上書き


 大人ひとりと子供ひとりで、ほんの少しだけ余裕のあるベッドの上。レザーが青年と呼べるくらいに成長したらこのベッドで一緒に寝ることはできないかもしれないなぁと、自身にしがみつくようにして寝ているレザーの髪に指を通しながら▼は思う。
 こういう状況になることは珍しくない。
 いつレザーがきても良いようにと家の鍵はかけていないので、朝起きたら隣でレザーが寝ていたということはよくある。そうでなくとも、やけに甘えてくる日は寝支度をしている時にはもうベッドに潜り込んでいて、▼がベッドに入ると狼達がそうするように身を擦り寄せてくる。
 大きくなったと思っていてもこういう時は小さな子供のようで、可愛いから大きくならないでいて欲しいなという気持ちもあるが。そろそろベッドに潜り込まないように言っておかなければいけないし、それならば使ってない部屋を掃除してレザーがベッドを使えるようにしなければいけないだろう。
 寂しいけれど、きっとあっという間に大人になってしまうだろうから。大きくなったレザーがこの森にいるかはわからないけれど、彼がここにいる間は世話を焼かせて欲しかった。何せほぼ唯一と言っていい、関わりのある人間……狼……? 彼等のように言うのなら、ルピカなのだから。
 幼さの残る頬の丸みをなぞると身動ぎしてから唸る。起こしてしまったかと思うより早く開かれた赤い瞳が▼を見上げると、ぐっと体をのばした。

「わっ、こらレザー」

 首元に鼻を寄せてから、舌で首筋を舐められる。レザーや狼達にはよくある事なので慣れっこだが、一応咎めるだけ咎めはする。効果はないし、本人達は咎められている自覚もないだろうが……。色んなところにレザーの髪が当たって擽ったい。暫くしたいようにさせていると、満足したのか白い頭は離れた。

「違う匂いしない」

 それだけ言い残してまたすやすやと眠り始めたレザーの寝付きの良さに感心しながら、▼は先程よりもがっちりと抱きつかれている状態に小さくため息を吐いた。
 少しだけ寝にくいが、まあなんとかなるだろう。




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