触れた指先で思う
「フェルディナント、少しいいですか?」
「もちろんさ、何か用かね?」
リーゼッテがフェルディナントに声をかけることは特別珍しいことではない。
学生時代は事あるごとにエーデルガルトに張り合おうとしていた彼を多少疎ましく思っていたが、五年も経てばフェルディナントのそういう面は落ち着いていたし。なにより、エーデルガルトに面と向かって反対意見を言うことができる貴重な人間だとリーゼッテは認識を改めていた。
「そこに座ってください」
「突然だな。君のことだ、理由があってのことだろうが」
「あら、いきなり顔面を殴るかもしれませんよ」
「不安を煽るようなことを言うのはやめたまえ。まぁ私は君がそのようなことをするとは思っていないがね」
甘い人、と笑ったリーゼッテが椅子に座ったフェルディナントの背後に回り、長くなった金茶色の髪を指で梳く。
毎日、陣中にあっても主であるエーデルガルトの髪を整えているからか、慣れた手つきで纏められていく自分の髪。時折首にふれる指になんとなく居心地の悪さを感じながらも、フェルディナントはリーゼッテの目的が終わるのを待った。
くすくすと機嫌が良さそうな笑いが後ろから聞こえる。
「髪が随分と伸びたでしょう、訓練の時に邪魔ではないかと思ってそれにしても、なんだか大きな犬を触っているみたい」
「リーゼッテ……せめて馬にしてくれたまえ」