諦めと、ナントカの湯でも治らない
「何故普通に入ってきているんですか!? 絶対に外で使用人が止めましたよね!」
「どうせ中にいるのお前だけだし」
「それが問題なんですよ!」
湯をかけられたユーリスは顔に張り付いた髪をはらう。
アールヴァクの屋敷は歴代の当主に風呂好きでもいたのか、広い浴槽に当たり前のように広い湯船がついていた。なにか焚いているのか浴室内は甘い匂いがしている。
その湯船のなかでリーゼッテとユーリスは共に湯に浸かっていた。不機嫌というよりは照れた顔でリーゼッテは体を縮こませ、ぱちゃりという音のあと黙り込んだが、おかまいなしにユーリスは湯から出した手でリーゼッテを招いた。他人の家の風呂であるというのに、持ち主のような顔をしている。
「こっちこいよ」
「は? 馬鹿言わないでください、叩き出しますよ」
即座に返された言葉に「じゃあ俺が行く」と言うが早いかユーリスはリーゼッテの隣に落ち着いた。
何か言おうとして口を開いたリーゼッテは結局何も言わず、諦めたように口を閉じる。何を言っても無駄と判断したのだろう、その通りだった。
彼女はユーリスの存在があっても風呂で癒されることを決めたのか、ユーリスが浴室に押し入る前と同じように表情を和らげ、縮こめていた体をのばした。その様子を陽だまりの中でのびをしている猫のようだなと思いながらユーリスが見つめていると、自ら少し距離をつめたリーゼッテの紅い頭が肩にこてりと乗せられた。
「……わたしは長湯が好きなので、頑張って付き合って下さいよ」