「ナマエ、アンタの携帯で撮ってよ。一番画質いいでしょ」
「いいけど…私あんまり撮らないから、野薔薇やって」
「了解。じゃあこっち寄って」
「はいはい。真希さんも、もっとこっち」
「いや私は…」
「いいから!じゃあ撮るわよー。せーの、」

 釘崎の弾んだ掛け声と共に響くはずだったシャッター音が鳴ることはなく。代わりに着信を知らせるバイブレーションが、彼女の手の中でけたたましく響いた。

「………」
「あ、電話」
「悟からじゃねえか」

 インカメモードから突然切り替わった画面と、空気の読めない相手に数秒固まった釘崎は、表示された名前を確認した途端分かりやすく眉間にしわを寄せた。
 ──この日、ナマエは真希と釘崎の二人と共に、原宿へと来ていた。昨晩女子会と称し釘崎の部屋へ集合した際、せっかく揃っての休みなんだからここに行きたい!と嬉々として彼女が見せてきたSNSに載っていたアイスクリームの店を訪れるためだ。
 なんでもそこは薄く伸ばしたアイスを巻いて薔薇のようにしているらしく、鮮やかなトッピングと見た目に、釘崎はすっかり心を奪われたようで。長い列も苦にならないほど一心にメニューを見つめていた。
 そうしてようやく購入し、食べる前に一度写真を撮ろうと三人肩を寄せ合った、まさにその時。冒頭のように、着信を知らせるバイブレーションが、ナマエの携帯を揺らしたのだ。

「…ちっ!」
「こら野薔薇、舌打ちしない」
「だって、こういう時先生からナマエにかかってくる電話って、大抵呼び出しなんだから。そりゃ舌打ちしたくもなるわよ」
「えぇ…」
「真希さんもそう思うでしょ!?」
「まあな。悟の電話は絶対ナマエ連れていっちまうし」
「真希さんまでそんな…」

 あまりにナチュラルに飛び出した釘崎の舌打ちを嗜めるも、共にいた真希もそれに乗っかる始末。とはいえ二人の言い分はもっともなこともあり、ナマエはただ苦笑いを返すしかできなかった。

「…とりあえず、一旦電話出ますね」

 アイスを釘崎へと預け、あいかわらず震え続ける携帯の応答ボタンを押す。途端に、待っていましたと言わんばかりの声が耳元で響いた。

「はい、もしもし」
『あ、ナマエ〜?僕だよ〜♡』
「名前表示されるので分かってますよ。もう」
『え、冷たいなあ…まあいいや。ナマエさ、今どこにいるの?』
「今ですか?今は野薔薇と真希さんと出かけてて…」
『あーそっか、二人と一緒か』
「昨日の夜急遽決まったんです。……何かありました?」
『いや、何もないよ。ただ、家着いたらナマエいなかったから…どこ行ったのかなって』
「え、もう帰ってきたんですか?早いですね、てっきり夜になるかと…」
『ナマエに会いたくて、終わったら速攻帰ってきた』
「そうですか…ごめんなさい、行くこと連絡してなくて」
『いいよ、そんなの気にしないで。あー…じゃあさ、五時くらいには帰ってこれる?』
「五時ですか…分かりました。それくらいには帰ると思います」
『ん、待ってるね。……あ、来る前にちょっと買ってきてほしいものあるんだけど、いい?』
「分かりました。じゃあリスト送っておいてください」
『了解〜。じゃあまたあとで』

 まさかのタイミングで電話をかけてきた張本人──もとい五条悟は、二日程前から出張で九州へと赴いていた。なんでも準一級術師レベルの呪いが出てしまったらしく、たまたま手が空いた五条へお声がかかったそうだ。
 といってもその"たまたま"は、連日連夜フル稼働していた五条がようやくもぎ取った休みで。本来ならナマエとのんびり過ごす予定だったのだが、上の嫌がらせでそれもできなくなり、結果ナマエは釘崎らと出かけることになったというわけだ。
 そしてその任務が、どうやら先程──正午時過ぎに無事終了したらしく。夜までかかるだろうと思われていた内容をさっさと終え、おそらく共にいたであろう補助監督を放って早々に帰宅したのだろう。
 ところがどっこい、浮かれ気分で帰宅するもそこに愛しのナマエの姿はなく。半ば慌てて、けれどそれを悟られないよう電話をかけたのだ。
 それがちょうど、三人が写真を撮ろうとした、あのタイミングで。決して狙っていたわけではないとはいえあの神がかったタイミングは、さすが五条悟というべきなのだろうか。
 釘崎の舌打ちと真希の言葉も、友人という立場であればなまじ分からなくもないなと思いつつ電話を切ると、「ナマエ電話終わったー?」と釘崎の声に呼ばれる。どうやら食べるのを待っていてくれたようだった。

「ああ…アイスなのにお待たせしてすみません…」
「気にすんな。もう電話はいいのか?」
「はい。先生、さっき出張から帰ってきたみたいで…五時頃に帰れるかって話でした」
「あら、今すぐじゃないのね。珍しい」
「二人と一緒だって言ったからかな。さすがに中断させるのは悪いと思ったみたい」
「悟がぁ?アイツ待つなんてことできたのかよ」

