髪に触れる
綺麗な指が紅い髪を梳いては散らしていく。
リーゼッテの髪は長い。自分よりも髪が長い人間をリーゼッテは見たことが無い。大事にしろと言われて伸ばし続け、丁寧に手入れをしてきた髪は美しいと思っているし、大変な事は多々あるが自慢できるものの一つだ。
清潔な敷き布の上、ユーリスによって散らかされた髪に溜息をつきながらその手を叩き落とす。今日も丁寧に洗われ、香油を縫って梳かれた髪に我が物顔で触れていた男を睨み付ければ、軽く肩を竦めるだけで反省は欠片もしていないことが窺えた。
それどころか、図々しくも不満であると顔にかいて手を伸ばしてくるものだから、止める気すら起きずにリーゼッテはまた髪を明け渡した。
さあさあ、さらさら。
耳の近くをユーリスの指が通る。その手が何度も何度も髪を梳いて、リーゼッテの耳はユーリスが自分に触れる音ばかりを拾った。
とうとう他人の寝台に寝転がりながらその行為を楽しみはじめたユーリスが、普段の自信に満ちた笑いでもなく、企み事を含んだ笑いでもなく、ただただ笑っただけの顔をで口を開く。
「織物やら毛皮やら、手触りの良い物なんざ散々触ってきたが。お前の髪はいくら触っても飽きねえな」
手にした一房に形の良い唇が触れるその光景を、まるでおとぎ話か歌劇のようだと思いながら、リーゼッテは自身の髪色に負けないくらい頬を赤く染める。
恥ずかしい、嬉しい。しかしそう言われてしまえば、ユーリスに触れられることを嫌とは思えなかった。