いい加減にしろ!


「メリルを抱えて寝るだろう」

 創まりの園庭。そこに用意されているベンチに腰掛け、リィンとクロウは武器の手入れをしていた。
 夢幻回廊の攻略は交代で行っており、つい先ほど回廊から戻ってきたリィン達は休息と準備の時間にはいっている。各々好きなことをしているなかで、この二人が同じことをしているのは偶然なのだが、まあ折角だからとお互い己の得物を手に世間話をしているのだ。
 ……それはともかく、いきなり恋人の名前を出されては、この後どういう話が続くか想像がつくクロウはすでに溜息が出そうだった。

「それ俺が聞かなきゃいけねぇか?」
「朝、メリルが起きようとして、しばらく悩んでから困った声で俺を起こしてくるわけだが」
「それ今聞かなきゃダメか?」
「可愛い。早起きしてよかったなと思う」
「狸寝入りすんなよ」

 クロウの言葉に「なんだ、聞いているじゃないか」と人の話を散々無視して話を続けたリィンが呟く。無視してやればよかったなと一瞬クロウは思ったが、無視をしたらしたで面倒なことになるのは想像に容易い。

「メリルは寝る前に俺のところにくるんだが……」
「続くのかよ」

 クロウの呟きはまた無視される。

「わざとキスしないでいると、そわそわしはじめるのが可愛いな思う」
「どう考えても俺はお前らがおやすみのキスしてるとかいう情報を得なくてよかっただろ」
「聞いているじゃないか」
「聞かせてくるからだろ!」

 思わずでた大きな声に周囲の仲間の視線が一瞬ふたりを見た。帝国の人々だけはどこか納得したように、クロウに同情の視線を送ってから目を逸らす。
 はぁ、と大きな溜息をついてクロウは導力銃を取り出した。ダブルセイバーと導力銃、どちらも使用しているため手入れの時間はやや長めだ。隣のリィンはすでに太刀をしまって、遠くにいるメリルを眺めている。いっそあっちに行ってメリル本人と話して来い、という気持ちでいっぱいだが。リィンはなにか思う所があるようで、この夢幻回廊でメリルが他者と一緒にすごしていると見守っている事が多いように思う。

「……可愛いな」

 だからと言って自分に惚気るのは止めてほしいのだが。



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