幼馴染
思えば自分達は幼少より共にすごしていたわりに、お互いのことにあまり興味がなかった。
目の前でテフを飲むヒューベルトを見ながらリーゼッテは考える。
同じ年、家同士の繋がりがあり、仕える主が同じであれば同然共にいる時間は増えた。もちろんそこには「紋章をもつ子供を」「さらに安定した地位を」という親同士の思惑もありはしたが、当の本人たちは余計な感情を抱くこともなく今日まで生きてきた。
ヒューベルトもリーゼッテも、相手がエーデルガルトの害にならなければ良く。そして互いにそうはならないことを理解している。それ以外は些細な事……とまではいかないか、深く気にすることではなかった。
じっとヒューベルトを眺める。
少しこけた頬にあまり血色が良いとはいえない肌、暗い髪色、その雰囲気は物語の中の吸血鬼を思い出させる。目の色は意外と可愛らしい淡い緑をしているのだが……まず彼の目をじっと見ようと思う人間は少ないだろう。
「ヒューベルトの顔、好きですね」
「何ですか藪から棒に……私も貴殿のその造形は好ましいと思いますよ」
「あら、ありがとうございます」
人の顔など気にしないと思っていたため、意外だ。ヒューベルトが評価を偽って伝える人間ではないと知っている、純粋にうれしいものだなとリーゼッテは顔を明るくした。他人に褒められるより嬉しいあたり、一応無意識に他の人間と区別していたのだろう。
「まぁ、三日三晩エーデルガルト様を追いかけたあの忠誠心以上に好ましい点はありませんがね」
「それは同意見です。意見が一致してよかった」
互いに小さく笑って、それぞれのカップに口をつけた。
和やかなこの空間が、自分達は世間一般の幼馴染像とさしてかけ離れてはいないのではないかと思わせた。かけ離れていたとして、それを気にする性格ではなかったが、お互いに。