からかわないでくれ
ふぅ、と本人の自覚なく漏れたであろう溜息にメリルは目を瞬かせる。眉間によっていた皺はメリルと目が合うことで姿を消していたが、そのかわりに不思議そうな色をした目が残っていた。
最近、リィンは分校教官としての業務以外に、本校との合同行事の仕事もしているようだった。だいたいのことは通信や導力メールですむようだが、トリスタを訪ねることもあるというし。授業や試験の準備はまってくれない、なにより、リィン自身の生徒に過保護な――世話焼きで面倒見の良い性格により、放課後に色々と手助けをしているだろうから、疲れているのだろうな、とメリルは結論付けた。
「お疲れですね」
「そんなに顔に出てたか?」
「そうですね。ですがわたくししか見ていないのですから、構わないと思いますわ。そのほうが……わたくしも嬉しいです」
リィンが素直に疲れや弱さを見せることができる場所でありたいというのは、メリルの望むところだ。「少し眠ってはいかがですか」というメリルの提案に頷いてから、当然のようにその太腿に頭を乗せたリィンに、困ったように少し眉を下げたメリルだったが、ゆっくりとその黒髪に指を通しはじめる。
撫でられ目このように目を細めたリィンに微笑んでから暫く考え込み、キスでもしましょうかとどこか笑いの混ざった言葉を落す。
「へえ、してくれるのか」
「えっ、いいえ……その、」
「そうか、今ので元気がなくなったな」
それきり閉じられてしまった瞳に、言葉にも顔にも出さずに慌てていたメリルだったが、リィンの頬に指をすべらせてから唇を開く。
「恥ずかしいので……リィンさんからしていただけますか?」