order made


 灰色、紅、先程よりも濃い灰色、黒。
 かわるがわる己にあてられる布の枚数をリィンはもう覚えていない。近くのテーブルにはこれでもかというほどたくさんの釦が並べられているし、その近くにはカタログやこれまでの制作記録が束になって置かれている。
 案山子のように立っているリィンの周りを店員が行ったり来たりする間、メリルは布見本の棚の前で頬に手をあてて考え込んでいた。あの頭の中が自分のことでいっぱいになっていることも、彼女が自分のために何かをしてくれていることも嬉しいのだが、先程から全く視線があわないのだ。もちろん意図的に外されているわけではなく、単にタイミングが悪いだけである。
 ふと、その目がリィンを見た。

「ごめんなさいリィンさん、退屈でしょう?」
「いいや、俺の事を考えてるメリルを見るのは楽しいぞ。それに君が見立てた服なら堂々と君の隣に立てるし、君の好みなわけだから、ゆっくり選んでくれ」
「……はい」

 真っ赤になった頬を見て、つぎメリルに買うのなら紅いドレスがいいなとリィンはぼんやりと数件の店を思い浮かべる。今日の買い物は長くなりそうだった。



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