 五条が、ことナマエに関して他者に譲るなどというのはそうそう無いと、少なくとも二人との付き合いが釘崎よりも長い真希はそう思ったらしく。信じられないものを見るような顔でそう言う真希に、「先生もそこまで鬼じゃありませんよ」と、ナマエは苦笑いで返すしかできなかった。
 事実、こうして急遽呼び出された中でも、無意識のうちに五条の元へ向かうことを優先している辺り、結局ナマエも物事の中心は五条だといっているようなものだからだ。
 自身にも五条にも呆れる気持ちを飲み込むようにミントグリーンのロールを食べれば、爽やかな色に反して口の中が異様な甘ったるさに支配される。思わず顔をしかめた真希に、隣にいた釘崎は「あ!」と大きな声を上げる。

「真希さん写真撮ってないのに食べちゃった!」
「また来りゃいいだろ。つーかもう微妙に溶け始めてるわ」
「うわ!私のも溶けてる!野薔薇も早く食べなきゃ!」



 無駄に明るく無駄に高い天井のエントランスを通り過ぎ、最上階の部屋番号を慣れた手つきで押す。しばらくして開いた、これまた無駄に大きな自動ドアをくぐりコンシェルジュに軽く会釈をすると、エレベーターに乗り込んだ。

「えーっと…買ってくるものこれで合ってたよね」

 次々増えていく階数を横目に、ナマエは鞄から取り出した携帯で先ほどまでのやり取りを遡る。買い物リストと称されたメッセージと袋の中身を確認していると、目的地へ到達する音が箱の中に響いた。
 教職員かつ特級術師でもある五条は、その多忙さゆえ外には拠点となる家を借りず、高専の敷地内に居を構えている。しかし出張が多くなる以前は都心部にもいくつか住処を持っており、その中の一つがこの高層マンションだった。
 現在、他のマンションは解約をしてしまったのだが、この一部屋だけはずっと更新をし今でも時折、こうしてナマエ共にふらりと訪れているのだ。というのも、ここは当時高専5年生だった五条が、ナマエを引き取り育てた場所で。二人は家族として共に暮らし、そして仮初でない本物の恋人となった、いわば思い出の場所だったからだ。
 そんな、文字通り"いろいろ"が詰まった部屋を、どうやら五条は手放したくはなかったようで。今では、高専内でなかなか二人きりになることができない中でも、気兼ねなくゆっくりできる場所として重宝していた。

「先生ー、頼まれてたもの買ってきましたよー……先生?」

 てっきり開錠している間に騒がしく玄関へ迎えに来ると思っていた姿は、扉を開けても見えず。くわえて妙に静まり返った室内は夕陽が差し込むだけで、電気すら付いていないようだった。
 珍しい状況に、ナマエに一瞬、妙な緊張感が走る。あの五条に限ってないとは思うが、万が一、億が一でもなにかあったのならば大ごとだ。じゃあその億が一がなにかと聞かれれば、それはそれで返答に困るのだが。
 廊下を小走りで進み、悟さん、とやや大きな声で呼びながら、ナマエは勢いよくリビングの扉を開けた。

「……寝てる」

 しかしそこにいたのは、ナマエの心配を他所に安らかな寝息を立て眠る、五条の姿だった。
 予想と真逆の光景にナマエの身体は一気に脱力してしまう。心配して損したというのではなく、よくよく気配を探れば眠っていると気付けそうなことに、慌てていたとはいえ気付けなかったことに対する、脱力感だ。
 五条に関することになると余裕がなくなるなと、自身に対する呆れにも似た感覚に襲われながら、荷物を置きナマエは今だ眠り続ける五条の傍へ座り込む。近付いてみて分かったが、どうやら今朝方ナマエが干していったベッドシーツを下敷きに寝ているようだった。
 おおかた干してあるのを見て取り込んだものの、ほのかに感じる太陽の香りと温かさに、連日の疲れから敗北してしまったのだろう。ベランダに続く窓がわずかに開いているのと、シーツをくしゃくしゃにして大の字に寝転んでいるのが、なによりの証拠だった。

「先生、起きてください」

 強く肩を揺らすも「ん゙ー…」と唸るのみで目を開く気配は一向にない。疲れているのならば起こさない方がいいというのは分かっているが、せっかく一緒にいられる時間を寝て過ごしてしまったと、後々起きてきた五条が騒ぐのは目に見えている。
 だからこそ安らかに眠っているところ悪いが、起こすという選択肢をナマエは取らざるを得ないのだ。あとは単純に、床で寝るのは彼の大きさ的にも邪魔になるからというのもある。

