※極
後頭部を強かにぶつけた音と衝撃。体の上に増えた重みは気にならないが、唇に感じる柔らかな感触はひどく思考を乱す。帳のようにおりる白い髪が隔てた外は春の陽気に満ちて、ここが縁側だと思い出させた。唇が離れた一瞬に鬼丸の大きな手が末の口元を覆うと、行動を阻まれた唇がついと鬼丸のてのひらを食んで不満を訴える。
「がっつくな」
手をはなしてやれば不満そうだった瞳が瞬き、それを見た鬼丸が今度は一体何を思いついたのかと身構えるより先に、末が鬼丸の手を掴んだ。馬乗りになられていても女の体ひとつくらい放り投げることはできるが、それをすると後々面倒になることを身をもって知っている鬼丸は、ひとまず末と己の手を見守る。
するりと捕らえた手に頬擦りをして、それから指先を食む。咥内から解放されたと思えば、今度は舌が鬼丸の指をなぞった。形をとった性別と戦いが本分の刀剣男士らしく硬く太い手指を赤い舌が這い、すべらかで美しい指先が浮き出た骨を優しく撫でる。
「わたくしのおにまるは、てもうつくしいのね」
うっとりと目を蕩かせて零された言葉は嘘偽りのないものだろう、末という鬼は人で散々遊びはするが評価に嘘はつかない。まっすぐな賛辞は鬼丸の胸裡を心地よく擽る。
しかしそれもほんの少しの間のことで、蜜や飴でも塗られているかのように末が己の指を舐めたり噛んだりするので鬼丸は黙り込んだ。犬猫の甘噛みのようであり、閨事のようでもあり、愛らしいと思う気持ちとめちゃくちゃにしてやりたいという気持ちが胸に湧いてきては鬼丸の口を縫い付けていく。
人の身は、少し不便だ。