君の心のとける冬
帝国北部に位置するユミルで育ったリィンは冬が好きだった。
ユミル以外の冬は新鮮で、初めてトリスタで過ごした冬はその降雪量の違いに驚いたものだ。しかし、しんと静まりかえった朝、どこかピンと張り詰めた冷たい空気、夏とは違う色をした陽射し、夜の澄んだ星空。そういった冬の要素は故郷と変わらず、少し安心したことを覚えている。
リィンには最近、冬が好きな理由のひとつに新しく加わったものがあった。
二人分の体温で温もる毛布の中で、片方の熱源であるリィンにぴとりと寄り添って眠るメリルの存在だ。
冬……とりわけその寒さが苦手なメリルは無意識に暖をとろうとしているのか、夜抱きしめて寝なくとも、朝起きれば必ずと言っていいほどリィンにくっついて寝息を立てていた。無防備な寝顔が、リィンにすりと擦り寄るたびにふにゃふにゃと緩むことを知っている。普段甘えてこないだけに貴重だと思うし、その寝顔を見ながらしんとした朝の時間をすごすのがリィンは好きだ。
リィンの好きな冬が増えていくように、メリルにも冬の好きな部分が増えて欲しいと願いながら、リィンはいまも自分の近くにあるその頬を撫でた。
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幼少期の経験からメリルは冬が苦手だった。
不思議と彩度が低く見える景色も、吹けば凍える風も、静寂を連れてくる冷たい雪も、メリルにとっては嫌な記憶を連想させるものでしかない。
とりわけ冬の夜が苦手で、毎晩メリルは酷く憂鬱になる。苦手意識が夢の中にも影響するようで冬は夢見があまりよくないうえ、しんと静まり返った気配や底から這うような寒さが寝付きを悪くさせた。疲れを取るための睡眠で、余計疲れているような気さえする。
それでも最近はリィンが一緒に寝ることが多いからか、ほんの少しだけ苦手意識は薄れたように思う。
ぬくもった寝具やリィンの体温はベッドにはいる躊躇いを無くすには充分だったし、リィンが先に寝ていてもいつの間にかその腕に抱かれている。その温かさのおかげか、寒さや冷たさを起因とする悪夢を見る回数は減った。優しい腕のなかで朝を迎える度に、自分が生きていることと相手への愛しさを再認識して、少しずつ……指先にすら満たないほどの一歩、本当に少しずつではあるがメリルの冬への苦手意識が溶けていくようだった。
冬が好きだというリィンの気持ちに共感できる部分ができたことが喜ばしい。いまも自分を抱きしめて夢の中にいるその人にすりと擦り寄って、メリルはあたたかな冬の夜に目を閉じた。