月光に照らされたシーツの緩やかな凹凸は砂丘のようだ。そこに押し倒された▼は覆い被さるセノに数秒不思議そうな視線を投げ、それから己と色の違う頬に触れて笑った。セノの指が皮膚をなぞり、臓物の有無を確認するように腹を撫でてもなお、擽ったそうにくすくすと笑って体を揺らすだけだ。子供の頃と同じじゃれあいと思っているのかもしれない。
「セノ」
呼ばれた名前はいつも通りの温度で、セノの指先程熱くなく、欲の滲んだ湿度をしていない。この差を感じると、セノは言葉にし難い感情が渦をまく自覚があった。
幼い頃と変わらぬ無邪気な信頼を向けられていることは喜ばしい、その様子を愛おしいとも思う。しかし、兄や夫であるが男でもあるセノの前でここまで無防備なのは叱るべきなのか、警戒されないことを悔しむべきか……。「自分相手でももっと警戒しろ」と言えば、▼はそのようにするのだろうが、いざ拒絶された時にショックを受けるのは自分だろう。
「▼」
名を呼ばれてきらきらと輝く瞳を至近距離で見たセノは、ひとつため息を吐くと▼の隣に横たわる。嬉しそうにぴたりとくっついてくる様子を見れば、先程まで腹の下にあった欲は鳴りを潜めて、セノは幼子のような親愛でその細い腰を抱くことができた。こうして手を引いてしまうことが▼が警戒しない理由の一つなのだろうなと思いはしたが、目を閉じる際に思考に蓋をしてしまう。
「……おやすみ」