Nightmare Marriage
穏やかな風にリィンははっと我に返る。木陰からあたりを見回せば、いつかのオリヴァルト殿下の結婚式の時ように着飾った人々が歓談していた。
全員集まるということが難しくなってきたZ組、教え子達、ユミルの家族や友人達、これまでの歩みの中で有難く縁を結んだたくさんの人々。
彼らの楽しそうな顔をみると、リィンの胸も穏やかに温かくなる。これは誰の為の祝いの場だったろうかという疑問を片隅に日向を眺めていれば、歩み寄る影があった。
「少しは休憩できましたか?」
「あ……ああ、かなりぼーっとしていたくらいには」
「そうですか、良かったですわ」
穏やかに微笑んだメリルが差し出したグラスを受け取りながら、リィンは彼女が他の仲間たちと同じように祝う側の服装であることに安堵した。
先程までのリィンと同じように日向を見ていたメリルが突然自分を見たので、リィンは内心慌てながらも交わった視線を逸らさずにいる。ふわりと笑ったその顔が心からのものであることは確信できた、それだけリィンはメリルを見てきたし、傍にいたのだから。綺麗だなと思いながら唇が紡ぐ言葉を待った。
「御結婚おめでとうございます、リィンさん」
1ミリリジュの疑いようもない悪夢である。
飛び起きたベッドの上で頭を抱えていたリィンが隣を見てもそこには誰もいない、普段リィンの隣で眠っているメリルは顔見知りの結婚式に参加するため家を空けていた。
大きな溜息を吐きながらもう一度ベッドに転がって、リィンは夢の内容を忘れようと目を瞑る。いまだ婚約さえ申し込めていないことの焦りなのだろうか、なんにせよ、正夢にならないよう尽力するしかないのだ。嫌な音をたてている心臓を落ち着けて、それでも落ち着かない胸中に二度寝はできそうにないなと観念して目を開ける。
ああ、悪夢だ。