夢幻


 穏やかな日差しの下でリィンはぐっと伸びをする。その隣では短い午睡から目覚めたメリルが眠たげに目を瞬かせ、控えめに欠伸をしていた。
 昼寝に使用していたベンチは日当たりもよく居心地が良い、フィーが好んでこの場所に足を運んでいたのもわかる。
 要請先からトリスタへ予定より早く帰還したリィンとメリルは午後の授業を受けるつもりで学院に来たのだが、学院はちょうど授業の真っ最中。それならば移動疲れもあるから次の授業まで休もうと中庭で昼寝をしていたのだ。要請自体は難しいこともなく終わったのだが、慣れない環境で人の視線に晒されていたことで思ったよりも疲弊していたのだろう。並んで座り、とろりとした睡魔を感じてしまえば、リィンもメリルもすぐにそれに身を委ねてしまった。
 一足先に名残惜しい眠気を手放したリィンは隣のひとに声をかける。

「おはよう、メリル」
「おはようございます、リィンさん」

 まだ少しだけ眠そうな目をしたメリルが微笑む。
 リィンはこうしてメリルが隣にいることに、正直まだ慣れなかった。
 どうにも夢か幻のような気がして。触れることでそこにあることを確かめて、夢や幻でないとわかると安堵する。
 メリルは確かにリィンの隣にいて同じように学院生活を送り、共に要請に出向いた。何もない日もリィンの傍にいて、心身の隙間を埋めるように触れ合う。弱った姿も醜く牙をむく感情も、一度曝け出してしまえば思ったより抵抗なくメリルに見せることができた。ひとりでいるより、ひどりで抱えるよりずっと心が軽い。

「リィンさん」

 手を伸ばしたメリルがリィンの髪に触れて、白い指が顔周りの髪を整える。毛先がくすぐったくて思わず目を閉じたリィンにくすりと笑ったメリルの手が、そのままリィンの頬にすべった。
 何をするでもなく頬に触れるだけの手。
 リィンがそうだったように、メリルも今を夢か幻のように感じて、触れることで現実なのだと確かめているのかもしれないなとリィンはぼんやりと思う。
 目を開ければメリルがまっすぐにリィンを見ていて、しばし互いの瞳の色を観賞しあった。ふと、メリルの瞳が緩む。

「今日はあたたかいですね」
「ああ、そうだな」



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