アイの形は十人十色
「またすれ違い…っ!」
膝を床に着けorzポーズで落ち込むなまえ。遡ること数分前、村山がITOKANに来ているとの情報をチハルがなまえに流し、慌ててITOKANに来るもすでに村山は帰っていた。
「すみませんなまえさん…気づいたときにはもう帰ってて…」
「引き留められませんでした…」
「いいんだよ二人とも…連絡してくれただけで十分だから、ほんと」
引き留められなかった、と落ち込むテッツとチハルを慰めるもなまえの表情は暗い。かれこれこんな事は10回以上も続き、なまえは全く村山と会うどころか見ることすらできていなかった。
「なまえ…これはもうあれやろ」
「はあ…完全に避けられてるよね…」
チハルとテッツが連絡するもなまえが到着する直前には帰ることが続いているためなんとなくなまえも気づいている。これは偶然ではなく、意図的に避けられてると。
「お前なんかしたんとちゃうんか?」
「2週間くらい前まで普通に話してたんだけど……その時何かしちゃったのかな…」
「……俺探りいれてみますっ!」
「いやいやすぐバレるだろ」
「でもよ…」
「いいんだ、チハルちゃん……」
ふっ、と諦めたように笑うなまえにチハルは胸が痛くなった。
いつも可愛がってくれるなまえさんの役にもたてないのか俺は…っ。
「はいはいなまえは紅茶でも飲んで落ち着きな」
「うぅ…ナオちゃぁん…」
「よしよし」
カウンター越しにナオミに泣きつくなまえに呆れつつもナオミは頭を撫でた。一連の流れをパソコンを弄りながら見ていたノボルは静かにパソコンを閉じた。
「どうしたんや、ノボル」
「いやぁ…いくら高校生といえどこれ以上はさすがに見逃せないよ」
「どういうことっすか?」
「ノボルさんなんか知ってるんすか?!」
詰め寄るテッツとチハルにノボルはにこりと笑った。
「いくら高校生だとしても成人してるんだから限度ってものがあると思うんだ」
――――――一方その頃山王地区外れにて
「村山」
「なーにコブラちゃん」
村山がITOKANを出てすぐ、コブラも後を追うようにITOKANを出た。ここ最近、村山がなまえを避けていることには当然コブラは気づいていた。放置していたがなまえの落ち込み用から早めの解決が必要だとコブラは判断したためここにいる。
「いつまでこんなことしてるつもりだ」
「こんなことって?」
「とぼけんじゃねぇ、お前…なまえを避けてんだろ」
「あ、バレた?」
村山は立ち止まりくるりと振り返った。バレた?と言いつつも楽しそうに笑っている。全く困ってないその様子に隠す気ねぇだろ、とコブラはため息。
「あいつが嫌いならそう言え、そうしたらお前を追いかけることも無くなる」
「えーそれはヤダ」
「お前な…」
「だって俺、なまえちゃんのことすきだもん」
さも当然のように吐き出された村山の言葉にコブラは一瞬固まった。
すき……好きって言ったかこいつ…
「……本気か?」
「えー俺が冗談言うようにみえるー?」
「見えるな」
「ひっでぇな」
ははっと笑う村山にコブラはため息をまた1つ。こんなことを冗談で言うことはないだろうとは思うが、いかんせん普段の言動のせいで全く信憑性がない。そのうえここ最近の態度からどうやって信じろというのか。
そんなコブラの心情に気づいたのかぽつぽつと村山が語りだした。
「あのさあ……なまえちゃんと話すときってさ、だいたいコブラちゃんの話なんだよねー」
「急になんだ」
「いいから聞いてって。コブラちゃん強いよねー、とかコブラちゃんがタイマンしてくんない、とか俺は話すんだけどさ。なまえちゃんはさーコブラちゃんの普段の様子話してくれんの」
「…………」
本人のいない所で何を話たんだあいつは、と思いつつ空気を読んで口には出さなかった。が、帰ったら問い詰めるとコブラは心に決めた。
「もうさ、すっげぇニコニコ笑って話すんだよねー…コブラちゃんのこと」
「……はあ、なんとなくわかった」
「おーコブラちゃんすげぇ」
「で、それが気にくわないから会わねぇのか」
「うーんちょっと違う」
「あからさまに避けたらなまえちゃん、絶対に気づくだろ?そーすればなまえちゃんは自分が何やったのか考えるじゃん…俺ばっかなまえちゃんのこと考えてるなんて負けた気がするしー」
チェシャ猫の用に笑う村山にコブラは呆れて片手で頭を抑えた。たしかに実際なまえはほぼ毎日村山の話題ばかりで効果はある。だがそれは今に始まった話じゃない。
「…あいつは前からお前の話しかしてなかった」
「へ?」
「俺達にする話はだいたいお前の話ばっかりで正直聞きあきてた」
「…まじで?」
「ああ」
「まじかぁ………」
はぁぁぁと村山はしゃがみこんだ。
「だって俺と話すときなんてコブラちゃんのことばっかなのに…」
「何を話せばいいのかわかんなかったんだろうな、共通してたのが俺だっただけの話だろ」
「あー…俺かっこわる…」
「だいたいその考えはどこから来たんだよ」
「関ちゃんの持ってきたショージョマンガ」
「あいつそんなの読むのか…お前も読んだのか…」
「いける、と思ったんだけどなあ」
「それからノボルがそろそろ動くかもしれない。気をつけろ」
「ノボルって、あの情報の?」
「ああ…二度と会えなくなるかもな」
落ち込む村山をさらに突き落とすようなコブラの言葉に村山は弾かれたように飛び上がる。
「は?!ちょっ、それ困る!」
「ならさっさと誤解とくんだな、あいつも嫌われてると勘違いしてる」
「嫌うわけないじゃん!もっかいミカン行く!」
「ミカンじゃなくてITOKANだ、イトカン」
(なまえちゃん!!)
(え?え?村山っ?!)
(俺なまえちゃんのことすきだからね!)
(う、うん?)
(コブラのおかげだね)
(これで一安心だな)
(なんかよくわかんないっすけど良かった!)
(うんうん!)
(何で急に甘い雰囲気漂ってるんや…)
(うん、じゃあ付き合おーか)
(うんうん…ん?)
(はい、けってーい。今日から俺の彼女だから他の男に抱きつくの禁止ねー)
(え、え?)
(返事はー?)
(は、はい?よろしくおねがいします?)
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