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 ミラクルランドの出口で毛利一家や少年探偵団達と別れた江威子は自分の車に行こうと歩みだす。
 人ごみの中で江威子さんと呼ばれたような気がして振り返ると、そこには見慣れた顔があった。

「快斗くん!ミラクルランドにきてたの?青子ちゃんと一緒かしら」
「いや、今日は男友達と一緒に」
「あら、一人だけ抜けてきて平気なの?」
「江威子さん見つけちゃったし、後で連絡するから平気だよ」
「ならいいけど」

 『ついでに帰りの車乗っけてってもらおうかなーと思って』と付け足された言葉に、そういうところはちゃっかりしてるなぁと江威子は思った。暗い夜道を高校生を一人で帰らせるわけにもいかないので、結局乗せていくのだが。
 ふいに手に持っていた土産袋をぱっと奪われると同時に空いた手が繋がれる。

「快斗君、手繋ぐの好きねぇ」
「だって江威子さん迷子になりそうだし、それに減るものじゃないからいいじゃんいいじゃん」
「手を引っ張ってくれるのは嬉しいけど。快斗君、わたしの車の場所わかるの?」
「……どこ?」

 振り向いた顔が困ったように笑ったので江威子は『あっち』と指をさす。
 あまりにも大雑把すぎる説明に快斗は苦笑いしたが、江威子の車は車種も色もナンバーも覚えているし、快斗の視力は一般の人間に比べるとかなり良いので問題ない。大量の車の中をするする進んでいく快斗とは逆に、一日中園内を歩き回りアトラクションに乗り待ち時間を立って過ごした江威子の足取りは重かった。年齢には勝てないわと心の中で呟いて、肩にかけた鞄を持ち直す。そっちも持とうか?と快斗に聞かれたが、首を振って断る。
 先程から、異様に快斗が落ち着きがなく、過保護なことに江威子は内心首を傾げた。

「どうかしたの?」
「なんでも、……ちょっと遊びすぎたかな」
「白い姿で?」

 江威子の言葉に快斗は緩く微笑むと車の鍵を開ける。
 何故か後部座席に押し込まれた江威子は、そのまま一緒に後ろに入り込んできた快斗にぎゅうと抱き締められた。重くないかとか、誰が運転するのかとか、江威子は思ったが、自分を抱き締めたまま唸りもしない快斗の様子を見て、大人しくされるがままになった。ずっと肩に頭を押し付けている快斗の頭をあやすようにぽんぽんと撫でると、腕の力がいっそう強くなる。

「かーいーとーくーん?」
「江威子さんが生きててよかった」
「う、ん?ま、まぁそれは確かにいい事かもしれないわ……ね?」

 いきなり自分の生死の話題になったので驚いたが、彼がこういう態度の時はだいたい怪盗をしている時に狙撃されたとかハングライダーから落ちたとか、痛い目にあった時……それも、とびきり痛い目にあった時だ。
 溜息をついて江威子は快斗の頭を撫でていた手を背中にまわす。

「江威子さんは生きてますからねーおうちかえりますよー」
「……また、そうやって子供扱いする」
「高校生でしょ、まだ子供よ」

 むくれた顔をして暫く江威子を抱き締めていた快斗だったが、顔を上げると江威子を解放する。
 江威子が運転席に移動すると、快斗も助手席に座りなおした。シートベルトしっかりしてねと江威子がいう前にきっちりシートベルトを装着した快斗は、頬杖をついてゆっくりと目を閉じた。スピーカーからゆったりとしたクラシックが流れ始めると、助手席から寝息が聞こえてくる。偶に振動でガラスに激しく頭をぶつけているが、起きる気配がないので相当疲れているのだろうと江威子はそのままにしておく。

「お疲れ様、快斗くん」

 赤信号でブレーキを踏んで、快斗の頬にかかった髪をそっとはらう。家についたらご飯でも作ってあげようかなと考えながら、遠ざかるミラクルランドをミラーから眺めた。

なんでも、……ちょっと遊びすぎたかな



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