愚行



 お前が恋愛婚でも見合い婚でもいいから誰か普通の、お前を愛している人間と結婚して、お前がその人を愛して――まぁお前は基本的に誰かを大切にできる人間だから大丈夫だよな、そう、子供が出来てランドゥーの血が残れば。お前はランドゥーの老いぼれ達にも血統を気にする奴らにも何かを言われることはないし。お前は多くの人の目から見てなんの欠点もない、ランドゥー家の立派なシルバーメイン戍衛官で、多くの人に敬愛されて生きられるんだ。お前はそういったものを受けて生きるに値する人間だし、お前がそういう世間一般的な幸せを得ることで守られるものや保たれるものがあるわけ。

「わかるよな?」

 ジェパードは、計算の答えを確認するような軽い口調で首を傾げた▼の頬を殴らなかった自分を褒めたい気持ちでいっぱいだった。「そんなものは君の勝手な意見だ」と突き放せない程度には彼の言うことを理解できるが、それを二人で出かけのんびりと昼食をとっている時に言う無神経さに目眩がする。もしかしたら、▼にとっては何でもない話題なだけかもしれないが。

「時々思うが、君は僕のことが嫌いなのか?」
「はぁ? そんなわけないだろ。お前には人並み以上に幸せになって欲しいと思ってるんだから。愛だぞ愛」

 それは本当なのだろうなと思う。ジェパードが強く望む愛のかたちではないだけで、▼はジェパードのことを愛していると理解している。
 結局自分も彼も、己の望む愛や幸せを得て欲しいと、己の愛を押し付けているのだから似た者同士なのかもしれないと思い。いいやそれでも▼のあの(言い方は悪いが)身勝手さは自分を上回るだろうと、先程無理矢理おさめた怒りが顔を出す。

「変な顔すんなよ」

 君のせいだ、と言えずに溜息で答える。嫌いになれない自分が愚かだと思った。
 





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