雨音
雨音を耳に、リィンは読んでいた賭博師ジャックから視線を上げる。目の前では、メリルが先の戦闘で破れてしまったというフィーの上着を繕っていた。慣れた手つきで進められていく作業に感心し。続けて、手元をみているのその瞳を眺めた。
髪色は出会った時から変わってしまったが――そもそも、リィンが初めて見た髪色こそが偽りだったのだが。蒼と翠、色の違う双眸は変わらない。いまは随分と前の出来事と感じてしまう帝都実習、盗難事件のかつ決の為に足を運んでサン・コリーズに並んでいた宝石のような。不思議なきらめきを湛えた瞳だと、リィンは思った。
最近は特に、出会ったことよりも輝いているように思う。環境の変化か、彼女自身の変化か、はたまたリィン自身の変化か。
ふと、眺めていたその瞳がリィンを捉える。
「リィンさん、何か御用ですか?」
「……えっ。あぁ、悪い。なんでもないんだ」
そうですか。と、メリルは微笑んで視線を手元に戻した。それに少し安心したような残念なような。相反した感情を覚えながら、リィンもまた文庫本に視線を戻した。先程まですらすらと頭に入ってきていた文字のはずなのになぜかが目が滑って、読む速度が緩やかに落ちてゆく。本当になんでもない、ないはずなのだが。ないはずなんだ。
この焔が燃えるような、顔の熱さは。
停泊中のカレイジャスにて