「…先生ー、起きてってば。先生、五条先生ー……悟さーん」
「………」
「……え、本当に起きないんですか?」

 もともと眠りの浅い五条がここまでされても起きないというのは珍しい。ましてやアイマスクすらせずに寝ているなど、中々ない光景だ。
 普段であれば、誰かが近付こうものなら一瞬で目を覚ますうえに、それがナマエとくれば、起きた瞬間甘えた声と共にべたべたとひっ付いているのだ。それが一切無いとなると、そこまで疲労が溜まっていたのかという心配が生まれてくる。
 しかしそれと同時に、また少し違った感情が、ナマエの中にわずかに芽生えてもいた。
 ──起きないのならば、少しぐらい何かしてもいいのではないか、と。
 以前、寝ていたのはナマエで起こしていたのは五条という、立場が逆なことを除けば今と似たような状況になったことがある。
 その際五条が取った行動は、お察しの通り、素直にナマエを起こすというものではなく。ようやく目を覚ました時には、五条が自身の中にいるという、とんでもない状況だったのだが…閑話休題。それについてはまたの機会に話すとして。
 とにかく、普段から色んな意味で身体を好き勝手にされているのだ。こういう時ぐらい同じこと──いわゆる仕返しをしても、バチは当たらないのではないだろうか。
 といってもさすがに五条のように寝込みを襲い、セックスに持ち込むつもりはない。そもそもそんな度胸はない。さすがにそこまで弄くり回されたら起きるだろうし、なにより後々が怖いからだ。
 かくいうナマエは挿入される瞬間まで起きなかったという、なんとも間抜けな失態を侵したのだが。
 とはいえいたずらをすることに少しも罪悪感が起きないかといえば、常識的にそんなことはない。おそらく五条なら「だってナマエ寝ちゃってたんだもん」などと正当化しそうではあるが、あいにくナマエはそうではないのだ。
 ナマエは崩していた足を正座へと正すと、心の中で「ごめんなさい」と小さく詫びる。眠り姫のような綺麗な寝顔を覗き込み、荒くなりそうな呼吸を必死に抑えながら、ゆっくりと距離を詰め、震える唇を、その柔らかな唇に重ねた。

「ん…」
「っ、」

 わずかなリップ音と共に漏れた吐息に、起こしてしまったのかと少し慌てて唇を離す。けれど五条の瞳が開くことは無く、ほっと胸をなでおろした。ここまでしても起きないということは、どうやら今回はそうとう疲れているらしい。
 ──それならば、もう少ししてもいいかもしれない。
再びむくりと頭をもたげてきた欲望に背中を押され、ナマエは再び顔を近づける。塗っていた口紅がさきほどのキスで移っていて。その妙な艶めかしさに、口内に溢れた唾液をごくりと飲み込んだ。
 ちゅ、ちゅぅ。触れ合う音が静かな部屋に響く。普段好き勝手にされている分、寝ていて意識がない状態とはいえキスをしてもなにも反応がないというのは、少し楽しいかもしれない。相手を自分の好きにできる征服欲というのは、こんな気持ちなのだろうか。

「ん…っふ、んぁ、ん…っ、」

 さすがに止めなければ。そう思うのに、同時に、もうちょっとだけという欲に負けてしまう。
 わずかな隙間を塗って五条の口内へ舌を伸ばし上顎を舐める。温かく柔らかなそこに、ナマエはきゅうっと下腹部を疼かせ、腰が徐々に浮いていくのを感じていた。

「ふ、ぁ…は、ん、ん゙ゔ、っ!?」

 頬を染め瞳を閉じうっそりキスを堪能していると、不意に下腹部に強い刺激を感じ、ナマエは大きな声を上げる。思わず唇を離し刺激の元へ振り向けばそこには、腰を浮かせたナマエの股下を潜るように五条の右腕が差し込まれていて。
 いつの間にかスカートを捲り上げ尻を撫でると、通された手首全体でマッサージをするように秘部をぐにぐにと刺激していた。

「っや、あ、ンァ、は、あ、っ♡」

 先ほどまで必死に絡めていた舌の動きはぴたりと止まり、代わりに甘い声が響く。
 ここまでされてようやくナマエは、五条がとっくに目を覚ましていたのだと気が付いた。
 しかし気が付いた時には、今まで散々暴かれた身体は簡単に熱を持ってしまい。自分でも聞こえる程大きくなったぐちゃぐちゃという音に、羞恥心が増していく。

「あ、ん、せんせ…っ五条先生…!」

 それでもなんとか歯を食いしばると、漏れる甘い声を必死に抑えながら、あっという間にこんな状況に持ち込んでしまった張本人の名前を叫んだ。
 ナマエの声に、わざとらしく閉じられていた瞳がぱちりと開く。白いまつ毛をばさばさ羽ばたかせながら、碧眼が酷く楽しそうに形を変えナマエを見上げていた。

「おはよぉ♡」
「おっ、起きてたなら言ってくださいよ…!」
「だってナマエがこんなに積極的なこと、数ヶ月に一回あるかないかだから…」
「だってじゃな、っあ、は、んぁ♡」

 反論したくとも未だ動き続ける手は止まらず。秘部全体を揉み込み強く圧迫したと思ったら、今度はくすぐるように小刻みに動く。
 次々と溢れてくる蜜で手首までぐっしょり濡れていることも気にしていないのか、クロッチに大きく染みを作るように、五条は手の動きを速めていく。

「ぅあ、あ♡は、あぁ♡」
「本当は帰ってきたときに起きてたんだけどさ、なんとなく起きるタイミング逃しちゃって。そしたらナマエがちゅーなんてしてくれちゃったから…もう少し寝たフリしとこうと思ったんだよね♡」
「や、あ♡もっ、信じられな、っあぁ♡」

