透明な自傷
俺が残した傷は消えないのだろうなと、自分を通して何かを見るメリルの眼差しを感じる度にリィンは思う。
リィンが触れることの出来ない内傷は、リィンではないリィンが残したものだ。
自分より先に喪失という爪痕を残して消えたリィンが、最後にメリルとどういうやりとりをしたのかは聞いていない。何となく聞いてはいけない気がしたし、自分が聞くことでメリルの傷が痛むのはメリルに申し訳なかった。何より、その傷で感情を揺らがせるメリルを見ることは、リィンにとってあまり心穏やかでいられないことだった。
嫌だな、と思うのに、その傷はいつかきっと自分がメリルに与えるか、与えられるかするものだと分かっている。
同じような傷をメリルに残したくない、だから、余計に先に傷をつけた彼が許せないのだ。見送る側になりたくないという縁起でもない我儘は密かに壊されて、リィンの心にそっとしまわれる。
自分を通り越す視線に名前を呼ぶと、なかなか瘡蓋のできない細かな傷が傷んで。リィンはそのどうしようもなさに笑いたい気持ちになった。