改造人間処理係

床に転がる改造人間たちの死体を、雑に足で退けて通り道を作る。真人の実験台たちの哀れな姿を横目に、オレは部屋の奥へ進んだ。

「やーっぱり上手くいかないや。これ全部ナマエにあげるね」
血なまぐさい空間に、真人の呑気な声が響く。今しがた息絶えたばかりなのか、まだ温もりの残った肉体をポイとオレに向かって投げ捨てる。

改造人間はどれもボコボコと不格好に変形しているし、鮮度が良くてもあまり食欲はそそられない。しかし、自分で人間を殺すより余程簡単に死体を手に入れられる。
術師に見つかるリスクを減らすにはちょうど良いし、真人も死んだ人間の処理は面倒らしい(陀艮は普通の人間しか食べたがらない。あのバッタが言う通り改造された人間は味が落ちる)から、利害の一致ってやつだ。

「ありがとう」
「どういたしまして」

さて、投げ渡された人間を見る。ブヨブヨと嫌に柔らかくデップリと肥えた胴体。これは肉にも内臓にも期待出来そうに無い。試しに腹を裂いて見ると、断面にも内臓にも脂肪が付着している。見ているだけで胸焼けしそうだ。まあ、結局丸呑みにするのだから何の関係も無いが。

「いただきます」
大きく口を開けて、頭からかぶりつく。ミシミシと人間の骨が軋み、穴という穴からゼリー状に固まった血液が溢れる。先程開けた腹から臓物がこぼれ出てくるが、気にせず食道へ、胃へと送り込む。肉の質量に自身の内臓が圧迫されていくのを感じる。

完全に飲み込んだ頃合いを見て、真人が手近に倒れていた改造人間を拾い上げ、こちらへ投げる。さながら動物園の飼育員が、ライオンや虎に餌をやるように。

「ナマエを見てると、人間がペットを飼育する気持ちが分かるんだよ」
「それは良かったね」

二人目を飲み込みながら素っ気なく返すと、真人がまた笑った。次はどれにしようかな、と、死体を漁る姿は無邪気な子供のようだ。オレは全て食べるつもりでいるが、毎回こうして真人が一人一人与えてくれる。

……気まぐれな真人の考えることは分からないが、ひとまずオレは楽して腹を満たせるので、今後も続けば良いなあと、飼い慣らされた頭で思考したのだった。

ALICE+