青い憂鬱
美しいレリーフで飾られた棺桶を前にしている。
青い布の上に丁寧に置かれた勲章が日の光をうけて金色に煌めく、この光景にジェパードは覚えがあった。シルバーメインの葬儀というのは大体はこのような形だ。両手では数えきれないほど体験し、そしてこの日の事をジェパードはよく覚えている。
これは▼の葬儀だ。
あの棺桶の上に置かれた勲章は、いまは彼の両親のもとではなくジェパードの部屋にある。断られるのを承知で▼の父親に頼み、あっさりと頷かれた記憶がある。あれは明らかに興味のない様だった。似たもの親子だ、そう思う。
「お前、こんな物が欲しかったのか?」
勲章をつまみあげる手があった。
「▼」
不躾に棺桶に腰掛け、手にした勲章をしげしげと眺めている。
顔に傷のある男がこの場にいられたはずがない、あの棺桶だって中身は空だった。ジェパードがいるここが夢なのだという、わかりきっていた事を体現しているような存在。
路傍の石でも扱うように投げられた金色を慌てて掴み、ジェパードは▼の赤い瞳を睨んだ。
「お前の物だが、雑に扱うんじゃない」
ジェパードにとってシルバーメインの勲章は誇りであり、使命であり、先祖から脈々とつながれてきた血のようなものだが、この男にとっては実績の後についてくる物体でしかないのだろう。
『こんな物』と称されたそれは、▼の死を納得させるために必要だったが、それを▼に言ったところであまり理解は得られないということをジェパードは分かっている。
棺桶の上の影が薄く笑う。
「お前のなかで俺って死んでたんだ」
生存を信じていなかったことへの侮蔑のように聞こえたのは、ジェパード自身そうあれなかった自分を悔いているからなのかもしれない。思わず口から出そうになった言葉をぐっと飲みこむ。▼を死んだと思っていたことは紛れもない真実だが、今この夢の中で謝罪をしても意味がない。そもそも、▼本人は謝罪の言葉など必要しないだろう。自分の死などなんでもない事の様にへらへらと笑う様子が目に浮かんで、苛立つ。
「上層で、お前はもう死んだことになっている」
八つ当たりのように事実を投げる。言い訳じみていて、そして今となっては真実ではない。
ジェパードの言葉を受けて数回瞬きをした▼が今度は晴れやかに笑った。別にいいよと形を作った唇に苦々しい顔をして、ジェパードは酷く鮮明な夢を呪った。