 やはり当初の予想通り、ナマエが開錠している間に起きていたらしい。けれど慌てて駆けてくる様子に悪戯心でも湧いたのだろう。狸寝入りをして伺っていたら、同じく悪戯心が湧いたナマエが予想外の行動をしたため、その反応を楽しんでいたのだ。
 あのとき、"少しぐらい"と調子に乗ったことを後悔するけれど、そんなものは今さら言っても仕方のないことで。今のナマエにできるのは、自らを追い詰める快感にただ身を任せるだけだった。

「あっ♡せんせ、だめッ♡いっちゃ、いっちゃうからぁ…!♡」
「うん、いいよ」
「っい、いよじゃな、くて、♡あ、あぅっ♡は、だめっ♡だめだめ、いく♡いっ、あ、ああぁっ!♡♡」

 最後といわんばかりに五条の指先が硬くなった突起を下着越しに摘み、強く圧し潰す。布地のわずかな摩擦と、それまで入口と撫でるだけだった愛撫が直接的なものになったことで、じわじわと溜め込まれていたナマエの快楽はその瞬間一気に弾け飛んだ。

「は、あ♡あ、はぁ、はっ、あ…♡」
「…ナマエ、こっち向いて。ちゅーしよ」
「ん、っう♡ん゙んん、ッ♡♡」

 甘い声を漏らし続ける唇から覗く舌に誘われるように、五条はわずかに首を持ち上げ顔を近づける。そのままナマエの後頭部に左手を回しやや乱暴に引き寄せると、濡れた唇を噛み付くように奪った。
 呼吸が整わぬうちに塞がれたことでナマエは苦しげな声を上げるも、五条は構うことなく。当たり前のように入り込ませた舌で小さな口内を蹂躙していく。

「ふ、んん…」
「っ!、んん、っゔ、♡♡」

 後頭部を撫でていた手をするする滑らせ、余韻からか未だに震え小さく跳ねる腰を押さえつける。裾元からするりと手を差し込み、汗ばむ肌を直に撫でてやれば、それだけでナマエは軽く達し続けているようだった。
 じゅる、ぴちゃ。最後にわざとらしく音を立てて舌を吸い上げながら唇を離すと、ナマエは一気に入り込んだ空気に少しむせながら、なんとか呼吸を整えようと肩で息をする。

「はぁ、は、あ、あ…♡」
「ナマエ、ちょっと足浮かせて…うん、そう。そしたら僕の首に腕回して。ここじゃ身体痛くなっちゃうから、ベッド行こう」
「ん…、」

 さきほどまで出ていた強気はすっかり鳴りを潜め。ナマエの股下から濡れた腕を引き抜いた五条は、問いかけに蕩けた返事をする様子に今すぐ押し倒したい衝動に駆られながらもなんとか堪え、すっかり脱力している身体を抱き上げた。
 まるでコアラの親子のような体勢になりながら寝室へ向かい、わずかに空いていた隙間に足を滑り込ませ扉を開け放つ。
 少し勢いよく蹴り飛ばしてしまったせいか大きな音を立てて壁に当たっていたが、そんなことはどうでもよかった。

「はい、とうちゃーく。シーツないからベッド少し冷たいかもだけど、いい?」
「…せっかく洗ったのに、先生が汚しちゃったんじゃないですか」
「えー?どっちかっていうと汚したのはナマエのえっちな汁…」
「しっ、汁とか言わないで!!」

 ナマエも先ほどよりは落ち着いたのか、五条の軽い口調に普段のように返事をしている。履いていたホワイトのミニタイトスカートが、抱えられたことでめくれあがっているのを気にしていないあたり、まだ幾分か脳内は蕩けているようだが。
 五条はナマエを抱えたままベッドのヘッドボードを背もたれに腰かけると、軽いキスをしながら裾元から手を差し込み、ブラジャーのホックを外してしまう。
 そのまま、ふにふに下乳の柔らかさを堪能し。かと思ったら、ぐにぐに大きく胸を揉みしだき、乳首の先端をこね回し。
 遊んでいるように見えてきっちり性感帯を刺激してくるその手つきに小さく声を漏らしながら、ナマエは慌てて静止の声をかける。

「まっ、あうぅ…せんせ、待って、」
「んー?」
「服っ、服脱がせて…!」
「…ナマエってばだいたーん♡」
「ちがっ…!これ野薔薇と真希さんが選んでくれたやつだからっ、汚したくなくて…!」
「うそうそ、分かってるよ。可愛い服だもんね」

 ナマエの発言に五条は一瞬ぐっと息を呑んだあと、誤魔化すように軽口を叩きながら胸を揉んでいた手を引き抜き、首元から胸元にかけての繊細なレース部分を破かないよう注意しながら脱がせていく。
 早くことを進めたい気持ちはあるようだが、大切なものだと聞いたからだろうか。脱がせた後も放り投げることはせず軽く畳んで丁寧に置いている様子に、強引にことを進めようとする割にはこういうところは優しいんだよなと、何とも悔しい思いになりながら、ナマエは一人胸を高鳴らせる。
 あれよあれよという間にブラジャーが腕から抜かれ、上半身は何も身に纏うものが無くなってしまう。室内の電気は消えているとはいえ、まだ陽は落ちていない。差し込む夕陽に晒されたナマエの身体は、五条にははっきり見えているだろう。
 今さらではあるが羞恥心を感じたナマエは腕を寄せ胸を隠すものの、元々それなりに大きいせいか手の隙間からはみ出てあまり意味はなく。それに本人が気付いていないあたりがまた五条の劣情を煽るのだが、これはこれで眼福なので、あえて言わないでおくことにした。

