「福本さん!雪!雪ですよ!」
「…風邪ひくぞ」

 昨晩からしんしんと降り続ける雪は、都心だから積もることはないだろうという大方の予想を裏切り、十二月にしては異例の積雪量となった。
 先日の疲れからか少し遅い起床をしたナマエは、雪が降っていると知るや否や興奮した様子で窓に張り付き、かれこれ20分は外を眺めている。いくら暖房を効かせているとはいえ寝巻の上だけ着た状態で窓際に立っては寒いだろうに、興奮で気にならないのか足をさらけ出したままである。
 全てでないとはいえ記憶はしっかり戻っているはずなのに雪にはしゃぐのは、まだ十四歳という年齢としての本能なのか。こういうところはまだまだ子供なんだなと思った。

「おい、いい加減にしないと本当に風邪ひく、っ」

 さすがにそろそろ終わりにしろ、と。寝起き早々窓に張り付かれ放って置かれたことに若干の苛立ちを覚えつつも、悟られないようにと風邪という尤もらしい理由で窓から引き剥がそうとしたその時、ナマエが突然躊躇なく窓を開け放った。
 驚く間も無く一気に冷気が流れ込む。靴下を履いていても触れる冷たさに鳥肌が立っているのだから、足丸出しのナマエは先ほどと変わらず。寒がるそぶりを見せず背中を丸め、小さな手でせっせと何かを作っている。

「こら、何してるんだ」
「雪だるま作って、っわ!」

 しゃがみこむ身体に腕を回し小さな子供のごとく持ち上げる。驚いたように咄嗟に福本の腕に触れた手はひどく冷たく、真っ赤になって濡れていた。たった数分でこんなになるのかと驚きつつ急いで扉とカーテンを閉めれば、ああ…とナマエの残念そうな声が聞こえる。

「まだ顔ができてないです…」
「後でやればいい。手足も冷えてるから、まずは着替えろ」
「えー…」
「………」
「ひゃっ、」

 珍しく不満げに口を尖らせるナマエの太ももへ、嗜めるように手を這わせる。冷えたそこに突然触れた温度を止めようと慌てて福本の腕を掴むも、かじかんだ手には力が入らず意味なさなかった。
 するする上がっていくそれは柔らかな内ももを辿り、大きな服でかろうじて隠れていた下着のクロッチに触れる。かと思ったら、再びゆっくりと下りていく。核心には触れないものの確実にその気にさせるような動きは、小さな身体の熱を乱暴に呼び起こす。

「風邪をひいたら困るのはお前だぞ。新年を布団の中で迎えたくはないだろ」
「は、はい、っんぅ」

 全身に広がっていく甘い感覚に浮かされながら震える声で返事をすれば、「いい子だ」の言葉と共にこめかみにキスをされる。それにすら期待するように小さく声を漏らすも、熱い手はやはり核心に触れず。それどころかあっさりと身体を離し、着替えを持ってくるとナマエへ背を向けてしまう。

「あっ、福本さ、」

 ほとんど無意識のうちにナマエの手は福本の服を掴んでいた。すると弱い力であったにも関わらず、福本はぴたりと動きを止める。けれど「どうした」とも「なんだ」とも言わず。ただいつもと変わらぬ表情のまま、ナマエを見つめていた。
 その瞳を見てようやく気づく。福本はナマエの言いたいことをとっくに察していて、けれどそれをナマエの口から言葉として言わせる気なのだと。
 自ら強請る恥ずかしさと、けれど快楽が欲しいと叫ぶ身体の熱で疼くそこを隠すように、内ももをすり合わせる。微かに感じる濡れた音と感覚に、頬がより一層熱を帯びた気がした。

「っ、福本さぁん…」

 それでもやはり僅かに残った理性にせき止められ、直接的な言葉は出せなかった。せめてこれで許してほしいと裾を引けば、やれやれとでも言いたげに福本が息を吐く。そしてナマエの額に小さくキスをすると、そのまま小さな身体を軽く抱き上げた。

「もう雪はいいのか?」
「…分かってるくせに」

 不満げに頬を膨らませながらも、福本の首に腕を回しぎゅうっと抱き着く。
 表情と裏腹なその行動に笑みを浮かべながら、まだ温もりの残る寝床へと引き返した。



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