一歩まではまだまだ先


「真野ちゃーん」
「おい!ひっつくなって!」
「えー!いーじゃんいーじゃん」

いつも通り幼なじみの自称千葉が生んだ奇跡(笑)がルームシェアしてる家に転がりこみ、リビングでジェンガ中の真野ちゃんに抱きつく。この照れた感じがかわいいんだよ、うん。

「真野ちゃんったらかわいいなあ、もう!」
「離せって!」
「減るもん何もないんだから良くない?」
「いいわけねぇだろうがっ!」
「ちぇ、ざんねーん」

さすがにそこまで嫌がられると少しは傷つく。しぶしぶ離し、ニヤニヤと気持ち悪い笑みで私達を見ていた要の横に座る。

「残念だったなあ〜」
「気持ち悪い」
「おい、それはどう意味だこら」
「要のニヤニヤ顔が気持ち悪い。こっち見んな」
「んだとお前!」
「ちょ、重いっ!乗っかるな!」

座ってる私の上に要が覆い被さるように乗っかってきた。成人男性の体重に耐えきれるはずもなくそのまま押し倒された。そのままうりうりと頬を弄くり回されるが仕返しに要の頬を引っ張ってやる。

「ふぁなせばかなふぇ」
「おふぁえふぁふぁなふぇ」
「ひげがいふぁい!」
「ほんと失礼だなお前っ」
「ふぉんとのふぉとでふぉ!ふぁめろ!」
「やーなこった」

髭がちくちくして痛いから私は放したというとのにこのバカは弄くり回したうえに引っ張りやがった。許さん、今度こいつだけ土産なしにしてやる!

「うぇっ、しま、しまるぅ…っ」

急に要が離れる。いつの間にか要の後ろにいた真野ちゃんがむすりとした顔で要の襟を引っ張っていた。

「お前ら何やってんの」
「えっと…スキンシップ?」
「近すぎだろ」
「そう?」
「こんなもんだろ、というか真野お前放せ!首絞まる絞まってるっ!」
「はあ…お前らさ気にしないわけ?」
「何を?」
「それは…あれだよ」
「あれ?」
「………ほほーう…なるほど」
「うるせぇ横山!」
「うるさくしてねぇだろうが!」
「顔がうるせぇ」
「俺年上だぞ!」

また始まった要の年上論。いくら年上といえど敬う要素何一つないんだから敬語とか使わないよね。めんどくさい要に関わらないように筋トレ中の新田くんの所へ逃げる。

「逃げてきた?」
「逃げてきた」
「ほー」
「……え、なにその生暖かい目」
「いや、若いなあって」
「はあ?私要と同い年よ?アラサーよ?君らの方が若いでしょーよ」
「うん、だから若いなあって」
「全く意味がわからない」

最近の新田くんは何故か生暖かい目で私を見てくる。なんでそんな目で見られるんだろうか。そういえばルーシィちゃんには要みたいな顔で見られるな、ニヤニヤした感じの顔。よくわからん。


「お前さぁ…まさか俺に嫉妬してたとわなあ〜」
「うるせぇ」
「安心しろよ、俺達は幼なじみ以外の何者でもねぇから」
「……あっそ」
「まあ?真野の場合は可愛がられるポジションからの脱出が先決だとは思いますけどねぇ〜?」
「横山うぜぇ」



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