コンフリクト
晴天の下、軽やかな足取りで向かういつものコーヒーショップ。
午前で終わる大学の講義後にお気に入りのコーヒーをテイクアウトし、公園を散歩するのが毎週木曜日のルーティンになっていた。
今日のトッピングはキャラメルにしようか、
それともチョコソースにするか
などと考えているうちにもうお店は目の前に。
常連の私を見るなり片手を上げて笑顔で挨拶をくれる店員さん。
直前まで迷いに迷ったトッピングはチョコソースに決めた。
常連サービス、と微笑みながら割増してくれる店員さんに緩む口元。
視線を交わせ別れの挨拶を告げる。
この至福のひとときが課題に追われた私を癒す。
出口に向かってくるりと回ると端正な顔立ちの男性と目があった。
両腕を組み、壁に身体を預け佇むよく知る彼。
「やあ、薔薇子。」
今日は大学休みかな?
と、わざとらしく小首を傾げて尋ねるのは
クレア先輩が昔共闘したという元警察官のレオンさん。
彼は定期的に私を訪ねてくる。
理由は一つ。
「このあと時間あるかな」
彼は私が毎週木曜日、講義が午前しかないことを知っている。
知っていながら聞いている。
彼の依頼を断るか否か思考を巡らせていた私に届いたのは、こちらもよく知る助けの声。
「ちょっとレオン?」
視線を見遣った先には、通っている大学の卒業生クレア先輩が立っていた。
腰に手を当て困り顔のクレア先輩は状況を察せずレオンを見る。
「薔薇子をナンパしないで。」
「ナンパじゃない。」
俺はお子様に興味ない、と両手を軽く振り上げ
クレア先輩の視線をさらりとかわす。
「じゃあ尚更、薔薇子に何の用事なの?」
レオンさんは私の隣に立ち、覗き込むように顔を窺う。
こっちはこっちで困り顔。
肩に置かれた手から焦りが伝わる。
「ちょっとレオン!」
一歩近づくクレア先輩にレオンさんは顔を上げる。
「頼み事をしに来たんだ。
大事な用事だ。」
また書類整理の手伝いですか?と尋ねれば
クレアは両手を腰に当てさらに怒りの声を上げる。
「薔薇子に書類整理をさせているの?」
「ちゃんとお駄賃は支払っているさ。」
そういう問題じゃないわと溜息をついたクレア先輩は私に近づき腕を掴む。
「残念ね、レオン。
薔薇子は私との先約があるのよ」
片目をぱちりと瞑り笑みを浮かべて歩き出すクレア先輩。
引かれた衝動で共に歩き出す私は振り返り、
レオンさんの顔を窺うとほんの少し眉を下げて笑う彼に僅かな罪悪感を抱いた。
「さあ行きましょう、薔薇子」
残念と呟く彼の声は賑やかな街の声に溶けて消えた。
―――――――――――――・・・
(ねえ薔薇子、
レオンのお手伝いをよくさせられているの?)
(書類整理が苦手みたいで…大丈夫かなあ)
(いいのよ、少しは困らせなさい)
end.
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