優雅なお茶会を、共に/エイブラハム・ヴァン・ヘルシング



 コード:リアライズ計画を阻止し、カルディアとフィーニスがウェールズに帰って数カ月。
ドラクロワ二世につき従いその仕事の補佐や護衛をしていたヴァンと▼は、ドラクロワ二世が招かれたレンフィールド侯爵の茶会に訪れていた。二人から少し離れた場所では小さな王と侯爵が和やかに会話をし、ともに招かれた吸血鬼達も遠巻きながらその様子を微笑ましく見守っている。今は亡き両親のかわりに、こうして周りがあの小さな王を見守り支えて行くのだろう。
いつもの仏頂面でカップを傾けるヴァンの横に座る▼は、その横顔に柔らかな眼差しを投げる。

「落ち着きませんか?」
「いまここにいる吸血鬼達に一斉に襲い掛かられても文句が言えない立場なのでな」
「ふふ、でしょうね」

 特に否定せずに紅茶に口をつける。
もちろんヴァンの存在に否定的な者がいることも確かだが……。ヴァンが吸血鬼戦争の真実を語り、貴族達に働きかけた。その貢献を認める者も同じように存在するのだ。たとえ突然襲い掛かられたとしても、助けに入る者もいるだろう。もちろん、▼もその一人。
どこか居心地悪そうにしているヴァンに笑って、周囲を見回す。吸血鬼戦争の後からは想像できないその光景は、たしかに小さな王とその協力者たちが築いたもの。
これは私の考えでしかありませんが、と口を開いた▼にヴァンの視線が移る。

「私から色々なものを奪ったのは結果的に貴方ですが、こうして吸血鬼と人間がいる光景を作ったのも貴方ですし。胸を張ってこの場にいても良いと思いますよ。なにより、私はヴァンが近くにいると安心しますから」

 精神的にも、武力的な意味でも。と付け足して▼がカップを置くと。ヴァンは「生憎、ショットガンは持ってきていないが」と気が抜けたように唇を緩めた

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