「ナマエ、腰上げて」

 代わりに柔らかな太ももを撫でながら腰を上げるよう促す。全て脱がすつもりだと察したらしいナマエは、少し躊躇しながらもわずかに腰を上げ膝立ちになった。
 素直に従うナマエに五条は「いいこ」と額に唇を落とし、スカートのファスナーに指先をかける。そのまま上着同様あっさり脱がしてしまうかと思われた。…が、五条は突然その手をぴたりと止め、その大きな目をがっと見開いたまま、開けたファスナーの隙間からわずかに覗く下着を見つめていた。そして何かを確認するように指先で下着の腰元を数度なぞると、勢いよく顔を上げた。

「先生?」
「待って、これ、紐パンじゃない?」
「そうですけど…」
「え、えー…待って…」

 待って、とはおそらく混乱している自分に言い聞かせているのだろう。突然降って沸いた予想外の展開に天を仰いだ五条は、そのままナマエのスカートを、勢いよく下ろしてしまった。
 固まっていたと思ったら突然の奇行。驚くナマエを余所に、まじまじと下着を見つめると、大きな手で細い腰を掴んだ。

「え、なに…」
「こんな…」
「え?」
「こんな……いかにも、"解いてください♡"っていうようなやつ履いて、ここまで来たの…?」
「…そんなつもりではないですけど、普通に履いて来ましたね……」
「……」
「……」
「……えっちすぎない…?」
「なに言ってるんですか…?」

 紐パンといってもアダルトビデオなどで見るような、いかにも!な物では決してない。衣服に支障を来たさないようレースも控えめで、色も黒く、妙な透け感なども無い。日常生活で使える程度のデザインだ。
 しかしそれでも五条には衝撃だったらしく。骨盤の横で慎ましく結ばれたリボンを指先で弄びながら、「あーずるい…」「写真撮りたい…」「いっそこのまま…」などと不穏なことをぶつぶつ呟いている。
 このままでは以前のガーターベルトのようなことになりかねない。これ以上変な状況を作られてたまるものかと、ナマエは慌てて五条に声をかける。

「も、そういうのいいから…早く脱がして、」

 くださいよ、と。最後まで言い切ることができなかったのは、もしやこの台詞の方がまずいんじゃないだろうか、という思考に行き着いたからだった。
 しかしそう思うも、言ってしまったものは今更どうしようもない。とはいえ嫌な予感は拭いきれず。伺うようにちらりと五条を見ると、やや瞳孔が開いたようにも見える瞳で、こちらを見ていた。

「せ、先生…?」
「あー…ごめん、ちょっと意識吹っ飛んでた」
「え、大丈夫ですか。やっぱり疲れてるんじゃ…まだ寝てた方が、」
「いやいや大丈夫。むしろこんなところで止められる方が大変だから」

 やや食い気味に否定すると、言葉の通り痛いくらい張り詰め下着を持ち上げる熱をナマエの太ももにぐいぐいと押し付ける。
 服越しでも伝わるその硬さと妙な圧に、ナマエはほとんど無意識のうちに五条の胸を押し返し距離を取ろうとするも、許さないとでもいいたげに引き戻されてしまう。

「…でもさぁ、せっかくだしちょっとだけ楽しませて」
「へ…っあ、あぁぁっ!♡」

 切羽詰まった声色の五条はしばらく名残惜し気に紐を遊ばせたあと、そのままするりと手を滑らせ下着のウエスト部分を掴んだ。
 そして何を思ったのか、ほんの少し乱暴なその手つきにナマエが動揺している間に、先ほどの刺激で濡れてぴったりと張り付くクロッチを、ぐいっと引っ張り上げてしまった。

「やだっ、なにして…!」
「だって、脱がさないで触るにはこうするしかないでしょ」
「あぅ♡引っ張らないで♡や、やだやだっ!♡」
「それに普段こんなことしなから、また違って気持ちいいでしょ?」

 普段も何も、こんな変態じみたことをそう頻繁にされては堪ったものではない。
 けれど五条の言うように、これが快感を生んでいるのも確かで。ふっくらとした肉のあわいにぐっと下着が食い込む度、硬い紐のようになった布が秘部と、敏感になった突起をこすり上げる。
 まるで秘部全体を乱暴にこすられているような、慣れない質の快感に、そこからは蜜がこぼれ震える内ももを伝っていく。

「やっ、あ…!♡い、いく、いっ、んあっ♡あ、ぁんっ!♡」
「お、っと...」

 限界を告げるナマエの言葉を聞いた五条は、最後とばかりに今までよりいっそう強く下着を引き上げる。紐が強く食い込んだその瞬間、甲高い鳴き声と共にナマエの身体は大きく跳ね上がった。
 がくんっと膝から力が抜け座り込むナマエを支えると、五条はもはや下着の意味を成していない布のリボンを解き、捨てるようにベッドの下へ落としてしまう。無理に引っ張ったせいかやや伸びてしまった下着は、きっとそのままゴミ箱行き決定が故の雑な扱いなのだろう。
 こんなことまでしておいて脱がす時はずいぶんあっさりだなと、濡れた下着がべしゃりと床に落ちる生々しい音と、引かぬ快感に小さく身体を震わせながら、ナマエは頭の片隅でそう思った。

