外は晴天



「あのさ」

 下層で使っているベッドと違い、柔らかく肌触りの良いシーツを背に▼は抗議の言葉を切り出す。

「いま真昼間なんだよ。窓の外見ろ、良い天気だから」
「それがどうした」
「昼から盛るなって話」

 組み敷いた張本人のジェパードはさして悪びれた様子もない。体格や膂力に差があっても相手を押し返す術を学んでいるはずなのに、同じようにそれを学んだジェパード相手には封じられて終わる。ジェパードの体が驚くほどびくともしないことに己の退化を思い知り、思わずため息が漏れた。

「僕達の体力を考えれば、今から初めて夜に眠るのが丁度いいと思うが」

 夜に短時間で切り上げる思考は無いのかと口をついて出そうだったが飲み込んで、▼は降ってくる口付けを受け入れる。睫毛の長い男だなと
思っているうちに自由になった唇を舐めて、脇腹をなぞる手を抑えた。女のように柔らかくもない体をなぞって何が楽しいのか、▼にはいまだに疑問だ。

「ケーブルカーの便がなくなる」
「泊まればいい」
「飯食いそびれそう」
「夜食でも用意しよう。……君が気分じゃないなら止めるが」

 シルバーメインの纏う青と似た色がじっと見下ろしてくるので、▼は思わず目を逸らした。窓の外にも同じような青が広がっており、見る方向を間違えたなと心の中で舌打ちする。
 気分じゃないと言えば止める男だと分かっている、別に自分も絶対にしたくないという訳では無い。ただ、ほんの少しだけ、優しく触れる指先が恐ろしく思えることがあって、そしてそれを伝える勇気が▼の中にない。それだけのことなのだ。何もかもジェパードが悪い訳では無い、▼が躊躇って嫌々をしているだけ。
 暫しの沈黙の後、長い長いため息をついてから▼はジェパードの頬に触れる。整った顔にかかる陽の当たった金髪は勲章のようにきらめいて美しい、綺麗なものに触れるのは少し嫌だと思った。

「まぁいい、好きにしろよ」

 これは許しでもなんでもなく、諦めなのだろうか。この言葉を受け止めたジェパードが許しだと思うのならそれでいいかと目を閉じる。頬に触れた唇から察するに、許しになったのだろう、多分。 
 





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