『愛してほしい』


 世間一般では『愛されたい』という欲求はさして珍しいものではないらしい。
 思えば確かに他人にそのようなことを言われてきたが、願いが漠然としすぎてそのどれもに正しく対応できていなかったように思う。愛して欲しいと言われて、何をすれば愛したことになるのだろう、模範解答があるのならばメリルはそれが知りたかった。適当な人間を適当に利用するには、やはり汎用的な回答は知っておくに越したことはない、いつか使うことになるかもしれないからだ。優れた容姿と平等な優しさがメリルの武器で、それを利用するのがメリルの戦い方なのだ、人にどう思われようと。

「愛して欲しい?」

 本から顔を上げたリィンが驚きを隠さずにオウム返しにし、それから目を逸らして顔を赤くした。珍しい反応にメリルは首を傾げる。愛されて育ち、成長した彼ならば「愛して欲しい」の言葉に最もスムーズに模範解答を返しそうだと思っていたので、その頬が赤くなったことは意外だ。

「俺の勘違いだと恥ずかしいから聞かせて欲しいんだが、それは夜の誘いというわけではないんだよな?」
「……なるほど、かなり直接的ですが納得のいく行動ですわ」
「違ったうえになにか良くないことを教えなかったか今! 待ってくれ、とりあえず数分前の君の思考から教えてくれ!」



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