「うぁっ♡せんせ、私まだ、…ああっ♡」
「ん、ごめん。でももう少し頑張って」

 既に二回達しぐったりするナマエを抱えなおすと、五条は蜜を滴らせるそこへ指を突き入れる。余裕のない声色と手つきに若干の恐怖を感じ制止の声をかけるも、聞き入れてもらえるはずもなく。
 もう一度いかせるつもりなのか、遠慮なく入り込んだ二本の指は、ぐちゅっ、ぬちゃっとわざとらしい音を立てながらざらついた場所を引っ掻き、届く限界の奥底をくすぐる。
 時折思い出したように親指が固い突起を左右にこね回し、先ほどよりも簡単にナマエの身体は上り詰めていった。

「は、あ♡あっ、あぅっ♡んあ、あっ、また、いっちゃ…あ、あ……っ?♡」

 泡立ち、白く濁った重たい蜜が奥から溢れ、五条の手に水溜まりを作る。その光景に腰が痺れるような甘さを感じ、もう駄目だと思った瞬間。五条はぴたりと動きを止め、そのまま指を引き抜いてしまった。
 もう少しで上り詰められそうだった身体は突然刺激を奪われたことで、発散場所を無くした熱に震えていて。ひくつく秘部からとろりと垂れた蜜が、内ももを伝い五条の部屋着に染みを作っていく。

「せんせ…なんでぇ…」
「ん゙ん…そんな可愛い声出さないでよ……ちょっと、やりたいことがあってさ」
「やりたい、こと…?」
「うん。ちょっと僕の上乗ってほしくて」
「…も、乗ってますけど……?」
「あー、ごめんそうじゃなくて…とりあえず手はこっちね」

 誤魔化す様子に疑念を抱きながらも、ナマエは手を引かれるままヘッドボードを掴む。
 すると五条の膝に座っているため、まるで彼を腕の中へ閉じ込めるような体勢になった。

「これでいいんですか…?」
「そう。そしたらそこで膝立ちになって…力入る?」
「な、なんとか…」
「ん、いいこ。じゃあそのままね」

 言われるがまま、腑抜けた身体をなんとか踏ん張らせる。いったい何がしたいのかと訝しげな顔のナマエとは正反対に、上機嫌な様子の五条は身体をずるずる滑らせるとそのまま、何故かベッドへと寝転んでしまった。
 そこまでされてようやく、五条が何をしようとしているのか。ナマエは蕩けた脳内で理解することができた。咄嗟にヘッドボードを掴む手に力が込もり、そうはさせまいと踏ん張る。
 けれどそれを見越していたかのように、五条の手がナマエの柔らかな臀部を、押さえつけるようにわし掴んだ。

「はい駄目ー。逃すわけないでしょ」
「やっ、やだやだ触らないで!」
「え、それは傷付いた……からお仕置きする」
「なんでそうな、っぁあ゙!♡」

 わざとらしい言葉と共に信じられないほど力が込められた手にナマエが敵うはずもなく。寝転んだ五条の顔の上に、秘部を押し付けるように腰を下してしまった。

「ん、んん…」
「ひっ♡あぁっ!♡やだ、やだぁ!♡」

 入口を舐めたと思ったら、すぐさま舌が中へと滑り込む。抜き差しする度身体を跳ねさせるナマエの反応を楽しんでいるのだろう。五条は嬉しそうに目を細めると、顔が汚れるのも気にせず、じゅるじゅると大きな音を立てながら、もっと寄越せとばかりに肉壁を撫で回す。
 耐えるために下を向けば、自身の性器をうっそりとした表情で舐める五条の顔が見えて。かといって目を逸らしたり瞳を瞑ろうものなら、咎めるように舌の動きが激しくなる。
 今のナマエができるのは、与えられる快楽にただ堪えるのみだ。
 せめていつものアイマスクでもしてくれていたら、六眼持ちの五条には全て見えて意味がないとはいえその瞳とかち合わずに済むのだから、気持ち的にもまだマシだというのに。おそらく眠るために外していたのだろうが、このためにわざと外したのではないかと思うぐらいには、五条は穴が開きそうな勢いでナマエを見つめていた。
 見られてる。そう意識するだけでナマエの身体は興奮に喜ぶ。そんな性癖を持っているはずなどないのだが、これではそれもただの言い訳にしかならないだろう。

「あっ♡んああ、っはぁ♡や、せんせぇだめっ、いぐ、い゙っちゃ、〜〜ッ♡」

 ナマエの声がひときわ大きくなったのを聞いた五条は、突起を舐める舌の動きを速め、唇に挟み、ちゅうっと強く吸い上げた。

「っ!ま、あ゙♡せんせっ、くち、」
「んむ?」
「くち、離して…っ!」

 達した声と共に大きく痙攣する腰を押さえつけなおも舐め続ける五条に、ナマエが焦ったような声を上げる。腹の奥底から、尿意にも似た感覚が襲って来たからだ。
 けれどそれが尿意ではないことは、他でもない五条に教え込まれたから知っている。知っているからこそ、こんな状態でもしそれをしてしまったら、ナマエは羞恥で死んでしまうと理解していた。
 焦りながらも震える足に力を込め離れようとするも、ナマエが何をしようとしているのか行動を察したのだろう。逃がさないとばかりに五条の手には力が込められてしまう。

