※知識有り転生
唐突ですが私には前世の記憶というものがある。小学生のとき兄と喧嘩したときに兄に突き飛ばされて頭部をぶつけたことでポンっと思い出した。思い出したと言ってもドラマのように第三者の気分で記憶を見ているため、あんまり実感は無い。でも、ある日兄たちを見て気づいた。これドラマじゃん……と。
まあ、ドラマだからといって何かをするわけじゃないし。基本的に家から出たくない系女子の私には関係のない話だ。
「おい名前、いつまで寝てんだお前…早く起きねぇと右京来んぞ」
うるさい兄だな、こちとら寒さに弱いんだよ。布団の中でぬくぬくさせてくれ。あーぬくい……布団最高。
買ってくれた左京兄さんありがと、だいすき
「おー、兄ちゃんも好きだぞ」
「………あれ?口に出してた?」
「出てたな」
被っていた布団から頭を出すと左京兄さんから頭を撫でられた、うん、もっと撫でて。ぐりぐり手に頭を押し付けると、わしゃわしゃと撫でられた。
「今日は一段と甘えただな、どうした?」
「さむい」
「そういや寒いのダメだったか…暑いのもダメだしなあ」
「春が一番好き……ほどよくあったかいし」
「そうかそうか…名前これから飯なんだよなあ」
「………いらない」
布団から出るくらいならご飯はいらない、とまた毛布を被り丸まる。あったかくてまた夢の世界に旅立ちそうになるが、すぐに暖かさはなくなって変わりに冷気が押し寄せた。
「っっ?!さむっっ!」
「いつまで寝てんだ!早く起きてから飯食え」
「うぅ…さむいしうるさい」
「お前が起きないからだろうが」
「まあまあ待てって右京」
「お前は名前に甘過ぎるんだよ」
ささっと起きろ、と私から布団をとった右京兄。さすがに寒さに耐えつつ眠ることはできないからしぶしぶ起きる。
起こし方が手荒なんだよ右京兄さんは。左京兄さんを見習えよ強面め。
「どうみてもこいつも強面だろうが」
「……あれ?」
「口に出してたぞ」
「まじか」
「はあ……早く来い、朝飯だ」
「名前歩けるか?」
「それくらい大丈夫」
若干ふらついてるような気もするが無事に居間に到着。炊きたてのご飯と味噌汁の匂いにお腹が鳴った。
「…………」
「クッ、は、腹減ってたんだな…っ」
「笑わないでよっ!」
「悪かった悪かった」
まだ笑っている左京兄さんの腕を叩いてみるが引きこもりの貧弱な力じゃ効果はない。悔しくて睨むが、早くしろという右京兄さんの一言で慌てて席に座る。
「「「いただきます」」」
この強面の兄二人が手を合わせていただきます、という光景に最初は違和感ありまくりだったがもう慣れた。
暖かいご飯にじんわりと胸が温かくなり、もくもくと食べ続ける。右京兄さんのご飯は久しぶりだなあ。最近はほぼ達磨一家の本拠地である廃寺で寝泊まりしてるから家に帰ってくるのはいつぶりだろう。……ん?あれ?そういえば何で兄さん達がいるんだ?
食べる手を止めて兄さん達を見つめる。特に目立ったケガもないし、療養ではない(ここで療養できるとも思わないが)。じゃあ何でここに?
「あ?どうした」
「あのさ…何で兄さん達家にいるの?」
「あのなあ、ここは俺らの家なんだから帰ってくるのは普通だろうが」
「そうだけど…あんまり帰って来ないのに…」
「たまには可愛い妹の顔が見たくなったんだよ」
「……うそくさい」
「お前は兄ちゃんの話を疑うのか?悪い子はこうしてやる」
じと目で左京兄さんを見ているとぐしゃぐしゃと頭を思いっきり撫でられた。両手は箸と茶碗で埋まっていたため防御することができずに成すがまま。ようやく終わったころには髪はぐしゃぐしゃになっていた。もともと整えてもなかったけど、これはこれでダメだと思うんだ。
「ひどい…」
「ほら直してやるから、箸と茶碗置いてこっちこい」
「うん…」
大人しく右京兄さんに従い、髪を整えてもらう。なんか兄さんにこうしてもらうの久しぶりのような気がする。
右京に髪を戻してもらっている俺達の末妹。目尻は下がり頬もゆるんでいて幸せそうな表情ではあるが、その頬は最後にあったときより痩け、目元には薄く隈が出来ている。
最後にあったのは3週間くらい前か。燃やされた寺の修繕やDOUBTとの抗争の後始末、あとは日向の子守りでこっちの家に帰ってくることはなかった。日向がもう少し大人しくしてくれればよかったんだが、あいつ飯を食わねぇで寝てばっかでようやく起きたかと思えばどっかに行っちまう。首輪でも着ければ大人しくなるかとも考えたがあいつは引きちぎるだろうな。あの寺も家であることに変わりはないが、この家は俺達兄妹が育った家だ。今はほぼ名前しか住んでねぇが、俺達もたまには泊まる。
でも、ここまで来なかったのは初めてだった。
帰ってきて一番最初に見たのは居間で倒れてた名前。慌てて抱き起こすと顔は青白く、身体はだいぶ細くなってた。急いで布団を引きずり出し名前を寝かせたあと、飯を作るために台所に行き衝撃の光景を目にした。
「……何も入ってねぇ」
「パン1つもねぇ…な」
冷蔵庫には何も入っておらず、通常ならパンなどが入っている戸棚にも何も入っていなかった。
「まさかとは思うがあいつ何も食ってねぇんじゃ…」
「3週間前は冷蔵庫にも戸棚にもあった…おそらく食ってねぇのはここ2,3日だろうな」
「それで倒れたわけか……」
飯を作るためにはまず材料を買いに行くところから始まるが、正直俺も右京もあの状態の名前から離れるわけには行かない。だが、買いに行かなければ飯は作れない。最終手段として俺達がとったのは―――
「おーい、右京これでよかったか?」
「ああ、悪いな」
「気にすんなって。にしても名前ちゃんやべぇな」
「たぶん外に出るのが面倒だったんだろうな…それで死にかけてちゃ世話ねぇがな」
寺に置いてあった米や右京が作りおきしてたおかずを加藤に持ってこさせた。
「どんだけ顔色悪いのか見てみてぇな」
「あ"?」
「んな睨むなよ、冗談だろうが…本当過保護だよなお前ら」
「過保護なら放置はしねぇよ。だいたいはあいつの自由にさせてるしな」
自由にさせた結果倒れてるけどな。今度からは寺に連れてくか…。
「寺に連れてくにしても、日向がなあ…」
「日向なら名前ちゃんに珍しく興味持ってたぜ?」
「あ?あいつには少ししか話したことねぇぞ」
「名前ちゃんのこと話してるときのお前ら雰囲気柔らかくなるわ、頬は緩むわで興味持たねぇ方が無理だろ」
加藤か帰ったあと、右京と話し合った。寺に連れてくにしても引きこもりで人見知りのあいつが生活できるかはわからない。が、このまま一人残すのも不安だった。こんこんと青白い顔で眠る名前を見て俺と右京の意見は一致した。
「「―連れてくか」」
(名前服準備しとけ、あと持ってくものもな)
(??どこか行くの?)
(お前も寺に住まわせる)
(え)
(部屋も用意させるから安心しろ)
(え、え?)
(ほら準備しろ)
(もはや決定事項……?)
((当たり前だろ))
(……そっかぁ)
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