とこしえの春



※大学生、同棲設定


用事もなく、天気も快晴の日曜日。今日は休日だが、哲次は補講があるらしく、文句を言いながら大学に行った。私は今朝哲次が出ていくのを見送ってからしっかり二度寝していた。2時間ほどの眠りから覚めて伸びをする。今日は天気がいいなあ。洗濯物干して、ついでにお布団も干して、掃除して。荒船は昼前に帰ると言っていたから、お昼ご飯も作っておこう。頭の中でざっと予定を並べて顔を洗うべく、ようやくベッドから立ち上がった。

休日にいろんな家事を要領よく片付けていくのはやりがいがあって、大変だが不思議と悪い気はしない。それにしても、本当に今日はいい天気だ。雲ひとつないとは言いすぎだが、概ね快晴。こんな日にダラダラと惰眠を貪った自分を少しだけ責めたくなる。洗濯物のシワを伸ばしながらハンガーにかけ、干していく。哲次のシャツは私からすれば充分大きいので、つい羽織ってみたくなる。しかし前に一度ふざけ半分でシャツを着てみたところ、俗に言う彼シャツと受け取られて腰が使い物にならなくなったことがある。同じ轍は二度と踏むまい。ちょうど洗濯物を干し終えた時、インターホンの音が部屋中に響き渡った。

「はーい」
「宅急便でーす」
「あ、今出ます〜」

宅急便?何か頼んだっけ。頭にはてなを浮かべながらも、配達員から荷物を受け取る。扉を閉め、改めて荷物を確認すると中くらいのサイズの某有名通販店の箱。どうやら注文したのは哲次らしい。また映画の本とかDVDかな。それにしては大きいような。どっちにしろ、私は少し腹が立った。ついこの間、旅行の計画を立ててそのために節約しようと約束したばかりなのだ。ーーーまた無駄遣いして!私だって欲しい服あったけど我慢したのに!開けてやろうと思ったが、いくら一緒に過ごした期間が長いとはいえさすがに躊躇われた。ひとまずローテーブルに放置し、昼ご飯作りに取り掛かる。今日はもう面倒臭いのでオムライスでいいだろう。みじん切りにした玉ねぎは、いつもより粗みじんになってしまった。





「ただいま」

ちょうどオムライスが出来上がってあとは盛り付けるだけ、というところで哲次が帰宅した。リビングに入るなり、「ああ、届いたのか」と満足げに笑った哲次に若干イラッとしたので、哲次の分だけ雑に皿に盛り付け、ケチャップを適当にかけた。けっこう見た目はひどい感じになったが、味に問題はないはずだしいいや。手を洗ってうがいをしてきたと思ったら、今度はすぐに段ボールを開けはじめる。ご飯食べ終わってからにしてよ。私のイライラはどんどん降り積もっていくばかりだ。2人分のオムライスをローテーブルに置くと、哲次が手にしているものが視界に入り、目を見張った。

「なに、それ」
「靴下。と湯たんぽ」
「は?なに?哲次がその可愛いやつ履くの?」
「なわけねーだろ」
「だよね。哲次がそんなモコモコ靴下履いてたら笑っちゃう」
「勝手に想像して勝手に笑ってんじゃねえ」
「…ん?てことは、それ私の?」
「ああ」

青のモコモコ靴下と、サーモンピンクのふわふわの布で覆われた湯たんぽ。哲次が持っているには非常に似つかわしくないそれは、どうやら私のために注文したらしい。私、欲しいなんて言ったっけ?首を傾げていると、モコモコの靴下を押し付けられた。手触りはなかなか。

「お前の足冷てえんだよ」
「え?あ、ああ…まあ冷え性ですし…」
「今日からそれ履いて寝てくれ。布団の中で足が当たった時めちゃくちゃ冷たくて目え覚める」
「あ、はい」
「あとは、湯たんぽもあればもうちょいあったかくなるだろ」

だから俺から布団奪うのはやめろ。そう言った哲次は苦い顔をしてみせたけど、たぶん照れ隠しだ。てっきり哲次の趣味のグッズやら何やらが入っていると思っていたので、拍子抜けだ。どうやら勝手に勘違いして、勝手に怒っていたらしい。自覚すると居た堪れなくなって、同時に胸が温かくなって、受け取ったモコモコ靴下を抱き締めて「ありがとう」と呟く。確かに冷え性がけっこうひどい私は真冬の夜にどれだけ布団をかけようが足先はなかなか温まらないのだ。気遣いが嬉しくてはにかむと、帽子のせいでぺたんこになった髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜて「早く飯食おうぜ」とばつが悪そうに言った。

「…おい、俺のオムライスぐちゃぐちゃじゃねえか」
「………気のせい気のせい!早く食べよ!」
「…どう見てもお前のが綺麗じゃねえか!」
「ごめんごめん!交換してあげるから許して!」

天気も文句なしの日曜日のお昼。たまっていた洗濯物も干せて、ご飯もおいしくて、恋人からの愛も感じられて、幸せだ。結局哲次は文句を言いながらぐちゃぐちゃなオムライスを完食した。さらに皿洗いまでしたくれた。口は悪いけど、愛されていると感じさせる事ばかりだ。だから私は哲次と一緒にいるのをやめられないし、彼でなければダメなんだと思う。今日の夜は早速あったかグッズで温まって寝よう。

その夜、湯たんぽを抱えて寝ようとした私を見た哲次が湯たんぽを取り上げてしまって、湯たんぽは足元に追いやられてしまった。
結局、哲次に抱きかかえられて眠ることになってしまった。まあいいか、あったかいし。