人肌恋し


 ぼんやりとした月の輪郭をなぞるように、メリルの指がリィンの頬をすべる。
 メリルの呼気に甘い酒の匂いが混ざり、唇からそれを受け取ったリィンは柔らかな感触と唇以外の部分から伝わる体温にくらりとした。
 リィンにとってメリルの酔った姿というのは貴重で、だからこそ独占したいものだった。……恋人が酔って無防備な姿を晒すことをよしとする人間が世にいるかはわからないが。ここが自宅で良かったと思いながら、己にしなだれかかるメリルを支えつつ
 そっとグラスを置く。

「どうしたんだ?」
「少し人肌恋しくなってしまいましたので」

 間近にある二色の瞳を覗き込めば、同じように返す瞳に己の顔が見える。二、三瞬きし、朱に染まった頬をすり寄せ満足そうに目を細めるメリルの様子を眺めながら、リィンはその頭を撫でた。

「そうか、好きなだけこうしていてもいいんだぞ」
「もう結構ですわ」

 すっと体を離したメリルに、構うと何処かへ行ってしまう猫の姿を思い出しながら、リィンは不満げに眉を寄せる。メリルが素直に甘える時間が思ったよりも短かったので、「触れたい」というリィンの欲望は煽られて中途半端に首をもたげたままだった。
 離れゆく細い腕を掴んで引き寄せ、倒れ込んで来た体を閉じ込める。見上げる瞳と開きかけた唇が何かを発する前に塞いで、今度はリィンが満足気に目を細める番だった。

「少し人肌恋しくなった」



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