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「士郎と一緒だよ」

 にこりと笑った名前になぜかホッとしている自分がいる、名前はモテるからナンパか何かだったのだろう、実際僕も女の子の方から声をかけてきたし
 どちらの熱なのかわからないけど繋いだ手が熱い、見つめ合う名前の瞳は艶やかに濡れていて頬はほんのりと桜色に染まっている

「名前、好きだよ」

 ああ、言ってしまった、関係が壊れるのを怖れて言えなかった言葉を口にしてしまった
 繋いだ手から熱が冷めていくのがわかる、緊張、してるんだ
 見詰めていた瞳は逸らされ、小さな肩はは震えている、違うんだ、怖がらせたくないんだ
 逸らされた瞳がギュッと瞑られ唇を噛み締める名前は痛々しくて、拒絶されても仕方ないと思った
 ちらりとガラスの向こうを見ればだいぶ景色が高くて、もうすぐ頂上であることがわかった

 これ以上名前を苦しめるのはやめよう、そう思い手の力を緩めればそれとは反対に冷たい手には力がこもる
 反射的に名前を見れば顔を上げて困ったように僕を見ていた

「嬉しい、私も士郎が好きよ」
「名前……!」
「でもね、!」

「……愛されるのが怖いの、士郎も知ってるでしょ、愛せば愛すほど、愛されれば愛されるほど、怖い」

 僕は名前の事情を知っている、名前が昔、僕とアツヤにだけ話してくれた
 名前の苦しめている『前世の記憶』を知っているからこそ、僕は名前を支えたいんだ、だからもっと僕を頼ってよ
 気が付けばもう景色も低くなり、もうすぐ終わりの時間が近づいていることが分かった
 僕は最後の悪あがきとして名前の頬をに手を添えて見詰める、名前もそれなりに恋愛経験があるため僕がこれからしようとしていることは理解しているようだ

「名前、もっと僕を頼って」
「士郎……っ、」
「僕はいつまでも待つから」

 そう囁いて名前の唇に自分のそれを重ねる、十分に潤っていて柔らかいそれに触れるだけのキスをして名残惜しくも離れる
 初めてキスをした僕たちの間に沈黙が流れてお互いの顔が見れないほど緊張していた
 繋いだ手がどんどん熱くなっていくのが分かる、これ以上緊張していることが名前にばれてはまずいので今度こそ手を離そうとすると名前の声が狭い個室内に響いた

「ありがとう、士郎」

 名前を見れば目尻に涙を溜めて真っ赤な顔で僕を見詰めている名前がいて、僕もなんだか恥ずかしくなって顔が熱くなる

「私頑張るよ、ちゃんと士郎に向き合えるように、この気持ちと向き合う」

 そう断言した名前の目は真剣そのもので僕はうなずくしか出来なかった



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