いい加減にしてくれ!
「美人は三日で飽きるって言うよな」
夢幻回廊の一角、探索に同行していないクロウとメリルはなんとなしに同じテーブルについて時間をすごしていた。
慣れた仲なので、時折落ちる沈黙も苦ではなく。数度目からの沈黙のあと、メリルの顔をまじまじと眺めながらクロウが言った台詞にメリルは頷いた、そういう言葉があることは勿論知っている。
「それがどうかしましたか?」
「いや、お前の顔にも耐性が付いたなって思ってよ。見慣れたっつーか……何だよその表情は」
「クロウさんがわたくしの顔に何かを思っていることが以外でしたわ」
メリルの顔に抱いた感想でクロウが態度を変えるようなことはないだろうが、目の前の人間に外見についてなにかを言われるとは思っていなかった。
少々失礼な事を言われているような気もしたが、己の外見が美しいものだという自覚はあるし。他人からの評価もそうであるので、美人という部分は該当しているなということで納得しておく。
ふぅと溜息をついて、頬に指先が触れた時に……メリルはふと思いつく。
「リィンさんも、わたくしの顔に飽きてしまったでしょうか……」
三日で飽きるとは誇張だと思うが。クロウで見慣れているのだから、一緒にいる時間の長いリィンはもう飽きているのではないだろうか……?
ううん、とメリルは考え始めた。
「飽きられてると思うか?」
ぽろりと零れた呟きを拾ったクロウが、呆れながらも返してくる。
メリルは自分の取柄は外見くらいだと自覚しているので、外見に飽きられるというのは一大事だ。リィンが外見だけで人を見る様な人間ではないことは勿論理解しているが、それでも飽きられないことは大事だろう。
「わたくしは……」
またひとつ溜息をついて、ぺたぺたと己の顔を触った。
慣れた顔。肌だって唇だって髪だって、丁寧に手入れをしているし、体型だって維持の為の努力は欠かさない。生まれ持った容姿という財産の価値をメリルはよく理解していた。リィンの隣に立っていても恥ずかしくない外見だと……思っているが、周囲やリィン本人から見たらどうだろうか。少し不安になって、メリルはまた溜息を吐く。
考えてもしかたのないこととはいえ、リィンが関係することとなれば思考の海に沈んでしまうのがメリルだった。つつ、と縁をなぞったカップのなかの水面に写る造形をしばし長め――……。
「……もっと美しくなれば問題が無いのでは?」
「はい、解散だ解散! ほら、あいつら帰ってきたぞ!」