既に正常な判断ができなくなっているナマエは、言われるがまま震える手でセーターの裾を持ち上げていく。徐々に現れる白い太ももに神永の視線は釘付けになってしまう。
そうして現れたそこは、快感によって大量の蜜を溢し、少し動くたび先ほど神永が吐き出した白濁とした体液を滴らせ、未だ熱を欲するように震えていた。それを見た瞬間、神永はほとんど無意識のうちにナマエの腰を抱き寄せ、今度はゆっくりと挿入していく。
「ひぅ、あ、あああっ、あ、」
先ほどとは打って変わり奥へ押し付けるような動きに、ナマエの体は喜びに震える。とっくに力が入らなくなっているため、自身の重さも加わり余計に奥への侵入を許してしまう。
「や、あ、まって、かみながしゃ、なん、へんっ」
普段もよりもずっと奥。普通ならば届かないであろう場所まで神永のものが入ってきていることに[FN:名前]は本能的な恐怖を覚え、裾を持つ手に力がこもる。
「や、こわい、やらっ、ひ、ぅ」
「気持ちいってことだから、怖くないから、」
「やら、も、やら、あっあ、ひんっ!」
セーターの胸元を掴み中央に寄せれば、サイドから子ぶりな胸が溢れる。神永は触れて欲しそうに立ち上がる突起に唇を寄せ、舌先で突いたと思ったら、人よりやや尖った犬歯であまく噛んでみる。その痛みでさえ、今のナマエの身体は快感へと変えてしまう。
「っは、ん」
「あ、あ、ひ、うぁっは、ああんっ!」
むき出しの背中を汗が伝い、添えられた神永の手を滑らせる。既に自力で動くことのできないナマエの身体をなんとか持ち上げ、ゆるい抜き差しを繰り返す。
「は、あっ、らめ、あ、あっ、あああ…!」
「っ!」
小刻みに身体を震わせ、それまでとは少し違う様子で達したナマエにどうしたのかと動きを止めた直後、神永の腹に生温かいものがかかる感覚がした。まるで排泄のように溢れるその液体は粘度がなく、水のようにさらさらと流れてセーターや神永の部屋着へと染み込んでいく。
突然自身から溢れたそれに、まさか粗相をしたのかと一気に青くなるナマエとは反対に、それが何か理解している神永は頭の片隅で、糸が切れるような音を聞いた。困惑するナマエを勢いよくソファへと押し倒し、再び腰を動かし始める。
「や、あ!まって、かみながしゃ、や、も、やら、あっ!」
突き上げる度ナマエのそこから透明な液体が溢れ出し、神永の腹を濡らしていく。
気分が盛り上がればとほんのお遊びも交えて購入した代物であったが、まさかこんな反応が見られるとは。いつかさせようと考えていた快楽の果ての証明が突然起きたことに、神永は動揺を隠せずにいた。
乱暴に唇を重ね、粘つく唾液を行き来させる。まともに息ができないのだろう、ナマエは逃げるように唇を離そうとするけれど、許さないとでも言いたげに神永はその後を追いかける。
「んあっんんん、はっ、かみな、あ、ひぅ、ああっ」
「ナマエ、ナマエ…っ」
「ひ、あっあああ、あ…!」
ごつんと鈍い音を立て最奥を突き上げれば、ナマエは再び頂点へと追いやられる。あまりの快感に神永のものを締め付けると、一瞬息を詰め、神永自身も頂点へ上り詰めた。
どくどくと抉じ開けた場所へと熱を注ぎ込み、すべて出し切るように押し付けると、ナマエの身体はびくびくと痙攣をしていた。
「んん、あ…」
名残惜しさを感じつつずるりと引き抜けば、その感覚にもナマエはまた甘い声を出す。栓を無くしたそこからこぷりと溢れる白濁にまた熱が集まりそうになる神永のだったが、ナマエの瞳がすでに閉じている事と、まずは綺麗にしてやらねば後々怒られるという事が頭をよぎり、後ろ髪を引かれる思いで洗面所へと向かった。
「どうだった?」
数日後。同僚の甘利と田崎と共に週末の恒例となっているバーへと飲みに来ていた神永は、全ての事の発端である甘利にそう問いかけられた。直接的な言葉を使わずとも彼が何を言いたいか既に察している神永は、あの日の出来事を頭の中で流し始める。
こんな時前世でスパイとして暗躍をしていてよかったと心底思う。映像として頭に焼き付ける事が出来るおかげで、ナマエの姿を一部始終記憶していられるのだから。
「………」
「………」
「………」
「…神永?」
「すっっっげえよかった…」
長く溜めて感慨深く感想を口にする神永の顔は、至極真面目なものだった。その目には、再び同じことをしたいという熱も込められており、甘利は神永の予想外の満足ぶりに同じように満足げに、それでいて得意げに微笑んだ。
「でしょ?可愛いのにえっちだから、そのギャップがいいよねえ」
「…なんの話だ?」
それまで「またか」といった顔で二人の話を聞いていた田崎も、さすがにここまで絶賛されるとそれが一体何なのか気になるもので。
その疑問に甘利は待ってましたと言わんばかりに携帯を起動し、例の画像を田崎へと見せる。
「このセーターの話。田崎も買ってみたら?」
背中がぱっくりと開いたそのセーターを見るのは初めてで。普段着としては決して使えないであろう奇抜なデザインに驚きつつ、甘利のその口ぶりと神永の言葉から、二人は既にこれを使い所謂そういうことをしたのだと瞬時に悟る。そしてそれを自身の恋人に着せた姿も、容易に想像ができた。
表示されたサイト名と商品の画像をきっちり記憶し、田崎は微かに笑う。
「そうだな…考えておくよ」
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