「おっかしいなぁ」
首を傾げるベネットの手元の地図を覗き込みながら▼も同様に首を傾げる。地図に印の打たれた位置は確かに自分達のいる場所なのだが、目的のものが見当たらない。
「アンさんとジェシーさんの閉じ込められたっていう秘境、やっぱりさっきの場所なのかな?」
不審なものがなかった訳ではなく、明らかに人為的に開かれた空間への入口は存在した。周囲の調査を行ってから秘境の中も調べても、ベッド等の家具が一通り揃った、宿の一室のように整った空間であること意外なにもわからなかったのだ。野営ができる場所が見当たらない時にこの秘境を見つけたのなら幸運だろうと話すくらいには環境が整っており、それ故に不自然でもあったが……。
「でも、オレ達が入っても普通に出られただろ?」
「そうなんだよねぇ……」
アンとジェシーが入ってしまった秘境は時間が経過しないと出口が開かなかったようだが、ベネットと▼が入った秘境はすんなりと出ることができた。入る前後で体調や所持品にも異常はなく、再び調べようにも三回ほど出入りした後その秘境への扉は消えてしまったので、ベネットと▼は冒頭のように揃って首を傾げることになった。
「消えちゃったからもう調べようがないけど、またあの扉が出てこないのなら問題はないのかも」
「それなら、何日かここの様子を見てからサイリュスさんに報告しよう」
「野宿になるって思うと、さっきの部屋が恋しいなぁ」
「はは、確かに!」
笑ってから、ふと二人は互いの距離に頬を染める。ベネットは咄嗟に地図で近場の水源を探し始め、ぱっと離れた▼も周囲に食料がないか視線をめぐらせた。よく考えると先程の秘境は消えていてよかったかもしれない、あの部屋にはベッドはひとつしかなかったし、なにより野宿以外で一夜を共にしたことはなく、部屋の中で心臓がウサギ伯爵のように爆発してしまうことは明らかだったからだ!
そう、それは、お互いに。