春のうららかな陽が木々の間を通り抜けて▼を照らす。
やわらかな草の上に仰向けに寝転んでいた▼が低い位置から草を踏む音に顔を上げると、この春に産まれた子供が▼のもとにやってきて、そのまま中途半端のりあげた。二ヶ月ほどになるか、産まれたばかりの頃のぽてっとした印象は薄れて、いまは小型犬程度の大きさだ。狼の成長は早い、あともう数ヶ月もすれば大人たちと遜色ない体になっているだろう。
「眠いの? でもそこにいると落ちちゃうわよ」
くわとあくびをした鼻先を指でつつく。驚かせないようにそうっとその体を持ち上げ、抱え込むように横になる。手を離すと自分でおさまりのよい場所を探して丸くなり、眠そうに瞬きをする頭を優しく撫でた。大きくても小さくてもルピカ達は可愛いが、優しく包めるような体の大きさである時期は冬の日没のようにはやくすぎてしまうので、とても貴重に思えた。
とうとう眠り始めた小さな体を眺めているとつられるように睡魔がやってきて、▼もうとうとしはじめる。耳は先程より大きなものが草をふむ音を拾っているが、その足跡の主が誰か分かっているので▼は瞼を下ろした。
狩りの時のように静かな動きで隣に寝転がった誰かさんの伸ばした腕がするりと▼の腰に回る。群れの中では一人前で、人の中では子供。狼として扱うべきなのか人として扱うべきなのか迷う▼は、この体温の持ち主が大人なのか子供なのか時々……本当に時々わからなくなる。眠気の中、毛皮ではない、自分と同じような皮膚を纏う腕を撫でた。
ぴったりとくっついた体温が、小さく、少しだけ不服そうな声で名前を呼ぶ。
「オレも、構って」