君は波乗りボーイ(綱海条介/inzm)

 夏休みと言うものは人を堕落させるものだとつくづく感じさせられる、お天道様が真上を過ぎた頃に目が覚めた
 昨夜蒸し暑かったせいか寝汗がひどく、シャワーを浴びて短パンTシャツというラフな格好で首にタオルをかける、おっさんくさいがもう色々と諦めた
 それからいつものように居間でテレビをザッピングしてみたが面白い番組がない、仕方なしにワイドショーを見ていると視界の端にピンク色が入り込んできた

 庭にサーフボードを置いた条介が縁側から入ってくる、髪が濡れているので海から直接ここに来たのだろう
 毛先から海水が滴り畳に染み込んでいくのが見え、縁側近くの畳が早く傷む理由が分かった気がする

「もー、畳が痛むから海水持ち込まないでよー」
「んー」

 返事ともいえない返事をした条介はそのまま私のひざに顔をうずめる様に抱きしめられた、せっかくシャワー浴びたばっかりなのに海水が容赦なく私を濡らそうとする
 仕方なく肩にかけていたタオルを条介の頭に乗せてわしゃわしゃと海水を拭ってやれば腰に絡みつく腕の力が強くなった

「今日はいつになく甘えたね」
「んー」

 またこの返事、いつもなら抱きついてもすぐに顔を上げて笑顔を見せてくれるのに、今日は何だか変、というかテンション低い
 タオルの上から頭を撫でても反応は同じ、中三になっても幼なじみの女の子に慰めてもらうなんて情けない子

 ゆったりとした動作で条介の髪をかきあげ耳を露わにし、なるべく優しい声で問いかける

「何かあった?」
「んー」
「海はもういいの?」
「……んだよ」

 何かもそもそとしゃべったと思えばよく聞き取れない、何を言ったのか尋ねれば今度ははっきりとした声で言う

「波に乗るよりもお前といる方が好きなんだよ」

 そんなことを言われたらもっと甘やかしたくなっちゃうじゃない、ほんのりと赤くなった耳にそっとキスを落とせばもっと赤くなった

「条介、私おなかすいちゃったよ」
「……チャーハン」
「はいはい」

 さて腕によりを掛けますか、と気合を入れてから条介を退かせば仰向けに寝転んでいつもの笑みを浮かべた
 結局こいつは何でこんなに落ち込んでいたのかは分からず仕舞いだった


(波乗り野郎と夏休み)


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