「や、やだやだっ、お願い離して…!や、っあ、あ゙あぁ、あ…っ!♡」

 必死の抵抗も虚しく、ナマエは迫りくる感覚に負けてしまい。派手に潮を撒き散らしながら再び達した。
 溢れる潮は当然五条の顔にかかり、白い肌の表面を滑り落ちていく。

「ん…なんか前より甘くなってる気がする」
「そんなわけないでしょお…っ」
「本当だって。やっぱりナマエはどこもかしこも甘いから、砂糖でできてんじゃないの?僕が知らないだけで」
「ばかぁ…も、ほんとにばか…っ」
「僕にそんなこと言えるのナマエくらいだよ」

 以前、抵抗できないナマエを押さえ付けやや無理やり潮を吹かせ顔射まがいのことをしたのが、すっかり気に入ってしまったらしい。まさか今回もさせられるとは思ってもいなかった。というより、二度としたいと思わなかっただけに、感じる羞恥はより酷いものだ。
 顔にかかった潮をさも当たり前に舐め、しかも感想まで述べる始末。いよいよこの男は羞恥で自身を殺そうとしているのではナマエは本気で思ってしまう。
 五条は横臥していた身体を起こし、それまで自身がいた場所へ今度はナマエを横たわらせると、あやすように頭を撫でた。

「ほら、ナマエ。しっかりして」
「ん…」

 それまでの乱暴さとは正反対に、ちゅっと可愛らしい音を立てて唇が重ねられる。ついばむように何度も重なり、ナマエの心臓も徐々に落ち着きを取り戻す。
 ナマエがキスに夢中になっているその間に、五条は手早くヘッドボードの引き出しから避妊具を取り出すと、自身へと被せた。
 唇を離し、ぬかるむ入口へ先端を宛がう。それまで一切触れていなかったそこは痛いくらいに張り詰め、先端が濡れただけで血液が逆流しそうなくらいの興奮を五条は覚えた。

「うっ、んうぅ…♡」
「っ、あ゙ー…やばっ、」

 小さく音を立てながらずぶずぶと飲み込まれたそこは、思わず声を漏らすぐらい気持ちが良く。硬く壁を抉る熱を嬉しそうに締め上げている。

「ナマエの中、僕のに吸い付いてきてほんと気持ち…」
「い、ちいち言わないで、ぇ、あ゙っ♡」

 一気に腰を沈めれば、わずかに潮が吹き出す。どうやら軽く達してしまったようだが、五条は構わず腰を動かす。柔らかなナマエの身体を折りたたむように腰を進めているせいか、五条の熱は簡単にナマエの最奥へと届いてしまった。
 そのままごつごつと突き上げられるも一切痛みはなく。これまでの行為ですっかり慣らされた中は、喜んで快感を拾い上げていて。腹の中で暴れる熱に、抑えきれないナマエの嬌声が響く。

「ああっ♡あ、おくっ、ごつごつって、ぇ♡」
「好きでしょ、奥」
「あ゙♡すき、すきぃ…っ♡」

 口の端から唾液を溢し、呂律の回らぬ様子でふにゃふにゃと答える。
 その声に誘われるように 五条はぷっくりと存在を主張する突起へ手を伸ばすと、根本から柔く摘まみ上げた。

「やっ、!そこ♡さわらな、で、っ♡」
「んー?でもナマエ、こっちも気持ちいいでしょ?」
「っぅう、あ゙、かりかりらめ、ひぁああ♡」

 気持ち良すぎるから駄目なのだと伝えたくとも、五条の手は止まらず。摘まみ上げ、根本から扱くように擦り上げ、切りそろえた爪先でかりかりと弾かれ。
 最奥を突きながら最も敏感な突起を弄られてしまえば、もうナマエに逃げ道はない。

「いっ♡いぐ、も、またい゙っちゃ、い、あ゙っ──ああ゙ぁあッ♡」

 もはや泣き声なのか喘ぎ声なのか分からない声を上げながら、これまでよりも激しく潮を吹きナマエは達した。
 締め付ける中に続くように五条も精液を吐き出す。避妊具の中に注ぎ込まれる熱にも、既に何度も達したナマエの身体は快感を拾いびくびくと跳ねている。おそらく無意識のうちに快楽から逃げようとしているのだろう。足先はきゅうっと丸まり、ベッドマットを蹴っていた。
 温かな中に名残惜しさを感じながらも熱を引き抜く。すると後を追うように勢いをなくした潮が、ぴゅっ、と吹き出し五条の腹を濡らした。

「…あ、」
「え、な、なに…」
「ゴムが中に残っちゃった」
「は…」

 五条の言葉を理解する前に、未だ物欲しそうに収縮する中でナマエも感じ取ってしまった。熱が抜けたはずのそこに残るわずかな異物感と、会陰を伝うどろりとした感覚を。

「うそ、やだ…っ」

 そこに残っているということはまだ口を締められていないということで。うっかり中で破れでもしたら避妊の意味が全く無くなってしまう。
 ナマエはさぁっと一瞬で青ざめさせると、慌ててそこへ手を伸ばす。──けれどその手は五条の手に掴まれ、避妊具に触れることは叶わなかった。

「ちょ、先生?なにして…っ」
「もうちょっとこのままにしておかない?」
「なに言ってるんですか…?」

 本日二度目の、心の底からの言葉である。ナマエの下着が紐だと分かった時よりもずっと据わった目でそこを見つめる五条に、ナマエは一つの答えに辿り着く。否、辿り着いてしまった。

「…先生、最初からそのつもりで避妊具着けましたね?」
「うん」

 あっさりと肯定された言葉にナマエは頭を抱える。──そういえば数ヶ月前にも似たようなことがあった。五条はナマエと制服でセックスをするためだけに、三週間も前から、当時自身が着ていた高専の制服を準備をしていのだ。しかも現在の体格に合わせたフルオーダ−で。
 そして今回も同じように準備したのだろう。ナマエの中ゴムを残す光景を見たい。その欲望のためだけに。
 そうでなければ、普段ほとんど着けないと言っても過言ではない避妊具をわざわざ準備などするはずもない。仮に持っていたとしても、時折訪れる部屋にそれを残すことはしないはずだ。いったいどの口が、残っちゃった、などとわざとらしいことを言うのだろうか。
 とんでもない思考だということは分かっており、それを自身の尊厳のためにも止めなければならないという事はナマエもこれまでの経験で嫌というほど理解してはいる。だが、いかんせんその前にぐずぐずにされ、右も左も理解できない状態にされてしまうため、どうしても止められないということも、また嫌というほど理解していた。

「でも、ナマエも気持ちよかったでしょ?」

 あまつさえこの発言である。いかに本人が反省せず、心の底からナマエとの行為にやる気を出しているかというのが窺える。
 おそらく今後もとんでもない事をしようとするだろう。それこそ予想することさえ憚られるような、卑猥なことを。

「まあ確かに残しっぱなしはいけないもんね。抜いてあげる」
「えっ!じっ、自分でやります!」
「自分でやったらこぼれちゃうでしょ…遠慮しなくていいよ♡」
「してなっ、あ゙ッ♡」

慌てて抵抗するナマエを軽く抑えつけると、五条は避妊具に手をかけ引き抜こうとする。締まっていない口からはさらに精液が溢れ、蜜と混ざりベッドマットへと染みを作っていた。

「っ、結局こぼれて、るっ、うあ゙ぁ♡」
「だってナマエが締め付けるから…ほら、もう少し緩めて。じゃないといつまで経っても取れないよ」
「そ、なこと言われてもぉ…うぅ…」

 荒くなる呼吸をなんとか抑え、必死に力を抜く。力を抜くのに必死になるのもおかしな話ではあるが、今のナマエには脱力する方が困難なことであった。
 それでも掌程度の避妊具、抜けるまでに時間はそうかからず。ナマエにとっては長く感じられた行為も、時間にしてみればほんの二分程度で。最後の精液溜まりが抜けるとナマエは小さく身体を跳ねさせ、ようやく本当の意味で力を抜くことができた。

「ん、取れたよ」
「はぁ…ありがとうございま……先生?」
「ん?」
「いや、ん?じゃなくて…!何してるんですか…!?」
「だって、もう一回するでしょ?」

 そっちが何を言っているんだ、と言わんばかりの顔でなんとも恐ろしいことを言ってのける五条に、ナマエは再び顔を青ざめさせる。
 確かに、自身が何度も達する間に五条が達したのはたった一回で、なおかつそれも避妊具を着けた状態だった。
 けれど世間的に考えれば、行為で避妊具を着けるのは当たり前のことで。さらにいえば相手が疲れ切っているのであれば、そこで行為を終えるべきなのである。
 そんなこと、目の前の男にとっては知ったことないのだろうが。

「は!?やっ、やだもうしない!しないですよ!?」
「もう入っちゃったから無理でーす」
「あ゙っ…!?♡」

 抵抗虚しく、どちゅっ、と遠慮なく進入した熱に最奥を突かれナマエは再び軽く達してしまう。
 一日に何度も上り詰めた身体では、もはや深かろうと軽かろうと、達するのは全て行き過ぎた拷問のようにも感じられた。
 仰け反ったことで晒されたナマエの喉元に吸い付きながら、五条は嬉しそうに笑っている。

「あ、あ…っ?は、ぁ、♡」
「ほら、ナマエの中も、奥に僕の精液欲しいって言ってる」
「あ゙、うっ♡いっ、言ってな、いぃ…!♡」
「言ってるよ。きゅうきゅう締めてくるもん」
「あ、んぁっ♡」
「こっちだってまだ触ってないし」
「ひっ、いぁ、あ♡」

 柔らかな胸の先で震える乳首をきゅっと摘まれ、そのまま根本から扱くように弄ばれる。かと思ったら爪先で弾かれ、円を描くようにこね回される。

「時間はかかるかもだけど、今度はこっちで潮吹こうね…♡」

 半ば冗談めかした声色で発せられたその言葉の中に、わずかな本気の色が見えたことに気付ながらも、今のナマエに五条から逃げ出せるほどの力があるわけもなく。
 追い詰めるように与えられる快感を、ただ全て受け入れることしか、ナマエにはできなかった。


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